今月の業界NEWS トピックス

太陽電池に15年間の延長保証、シャープ

 シャープは、住宅用太陽光発電システム機器の有償保証「まるごと15年保証」をスタートさせた。モジュールやパワーコンディショナー、架台などの周辺機器の修理・交換と、モジュール出力の保証を15年間行う。将来のメンテナンス費用や設備機器の信頼性に不安を感じるユーザーの悩みを解消し、受注に結びつけたい考えだ。
 料金は設置システム容量によって異なる。一般的な設置容量の3〜4キロワット未満のシステムの保証料金は1万5960円(税込み)。
 保証期間内における有償保証加入者の機器費用や修理費用は、同社が全額負担する。修理回数や金額の上限はない。
 同社の試算によると、修理の可能性が最も高いパワーコンディショナーの基盤交換をした場合、部品代、作業費、出張費込みで7万円以上になるという。同社は「パワコンやモジュールなどの機器の改良を続けた結果、15年間なら採算が取れると判断した」と説明する。

“原発ゼロ”なら太陽光1200万戸必要、政府試算

 政府の国家戦略会議はエネルギー・環境に関する選択肢として、2030年における原発依存度の割合による3つのシナリオを提示した。太陽光発電システムの導入状況も試算しており、30年に原発をゼロにするシナリオでは、太陽光発電で721億キロワット時を賄い、住宅への太陽光発電設置数は1200万戸に相当するとした。これを実現するには13兆8000億円の追加投資が必要で、さらに耐震性が低いなどの理由で太陽光発電の設置が不可能な住宅の改修、建て替え、さらに住宅で生み出された電力を電力会社が買い取る固定買取価格をより高水準にする、などが必要としている。
 政府は30年におけるエネルギー供給体制として、温室効果ガスを1990年比で2割以上削減できることを条件としたシナリオを提示。それが原子力発電比率ゼロ、15%、20〜25%の3つだ。“原発ゼロ”の場合、太陽光発電など再生可能エネルギー比率を35%にする必要があり、現状(10年)より25%多くなる計算だ。新築住宅は全新築を次世代省エネ基準以上に適合させ、省エネ性に劣る住宅・ビルの新規賃貸制限や省エネ性に劣る空調の省エネ改修義務付けなど、既存設備への厳しい規制が必要とした。
 また再生可能エネルギー比を30%に下げたシナリオ(原発依存度15%)でも、太陽光発電は1千万戸の設置が求められ、現在設置可能なほぼすべての住宅の屋根に導入する格好になる。設置に必要な追加投資は12兆1000億円と試算している。

リフォーム規制見直し検討、「軽微な工事」にも建設業許可

 国土交通省はリフォーム市場の整備の一環として、現在のところ建設業許可が不要な「軽微な工事」まで建設業許可の対象にする方針で検討に入る。7月10日にまとめた建設産業戦略会議の提言で示された。建築工事では、一式請負の場合で代金1500万円未満の工事または延床面積が150m2未満の木造住宅工事、一式でない場合で代金が500万円未満の工事であれば、国や地方自治体から建設業許可を受けていない事業者でも請け負える。しかしリフォーム工事は代金500万円未満のものが約8割に達しており、トラブルも多発していることから、提言は「建設業許可やそれに準じる仕組みの導入が必要」としている。

【記事配信元 住宅産業新聞

今月のフォーカスポイント

太陽光発電の大量導入

 日本列島では7月半ばから猛暑日が連続しています。ギラギラと照りつける太陽光をエネルギーとして利用したいと考えるのは、消費者心理として当然のことかも知れません。今回はまず、家電大手で太陽光発電システムでは老舗のシャープが、有償の保守プログラムを導入したことを取り上げました。太陽光発電を扱うメーカーでは最近、こうしたサービスを導入する例が増えています。一方、国のエネルギー政策を巡る政府方針のなかで、太陽光発電の存在感が増しています。原発依存度ゼロなら住宅1200万戸に、依存度15%程度でも1000万戸に、太陽光発電を新規導入する必要があるというのです。

ポイント

■10兆円以上の需要、存在感示せるか

 東日本大震災で福島第一原子力発電所がメルトダウンを起こしたことを受け、日本ではいったんすべての原発が止まりました。その後、真夏の電力供給量不足の懸念から大飯原発の再稼働が政治判断され、現在に至っています。国として今後のエネルギー政策をどうするか、政府諮問機関は、原発依存度を大震災前の水準に戻す(依存率25%)、またはある程度は再稼働(依存率15%)する、すべて停止させる(依存率ゼロ)、という3つのシナリオを提示しています。

 注目すべきは、依存度を震災前の水準に戻さない限り「太陽光発電が新規に1000万戸以上必要」としている点です。現状では、すべての原発の再稼働に国民の理解は得られない可能性が高い一方、電気料金値上げが現実となったいま、太陽光発電の市場規模拡大がより現実味を帯びてきました。その担い手として住宅業界が急浮上してきたのです。政府提言によれば、2030年までの8年間で、10兆円以上の投資が見込めるといいます。ところがニュースでも取り上げたように、その担い手には家電メーカー自らが名乗りを上げるようになっています。

まとめ

 建設業を所管する国交省は、500万円以下のリフォーム工事についても請負者に建設業許可を求める方針を打ち出し、建設業法改正の可能性も出てきました。既存住宅への太陽光発電システムの取り付けは総額500万円以下の小額工事がほとんどですから、ここにも影響は及びます。建設業許可事業者には、法令尊守(コンプライアンス)を担うという大事な役割があります。保守サービスに乗り出したメーカー側とタッグを組むに相応しい会社になれるかも、これから住宅会社が真剣に取り組むべき課題ではないでしょうか。

<ライタープロフィール>
梶井 浩
1970年生まれ。大学卒業後、住宅専門新聞社に就職。記者職を6年間勤めた後、独立。住宅・建築関連の取材を続けて17年目。
現在も建築専門誌、専門 webを中心に執筆中。

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