今月の業界NEWS トピックス

受注金額は10四半期連続プラス、今年4月から6月の景況感

 住宅生産団体連合会がまとめた「経営者の住宅景況感調査(7月度)」によると、2012年度第1四半期(12年4月から6月)の景況判断指数は総受注戸数でプラス19ポイント、金額でプラス22ポイントとなった。受注戸数は5四半期連続、金額は10四半期連続でプラスだった。第2四半期(7月〜9月)も戸数・金額ともに大幅アップが見込まれている。調査結果は住団連及び加盟団体法人会員のトップに対して実施したアンケートに基づく。直近3カ月の実績と向こう3カ月の見通しを、前年同期比で10%程度以上良い、5%程度良い、変わらず、5%程度悪い、10%程度以上悪い──の5段階評価を依頼し、集計した。
 部門別にみると、戸建て注文住宅は受注戸数・金額ともにプラス3ポイント。受注戸数は11四半期連続でプラスが継続している。戸建分譲住宅は受注戸数・金額ともプラス19ポイント。前四半期のマイナスから転じた。展示場来場者数も増加傾向にあり、消費税引き上げを見据えた顧客も増えている。
 第2四半期見通しは、総受注戸数がプラス53ポイント、金額プラス50ポイントで大幅なプラスだった。
 リフォームは、第1四半期の受注金額がプラス50ポイント、第2四半期見通しがプラス68ポイントだった。太陽光発電の固定買取制度や耐震補強工事など、支援制度の効果やリフォーム工事の大型化への期待の声が聞かれた。

消費税増税の影響で「買い時感」高まる、2社が意識調査

 7月下旬の同時期に公表された住宅に関する民間企業の意識調査で、最近の消費税増税議論が住宅購入マインドに与える影響を伺わせる結果が出た。野村不動産アーバンネットの調査では、不動産買い時の理由として消費税引き上げをあげる回答が増加。長谷工アーベストの調査でも住宅買い時の理由で同様に増えた。
 野村不動産アーバンネットが公表したのは、「第3回・住宅購入に関する意識調査」(7月24日発表)。不動産について「買い時」と回答した人の割合は60.4%となり、前回(12年1月)から10.7ポイント増加した。買い時と判断した理由は「住宅ローン金利が低水準」が77.3%と最も多い。それに次ぐ「今後、消費税が引き上げられる可能性が高い」(58.6%)は、前回よりも6.7ポイント増加していた。また今度の不動産価格予想は、「横ばいで推移」(47.2%)が最も多かった。
 長谷工アーベストが公表したのは、首都圏居住者モニターやモデルルーム来訪者に対して行ったWEBアンケート調査「顧客マインド調査」(7月26日発表)。「買い時と思う」との回答数から「買い時と思わない」回答数を引いた「住宅の買い時感」の値は、首都圏居住者モニターでプラス5ポイント、モデルルーム来訪者でプラス26ポイントとなり、震災前の水準まで回復した。モニターでは震災以降初めてプラスになった。買い時と思う理由は、モニター・来訪者ともに「金利が低水準」に次いで「消費税の引き上げが予想される」が挙がっており、消費税増税への意識が高まっていた。

消費税引き上げ決定、注文住宅の契約は半年前まで

 8月10日に開かれた参議院本会議で、消費税引き上げ法案を含む社会保障・税一体改革法案が民主、自民、公明など賛成多数で可決した。消費税率は2014年4月から8%、15年10月から10%に引き上げられる。住宅の駆け込み需要とその反動減など混乱が懸念される。なお注文住宅、分譲住宅とも、課税対象は建築代金と関連事務手数料など。これまで通り土地取得代金は対象外だ。
 注文住宅では、前回(1997年4月に施行された税率3%から5%への引き上げ)は「税率が上がる半年前までの請負契約であれば税率を据え置く」という経過措置が設けられた。今回も同様の措置が導入される予定だ。具体的には、13年9月末までに工事請負契約を行った注文住宅は、引き渡しが14年4月以降でも税率5%のままになる。一方、13年10月1日以降の契約なら、14年3月末までに引き渡さなければ税率は上がる。
 分譲住宅は売買契約なので、消費税の税率は原則として引き渡し時点の税率になる。14年3月末までの引き渡しなら5%、14年4月以降なら8%だ。ただ、条件によっては注文住宅と同様に13年9月末までの契約で5%に据え置く措置が採られる可能性がある。

【記事配信元 住宅産業新聞

今月のフォーカスポイント

ついに決まった消費税引き上げ

 取り上げたニュースにもあるように、国会は消費税率引き上げを含む複数の法案を包括的に可決しました。消費税率は1年半後に現行の5%から8%へ引き上げられます。今後の注目点は、引き上げにあたっての経過措置が採られるか否かでしょう。また住宅生産団体連合会のまとめた景況感調査によると、すでに住宅営業の現場では影響が出始めていることが明らかになりました。早くも「駆け込み商戦」は始まっているのです。

ポイント

■チャンスはあと1年、トラブルの火種も

 日本で最初に消費税率が引き上げられたのは1997年4月。税率3%から現行の5%への引き上げでした。ニュースにもあるように、97年当時には「税率が上がる半年前までの請負契約であれば税率を据え置く」という経過措置が採られました。何年先の完成を想定していても、事前に建築工事請負契約が結ばれてさえいれば、引き渡し時の税額は契約時点の税率で計算すれば済んだのです。今回で言えば、13年9月末までがその期限となります。ちょうど、あと1年ということになるでしょう。経過措置はまだ決定されていませんが、まず前回同様となると考えられます。これは10%への引き上げ時も同様です。

 税率はあと3年後の15年10月に現行税率の2倍になります。そう考えれば、いずれ建てようと考えている土地持ちの顧客層にとっては、あと1年以内が「お買い得」なのは間違いないでしょう。

 当然ですが、施行半年前を切った13年10月以降の契約でも、14年3月末までに引き渡せば税率は現行の5%のままです。住宅会社が突貫工事で頑張ればクリアできるかも知れません。ただしこの場合、引き渡しが4月にズレ込んだ瞬間、顧客に請求する税率が上がります。契約における完成期日が3月末となっていればトラブルは避けられません。工期遅れのツケは、通常の遅延損害金よりはるかに高くつく可能性があります。

まとめ

 消費者側への調査結果でも、異例なほど長く続いている低金利を背景に、消費税引き上げが背中を押そうとしていることがわかりました。資力のある顧客層の動きは素早いのではないでしょうか。一般に、建築工事請負契約は建築予定地が決まらなければ結ぶことができません。あと1年にわたって、宅地の争奪戦も予想されます。一方、消費税引き上げによる家計への影響は、おそらく避けられません。政府は低所得者向けの対策を打つとしていますが、住宅を取得できる層は明らかに「低所得者」ではありません。住宅の買い手が徐々に減っていく可能性が高いと言えます。「その後」を見据えながら当面の繁忙を勝ち抜くしたたかさも必要です。

<ライタープロフィール>
梶井 浩
1970年生まれ。大学卒業後、住宅専門新聞社に就職。記者職を6年間勤めた後、独立。住宅・建築関連の取材を続けて17年目。
現在も建築専門誌、専門 webを中心に執筆中。

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