建築家 伊東 豊雄氏が進める復興支援プロジェクト『みんなの家』×LIXIL 始動 Vol.1

2011年10月仙台市『みんなの家』建設

SAMOSシリーズ企画「建築家たちの視点×SAMOS #5」で伊東 豊雄氏が語られている、仙台市宮城野区の「みんなの家」。
SAMOS特設サイトの制作サイドストーリーでもご紹介しましたが、この建物は、2011年3月11日の東日本大震災で「家を失ったり避難されている方々に、精神的な安らぎを感じられる空間『みんなの家』を提供」するという主旨のもと、昨年10月下旬に竣工しました。
落成式では、参加者みなさんの笑顔があふれ、「みんなの家」という建物が、仮設住宅の住民の方以外にも、関係者を含めた「みんな」の「空間」であることが感じられた素晴らしい建築です。

仙台市宮城野区「みんなの家」と伊東氏

仙台市宮城野区「みんなの家」

2011年3月11日の東日本大震災で、家を失ったり避難されている方々が、精神的な安らぎを感じられる憩いの場を提供することを目的に、仮設住宅エリアの一角に共同スペースとして建設されたものです。この場所は、復興へ向けて人々が集まり、憩い、語り合って、情報を発信していく場所へと発展していきます。

「みんなの家」プロジェクト第2弾 釜石市で建設予定

この「みんなの家」プロジェクトの第2弾として、岩手県釜石市に次の「みんなの家」が出来ようとしています。

釜石市は、岩手県三陸地方のリアス式海岸のほぼ中央に位置する都市です。この地域は、東日本大震災によって大きな津波の被害を受けた都市のひとつです。
震災後、釜石市復興プロジェクト会議のアドバイザーとして任命された伊東氏によって、この釜石の商店街の一角に、新たな希望の場所となる「みんなの家」が誕生することになります。

LIXILでは、「私たちは、優れた製品とサービスを通じて、世界中の人びとの豊かで快適な住生活の未来に貢献する」という企業理念のもと、この「みんなの家」の主旨に賛同し、ここに集う「みんな」の未来の暮らしに向っていく希望にみちた空間になることを信じて、この釜石市商店街「みんなの家」づくりをサポートしていきます。

釜石市街の高台から海を眺める伊東氏釜石市商店街「みんなの家」イメージスケッチ(画像を拡大)

本連載では、現場の始動から完成までを3回(予定)にわたりレポートします。

(左)建設予定地(右上)ミーティング風景:LIXILスタッフと伊東豊雄建築設計事務所にて窓やトイレ、キッチンなど、建物内に取り付ける設備のミーティングを重ねました。(右下)現場では、基礎工事が始まりました。

プロジェクト企画趣旨 伊東豊雄建築設計事務所資料より転載

1. 企画趣旨

東日本大震災から半年が経過し、被災地では復興へ向けてさまざまな取り組みが始まっています。行政レベルでは復興計画の基本方針が固められつつあり、また被災した人々も瓦礫をかき分けて活動を再開しつつあります。そこにはプリミティブでありながらも、「生きること」への強い意志とエネルギーをうかがうことができます。そのような状況の中で、建築家にとって何ができるかを問うために、帰心の会(伊東豊雄、山本理顕、内藤廣、隈研吾、妹島和世)が結成されました。
帰心の会では、「みんなの家」と呼ばれるプロジェクトを提唱しています。これは家を失った人々が集まって暖をとり、飲み、食べ、語り合えるささやかな憩いの場をつくる試みです。それは避難所や仮設住宅で不自由な暮らしを強いられている人々にとっての「精神の安らぎを得る場」であり、同時に「復興について語り合う拠点」でもあります。「みんなの家」は瓦礫の間に立ち上げるミニマルな小屋です。時にはそれらは半壊した住宅や商店街のビルであり、或いは生き残った農業用の倉庫かもしれません。そんな場所に私達がカマドやきれいなテーブルをしつらえ、プリミティブでありながら輝く小屋に変えることによって、復興への契機となることが、期待されています。

2. みんなの家を釜石へ

この取り組みとして、岩手県釜石市に「みんなの家」を贈ることを企画しております。
釜石市は三陸地方のリアス式海岸のほぼ中央に位置し、近代製鉄発祥の地であると同時に水産資源の豊かな三陸漁場に面する都市です。かつては、多くの観光客も訪れる、自然に恵まれた魅力的な港湾都市の風景のあるまちでしたが、東日本大震災によって釜石市も甚大な津波の被害を受けました。
しかし震災後、被災した商店街での営業をあきらめて立ち去る商店経営者も実際にはおられます。
伊東豊雄が釜石市復興プロジェクト会議のアドバイザーとして震災後の5月より参加し、建築家の立場で、夢のある復興のまちづくりを検討、提案してきました。中心市街地である、東部地区の商店街が軒並み被災し、東部地区の商店街を再生することは、釜石の住民の悲願である最も重要な課題です。
釜石商店街のみんなの家は市の了解を得て、釜石のまちづくりのNPO@リアスが運営します。
商店街の住民からも、無料でインターネットを使うことができ、皆が集まれるような場所が商店街の一角にあればという要望もあります。
そのような「みんなの家」ができれば、東部地区商店街の中で、復興へ向けて人々が集まり、語り合い、情報を発信する場所となるでしょう。

特定非営利法人これからの建築を考える : http://www.itoschool.or.jp/

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