独立・起業の心構え3

中小企業診断士 市岡直司(株式会社市岡経営支援事務所)

「起業後10年存続できる企業は26%」というデータが示す通り、ほとんどの起業家にとって生き残ること自体難しいと言えます。

  • 事業を軌道にのせ、起業後5年を越えて存続できる企業
  • 起業後1年足らずで廃業してしまう企業

これらを分けるものはいったい何でしょうか、何が成功と失敗を分けるのでしょうか。

失敗する起業家には共通の法則がある

生存率のデータが示す通り、多くの設立間もない企業を存続させることの方が少数派です。しかし、世の中には成功体験を語った本や成功した人の話は溢れています。そして、ほとんどの方の関心も成功者がどのようにして成功したかにあり、その方法・要因を知りたがります。

しかし、実際のところを成功した方の方法は千差万別です。
また、成功者に成功要因を聞いてもいろいろな要因が上がってきます。「運」という成功者も少なくありません。実は、成功事例における共通の方法や要因は見いだしにくいのです。それは、経営資源の違い・地域性・外部環境などさまざまな要因が絡み合って複雑に相互作用しているからとも言えます。

ところが、失敗する起業家には不思議といくつかの共通する特徴があります。初期段階で失敗する起業家の特徴を2つご紹介します。

起業・独立を失敗する人の2つの特徴

(1)情報収集が圧倒的に不足している

「敵を知り己を知れば百戦危うからず」
孫子の有名なことばですが、まさに起業・独立にもあてはまります。

みなさんの中で将来起業を志す方は、起業しようとしている分野や業界の特徴、自社と競合他社の違いなど、どのくらい情報収集しているでしょうか?成功する起業家は間違いなく、大量に情報収集し、その分野・市場・ニーズについて分析し研究しています。

情報収集とは本を読んだり資格を取ったりするだけでなく、先輩に聞いたり、自ら足を運んで視察したりとやり方さまざまです。昨今、情報量の差が戦略の決定的な差となり、起業後に事業の成否に大きなインパクトを与えます。情報収集せずに戦ってはいけないのです。

短期間で失敗する起業家の多くは、圧倒的に勉強や情報収集が不足しています。

(2)最低限の必要資金がない

起業に必要となる資金は、業種・業態によって大きく異なります。飲食店や小売業などでは開業資金として数千万必要となるのはよくある話です。店舗の賃借料やリフォーム料、設備費など多くの資金が必要となるからです。

それに比べて開業資金が少なくて済む業種も多く存在します。設計事務所の開業など比較的開業資金が少なく済む業種の1つです。パソコンや備品の購入費用くらいで開始できるのではないでしょうか。

しかし必要となる資金はそれだけではありません。上記の資金はいわゆる設備資金と言われるものです。これ以外に事業継続していくには運転資金というものが必要です。起業当初の個人事業主の場合、最悪仕事がない場合の生活費も含まれます。

起業当初は最初からお客が存在し、仕事が決まっていることは稀です。事業を軌道に乗せるまでには3ヶ月から1年以上有するものです。あまり悲観的になる必要もありませんが、1年くらいは仕事がほとんどなくても生活できるくらいの資金的余裕は必要となります。

この運転資金を過少に見積もっていたために事業継続を断念するケースも多く見受けられます。

このコラムの関連キーワード

公開日:2018年09月28日