今月の業界NEWS トピックス

省エネ義務化の工程表示す、国交省など

 国土交通省、経済産業省、環境省の3省は4月4日、2020年度までに新築の住宅や建築物に対する省エネ基準適合を義務化する工程表案を明らかにした。工程表案では、建築物の規模別に時期を3段階に分けて義務化。早ければ17年度から開始する。義務化する省エネ水準も、導入時点での省エネ基準達成率などを踏まえて設定する。工程表案は、「低炭素循環型社会の実現」(前田国土交通大臣)をするためのハード・ソフトの両面からの施策を時系列にしたもの。住宅・建築物のゼロエネルギー化を最終目標としている。
 省エネ基準義務化は、建物の規模別に大規模、中規模、小規模に分け、義務化の時期をずらして段階的に実施する。大規模については2015年度以降、中規模が17年度以降に開始する。戸建て住宅など小規模建築は19年度以降とする。省エネ基準は、創エネ機器や設備なども含め総合的に評価できる方向で改正する方針。住宅向けの基準は12年度以降となる見込みだ。

今後3年間で建材設備市場は13%増、富士経済予測

 民間シンクタンクの富士経済は4月19日、国内の住宅設備・建材市場の調査結果を明らかにした。2011年の住宅設備・建材市場は、住宅着工戸数の回復や住宅エコポイント効果などの好条件により断熱関連が拡大、全体の市場規模は4兆9031億円(前年比5.9%増)となった。今年はさらに4.3%増え、5兆1150億円となると見込む。
 中期的には、3年後の2015年における全体の市場規模を、5兆5494億円(11年比13.2%増)と試算した。創エネやスマートハウス関連分野が2.5倍の8429億円に拡大、二ケタ増を支えると分析した。
 15年における市場予測の内訳でも、特に「設備」の伸びしろが長いとする。住宅設備市場予測値は3兆4544億円(同20.5%増)なのに対し、建材市場予測値は2兆950億円(同2.8%増)にとどめた。

住宅市場は緩やかな回復基調に、建設経済研予測

 政府系シンクタンクの建設経済研究所と経済調査会経済調査研究所は4月23日、2012年度の住宅着工予測を公表した。着工戸数は88万3200戸(11年度予測比4.5%増)、民間住宅投資額は13兆5600億円(同4.4%増)としている。着工戸数が回復基調に入ったこと、復興需要への期待などにより、これから緩やかな回復基調に入るとした。
 特に持ち家の増加を32万1千戸(同4.9%増)と見込み、持ち家が着工数全体を牽引する可能性を示した。
 名目民間住宅投資額は2010年度までに底入れ。11年度は同4.5%増、12年度は同4.4%増と、2年連続で増加傾向が続くと予測した。復興需要が押し上げ要因となり、回復基調が継続すると考えられることが大きな理由だ。

【記事配信元 住宅産業新聞

今月のフォーカスポイント

「省エネの春」がやってきた

 2012年度からの住宅市場はどうなるのか、今回はまず、2つの予測を取り上げました。民間シンクタンクは「今後3年間で設備投資額が20%増加する」とする予測を公表。一方、政府系は着工戸数全体が底入れし、比較的好調だった11年度の流れを引き継いで「緩やかな回復基調」をたどるとしています。着工戸数は88万戸台で推移するという予測です。「リーマンショック」により着工戸数は09年度に77万戸台まで縮小しましたが、この傾向は10年度に底入れしており、12年度もその流れを引き継ぐとの見方です。一方、建築される住宅は好況だった09年度以前とは様変わりしそうです。それを予見させるのが、今後予定される「省エネ義務化」です。

ポイント

■「創エネ+省エネ」総合評価に

 富士経済予測はこれから3年後の15年において、「設備」の市場規模は11年度との比較で20.5%拡大する、としています。この主要因は「創エネやスマートハウス関連分野」で、これらは11年度比で2.5倍も増えるといいます。あくまでも予測値ではありますが、変化の兆しを指摘したものといえます。政府は現在、「原発依存からの脱却」を始めとするエネルギー供給方法の切り替えの一方、建築物のエネルギー消費量削減にも熱心に取り組んでいます。大規模建築では15年度から、住宅など小規模建築でも19年度には今後改正する省エネ基準の義務化を開始する見通しです。従来、住宅など建築物の省エネ基準は断熱性能の向上など、建物単体が閉じた状態でのエネルギー消費量だけを評価してきました。国交省などは新たな基準について、「創エネ」した分を差し引く「総合評価式」とも言うべき形に変えると説明しています。

まとめ

 省エネにおける新基準がどのような形になるかは、今後も議論が続きますが、創エネとの総合評価となるだけでなく、夏場の風通しや、日射遮蔽など、パッシブな手法も採り入れるとの方針がすでに出ています。住宅会社としても賛同できる仕組みになるか、また補助金やエコポイントといった促進策がどの程度行われるか、要注目でしょう。また政府は既存の建物でも、義務化はしないものの促進策を積極的に打ち出す考えです。こうした新需要を取り込めるか、住宅会社の手腕が試されそうです。

<ライタープロフィール>
梶井 浩
1970年生まれ。大学卒業後、住宅専門新聞社に就職。記者職を6年間勤めた後、独立。住宅・建築関連の取材を続けて17年目。
現在も建築専門誌、専門 webを中心に執筆中。

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