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LIXILシステムバス進化論

(『コンフォルト』2017 December No.159掲載)

LIXILが1967年にシステムバスの量産を開始してから2017年で50年になりました。短工期でホテルの客室に浴室を設置できる便利さからスタートし、家族待望の内風呂付き集合住宅や新築戸建てにも広がり、システムバスの機能性は時代とともに大きく進化した。
いま新たな進化が、世界一風呂好きな日本人の心身を癒している。

LIXILシステムバス量産開始50周年
わが家に来たお風呂
伊奈製陶(現・LIXIL)が1958年(昭和33)に製造を開始した単体浴槽「ポリバス」。当時最先端の材料だったFRP(ガラス繊維強化プラスチック)を用いた浴槽は丈夫で軽く、プレス製法で量産を可能にし、住宅の大量供給とともに普及した。これがシステムバスへの最初の一歩だった。写真の風呂釜付きポリバス「ポリセット」(81年製)はLIXIL資料館で見ることができる。右側に接続されているのは60年代に登場したバランス釜(ガス風呂釜)。ガスバーナーを内蔵し、浴槽に貯めた水を直接沸かす。

気持ちいいお風呂に、ことばはいらない
システムバスの開発をリードする 浜田広一さん

浜田広一 Hiroichi Hamada浜田広一 Hiroichi Hamada
1969年生まれ。91年入社後、化粧洗面室事業部とキッチン事業部勤務。2001年から浴室事業部に所属、現在、浴室開発部部長。大学時代は工学部で応用化学を専攻。合成樹脂に精通し、人造大理石の開発スキルが各事業部で生かされてきた。開発拠点のある愛知県常滑、東京、茨城県筑波工場を行き来しながら、全国を忙しく飛び回り、出張先のホテルでは歴史的システムバスとの出会いをひそかな楽しみにしている。「私が知らない時代のシステムバスが現役で使われていると、うれしくてたまらないんです」。スーパー銭湯もよく利用する。

内風呂を実現したポリバスとシステムバス

現在、住宅に風呂があるのはごく当たり前だ。狭小住宅や、20㎡に満たないワンルームマンションにも、小さいながら風呂が備わっている。だが戦後、住宅が不足していた時代からしばらくは、一般庶民の多くが銭湯に通っていた。銭湯を外風呂、家に設けた風呂は内風呂と呼び、わが家で家族で風呂に入るのは贅沢なことだったのである。
1950年以降、景気は上下変動しつつも暮らしが落ち着いてきて、内風呂付きの家が建つようになる。
セメントモルタルで防水工事をし、木製の浴槽を置いたり、タイル風呂などがつくられた。そこに58年、伊奈製陶(現・LIXIL)FRP製の浴槽「ポリバス」の生産を開始した。公団住宅にも採用され、丈夫で軽い新しい浴槽として、全国的に家庭の風呂に浸透していった。
「単体のポリバスを置くことは簡単ですが、在来工法で住宅のお風呂場の床や壁をつくり、仕上げるには早くて3週間、通常は1カ月ほどかかっていました。それが60年代、東京オリンピックの建設ラッシュをきっかけに、ホテルの浴室を短期間でつくれるシステムバス(*1)が開発され、住宅にも転用されました。2日でお風呂がつくれるようになった。当時、これは劇的な変化だったのです」と語るのは、LIXIL浴室事業部の浜田広一さん。開発に携わるシステムバスのエキスパートだ。
浜田さんが記録を遡ると、伊奈製陶は65年にオーダーメイドでホテル向けのシステムバスに着手し、病院、マンションにも納めていた。67年には常滑市の大谷工場で量産を開始。以降70年代に住宅の大量供給の波に乗り、80年代にシステムバスの普及率(※2)は約50パーセントに達した。

タイルの魅力もシステムバスに

日本の風呂の大きな特徴は、浴槽の外に体を洗うスペースがあることだ。システムバスは、防水パンの上に浴槽と洗い場の床をセットして、パネル化した壁・天井、ドアを現場で組み立てるだけ。防水工事不要で浴室が完成する。施工コストも抑えられ、圧倒的に機能的である。だが、機能だけではいかにも味気なく、デザイン性も求められていく。74年に伊奈製陶はシステムバスメーカー初のタイルパネル(※3)を壁に採用。プリントしたビニルフィルムを鋼鈑に張った「鋼鈑ユニット」タイプに、質感と彩り豊かなやきものタイルを張った「タイルユニット」タイプが加わり、選択の幅を広げた。
「システムバスの顔は壁なんです。面積がいちばん大きく、空間のイメージにもっとも影響を与えます」と浜田さん。「現在はインクジェットの技術が高度に発達し、鋼鈑ユニットでもタイルの風合いまで再現できるほど。しかし、タイルユニットはユーザーの方々からの要望が多く、40年以上、現在までつくり続けています」。目地材の材質も進化し、カビ汚れが発生する心配が減ったことから、材料コストが上がってもタイルの人気は根強いという。
一方、80年代後半から90年頃のバブル経済の時代には、本物指向のジェットバスや泡風呂、大理石浴槽などが卓越し、システムバスの普及率はさほど上昇しなかったというのはおもしろい。「システムバスが一挙に普及したのはバブルが崩壊してからなんです。施工費を抑える時代に入った。リフォームに対応する選択肢として、既存の住居部分になじむ落ち着いたテイストの製品をつくり、カタログで提案しています」。システムバスの普及率は90年代に80パーセント、2000年代には90パーセントを超えていった。

(※1)創成期にはユニットバスルームと呼ばれ、その後システムバスルームとネーミングされた。
(※2)システムバスと、単品浴槽の生産台数から割り出した比率(LIXIL調べ)。
(※3)フレキシブルボードにタイルを接着してパネル化したもの。

SMCプレス成形でFRP浴槽を量産

茨城県・筑波工場でのFRP浴槽製造の様子。FRPの材料はSMC(Sheet Molding Compound)と呼ばれ、熱硬化性の合成樹脂、充填剤、着色剤、ガラス繊維などを調合してフィルムに塗布、ガラス繊維を挟んでシート化したもの。
プレス機で加圧、加熱して成型が終わり、浴槽が脱型されたところ。
プレス機で加圧、加熱して成型が終わり、浴槽(写真上)が脱型されたところ。ロボットアームが延びて浴槽を外したあとは、別のロボットがはみ出たバリをセンサーで感知して取る。多品種少量生産の場合はほぼ手作業に近い積層法のハンドレイ成型、人造大理石は樹脂の調合を工夫し型に注いで硬化させるなど、生産台数や求めるテクスチャーなどによって異なる。
浴槽の形状に合わせて折り畳んだSMCを、金型の下型にセットしている。この後、頭上の上型が下りてくる。

システムバスの進化

1979年の「伊奈ユニットバスルーム」のカタログから。ホテル用のトイレ、洗面が一体の「3点式ユニット」。伊奈製陶らしく、タイルパネルのパターンと色柄を選べることが強調されている。(クリックで拡大)

1964年開催の東京オリンピックにホテル建設を間に合わせるため、浴室の工法を合理化したユニットバス(システムバス)が考案された。それが集合住宅や戸建て住宅にも転用、改良されて、浴室が数日で施工できるようになった。ガス給湯方式、デザインや色柄、浴槽の質感、ジェットバスなどの付加機能、浴室乾燥設備、バリアフリー対応の床、リフォーム対応など、システムバスは時代とともに多様化してきた。

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