INTERVIEW 010 | SATIS

街に開く、自然とつながる、仕事場付きアパート

設計: 仲俊治+宇野悠里/仲建築設計スタジオ
五本木の集合住宅

仲さんの建築設計事務所への入り口

仲さんの建築設計事務所への入り口、緑の隙間から光が部屋の中まで入り込んでいる。軒と緑のカーテンで囲まれた土間空間が外部との心地よい接続エリアとなっている。

アパートメント
2つの循環

今まで仲さんは《小さな経済》という住まいの中に働く場所がある暮らし方を提案してきました。かつて家には商店であれ、農家であれ、暮らす場所に働く場所が隣接していました。近代以降の都市計画のゾーニング手法では、それぞれの機能をわけて都市を構成しています。また働く場所と暮らす場所にはつながりはなく、暮らす場での地域との関係は希薄なものとなっていきました。仲さんは経済とはコミュニティとの関係の中で育まれるもので、大きな経済活動でなくても顔の見える関係の中に小さな経済があることでより豊かな暮らしが実現できると考えてきました。
今までの共同住宅においても家で仕事をすることを前提にし、さらに小さな食堂やシェアオフィスを組み込んだりもしてきました。街との関係を生み出すような装置を住宅の中に取り組んできました。
こうしたプログラムを「社会との循環」と呼んでいます。

建築家の宇野さん、仲さん

建築家の宇野さん、仲さん。

入り口のサインが仕事場であることを示している。

入り口のサインが仕事場であることを示している。ファサードに3つのサインが並ぶように計画されている

一方で街に開くというこの住まい方には、風や光を感じながらも温熱環境の整った心地よい空間を作ることが大切だというのです。それは当たり前のようにも聞こえますが、実は一つ目の「社会との循環」を考えた街に開いていく開放系のデザインは、温熱環境の視点からは不利になっていきます。そこで開きながらも心地よい環境をつくり、風や光や音を感じながらも快適な環境をつくり出していくことを目指しているのだそうです。社会との接点となる空間を、自然エネルギーや資源で支えていく。このことを「自然の循環」と呼んでいます。

庇の長さ、窓の高さ、緑のカーテンの間隔など、冬は太陽の光を取り入れ、夏は日差しを遮り、涼しい風を取り込むようにその位置が決められている。

庇の長さ、窓の高さ、緑のカーテンの間隔など、冬は太陽の光を取り入れ、夏は日差しを遮り、涼しい風を取り込むようにその位置が決められている。

中間領域と選択的透過性

この家では1階にも2階にも深い軒をつくり、その屋根に沿って緑のカーテンをつくっています。深い軒は夏の暑い日差しを遮り、緑のカーテンは中間領域の土間への輻射熱を抑えます。また雨水をためてある水がめから水をまき、打ち水もします。この中間領域は外に開きながらも内部の快適さをつくり出す上で大切なのです。それは洋服を重ね着するように、ひとつひとつの膜は弱いものでも重ねることで快適さをつくり出していきます。その皮膜には、風は通すけれど光は通さない「ルーバー」のようなもの、虫は通らないけれど光は通す「かや」のようなもの、光は通すけれど風は通さない「ビニール」のようなものといったように、違う機能の透過するものを重ねていくことを「選択的透過性」と言っています。こうして生まれる中間領域は、温熱環境を向上させることに役立つだけでなく「社会の循環」をより促進させるためにも役立つのです。

2階個室の中に設置されている半透明のカーテン。

2階個室の中に設置されている半透明のカーテン。浅い角度で光があたると中が見えなくなる。選択的透過性に対応する素材として今回採用されたファブリック。

アトリエ入り口手前の外廊下

アトリエ入り口手前の外廊下。植栽には灌水チューブが設けられているが、普段は水がめに溜まった雨水をつかってみずやりをしている。

緑のカーテンの間に埋め込まれた郵便ボックスとインターホン

緑のカーテンの間に埋め込まれた郵便ボックスとインターホン。