今月の業界NEWS トピックス

分譲2ケタ増も持ち家は微減、2011年度住宅着工

 2011年度(11年4月〜12年3月)の新設住宅着工戸数がまとまった。総戸数は84万1246戸で、10年度比2.7%増。増加は2年度連続。特に分譲住宅の伸びが目立った。分譲マンションは3年ぶりに10万戸を超えた。
 利用関係別では、まず持ち家が30万4822戸(10年度比1.2%減)となり、前年度の増加傾向から再び減少傾向に転じた。貸家は28万9762戸(同0.7%減)となり、3年連続の減少。
 分譲住宅は23万9086戸(同12.7%増)。内訳では、マンションが12万92戸(同22.8%増)、戸建てが11万7979戸(同4.0%増)となり、いずれも2年連続で増加した。
 東日本大震災で被災した県では、宮城が同34.9%増となった一方、岩手が同3.9%増、福島が同0.5%減など、まだら模様となった。

「ゼロエネ住宅」支援事業を開始、政府

 住宅のネット・ゼロ・エネルギー化を推進するため、国土交通省および経済産業省の補助・支援事業の公募が5月11日から始まった。国交省の事業は対象を年間供給戸数50戸未満の中小工務店に限定しており、認められると1戸最大165万円の補助金が出る。経産省の事業は先導的な省エネシステムの導入を促すもので、同350万円の補助金が交付される。公募締め切りはともに6月22日。
 国交省の補助事業は「住宅のゼロ・エネルギー化推進事業」。2019年度以降に予定されている省エネ基準義務化を踏まえ、断熱性能要件に平成11年基準の適合を加えた。断熱仕様の底上げを促す様相を帯びている。
 経産省の支援事業は「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス支援事業」。新築の場合、断熱性能としてⅣ地域では熱損失係数1.9以下(同地域の平成11年基準は2.7以下)、夏期日射取得係数0.04以下(同省エネ対策等級4等級は0.07以下)を必須とした。先導的な省エネシステムを導入した高省エネ住宅を求めているのが特徴だ。

太陽光発電・蓄電池・HEMS搭載で2千万円以下、ヤマダ電機など

 ヤマダ電機とエス・バイ・エルは、2.3キロワットの太陽光発電と5.53キロワットの蓄電システム、HEMS(ホームエネルギーマネジメントシステム)の3点セットを標準搭載した戸建て住宅の新商品として、本体価格1860万円(施工面積99.35m2)を実現した「G スマート」を発売した。キッチンなどはオール電化仕様だ。
 新商品は、光熱費の約7割の削減(エス・バイ・エル標準仕様比)が可能という。基本照明はLEDで、電気自動車(EV)用の充電コンセントも装備して環境に優しい暮らし方に対応する。

【記事配信元 住宅産業新聞

今月のフォーカスポイント

省エネ商戦の行方は

 昨年度(2011年3月まで)の住宅着工がまとまりました。戸建て注文住宅(持ち家)はやや減少したものの、全国ベースでは30万戸を維持しました。ただし総戸数では宮城県が30%以上増加するなど、震災復興に伴う「特需」の影響は否定できず、被災地以外の地域における減少傾向が浮き彫りになったともいえそうです。一方、日本全国におけるすべての原子力発電所が定期点検のために停止、この夏の厳しい電力需給見通しが連日報道されています。そんななか、相次いで2つの動きがありました。政府による「ゼロエネ住宅」振興策の開始と、家電量販店による住宅事業参入として話題を呼んでいるヤマダ電機の選択です。

ポイント

■政府振興策は徹底した「断熱強化」へ

 国土交通省、経済産業省が開始した「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)」化への取り組みは省エネ基準義務化の前哨戦という意味合いが色濃く、高断熱化が基本です。「ネット」は「正味」を意味し、政府はZEHを「最終的なエネルギー消費量がゼロになる住宅」だとしていますから、断熱材の厚みを増やして、住宅内の冷気・暖気が逃げて行かない構造とすることが欠かせません。ただし熱気がこもらないようにしなければ、冷房負荷は上がります。建物全体を均等に断熱しなければ、結露も起きやすくなります。高断熱化は、単に断熱材を厚くすれば良いというわけではなく、断熱材を増やしたことへの弊害への対処も必要になるのです。省エネ基準義務化までに、こうしたノウハウを蓄積しなければなりません。政府が補助金の要件に高断熱化を入れた理由は、中小の住宅会社でもこうしたノウハウ蓄積に踏み出せるようにするインセンティブといえます。

まとめ

 家電量販店の住宅事業進出例として話題のヤマダ電機は、徹底した「設備重視」の作戦を選んだと言えるでしょう。照明をすべてLED照明とし、さらに太陽光発電パネルと蓄電池を併用することで、オール電化仕様としても光熱費は従来と比較して7割も削減できるとしています。それでも、延べ床面積約100m2のモデルで2千万円を切る値付けだそうです。具体的な仕上げや仕様の違いで価格はずれ動くでしょうが、設備的な工夫だけでも「やればできる」ことを消費者に示した点が注目できるのではないでしょうか。こうした設備を備えた建物を高断熱化すれば、政府の言うZEHには非常に近くなるでしょうが、ヤマダ電機は現時点における優先順位を考慮し、設備優先の設計に踏み切ったといえます。省エネ対策は、まだまだ始まったばかりです。

<ライタープロフィール>
梶井 浩
1970年生まれ。大学卒業後、住宅専門新聞社に就職。記者職を6年間勤めた後、独立。住宅・建築関連の取材を続けて17年目。
現在も建築専門誌、専門 webを中心に執筆中。

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