INAXライブミュージアム10周年特別展「つくるガウディ」

「土」と「タイル」が出会う現場<Vol.3>
楽しむ!職人のコラボレーション

(『コンフォルト』2017 April No.155掲載)

丸太足場からドームの頂部を土で仕上げる左官職人。上が親方の久住有生さん。隣のドームとの境を塗っている体勢はまるでアクロバット。

INAXライブミュージアム「土・どろんこ館」に未完のガウディ建築 コロニア・グエル教会から想起したドームが建てられた。
ガウディ建築を見て得たインスピレーションで左官職人とタイル職人がこの現場を装飾している。
はじめて見るタイルの存在感、自由な土から生まれる空間が、目の前で見られるのが楽しい!

曲面を張る立体的なタイルが誕生

INAXライブミュージアム「土・どろんこ館」で2016年11月から企画展示「つくるガウディ─塗る、張る、飾る!」の公開制作が進んでいた。ガウディの建築が職人と一緒につくりあげられたことに着目し、制作過程を楽しむ企画展だ。地下聖堂が現存するものの、未完となったスペイン・バルセロナのコロニア・グエル教会の地上部に思いを馳せ、現代の建築家と職人がそれぞれに見出したガウディ・スピリットを込めて造形にトライしている。
まず、ガウディが塔の造形に用いた逆さ吊り構造実験の資料に基づいて、展示本体の形状を設計したのは建築家・日置拓人ひきたくとさん(コンフォルト153号参照)。エントランス部分と7つのドームが十字型に連なり、曲面がトンネルのように続く。そこに仕上げを施しているのがタイル職人・白石普さんと左官職人・久住有生さん。天井高さ約5メートルの会場いっぱいに立ち上がったドームの周囲に丸太足場が組まれ、現場感がおおいに盛り上がっている。
二人はガウディ建築から何を感じとり、制作に臨んだのだろうか。タイル職人といえば一般にはタイル張りを専業にしているイメージが強いが、白石さんはタイルのデザイン・制作から施工までを手掛けている。「ガウディの建築はグエル公園のベンチなどに見られるように破砕タイルで曲面を仕上げています。タイルの廃材を利用したり、割れたものを使ったようですが、ぼくは自分でつくったタイルを割りたくはない。それで、割らなくても曲面を自由に張れるタイルをつくりました」。
今回白石さんがつくった3種のタイルは「ルーザ」「ツェルツ」「アマーネ」。立体的なフォルムと存在感に思わず惹きつけられる。アーモンド形の「ルーザ」は、白石さんが学んだモロッコの伝統的なタイルデザインでは、基本的なモチーフ「八芒星」を張るときに絵柄を浮き上がらせる目地の役割を果たす形状で、常に脇役として使われる。日常的にたくさんつくり、愛着をもつこの形を、今回は主役にしたいと考えた。さらに動きを持たせて張れるように片面に卵のような丸みをつけ、施釉する面を変えることで、2つの顔を生みだした。これにモチーフと色を掛け合わせ、中央のドームの天井に、「ルーザ」だけでブルーの花咲くような空間をつくりだしている。

モロッコのモザイクタイルの基本形「八芒星」の割り付け例。緑色の星形のタイルを割り付けるために周囲に変形菱形のタイル(白)が8つ必要なことがわかる。
モチーフのつなぎ目にも用いられるこの脇役のタイル「ルーザ」を、白石さんは今展示の主役にした。ルーザの意味は木の実(アーモンド)。正三角形の「ツェルツ」は、1辺を「ルーザ」と同じサイズで制作した。
「アマーネ」は、グエル公園の階段のそばにあるオブジェから着想した。瓦のようにエッジを重ねながら張ることができる。「ルーザ」は片面を卵のように膨らませ、施釉する面を変えて2タイプのタイルにした。「ツェルツ」は角がひらめく生き生きしたかたちが魅力。
オリジナルの石膏型に陶土を詰めて「アマーネ」を成型。「アマーネ」の名はこの度、久住さんが名付けたもの。
白石さんのタイルは良質の陶土で制作する。今回、INAXライブミュージアム「ものづくり工房」で製作・焼成した。

久住さんが塗った土の上に、タイルを張る白石さん。

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