個人事業から法人化へのタイミング1
~メリットとデメリット~

中小企業診断士 市岡直司(株式会社市岡経営支援事務所)

  • facebook
  • twitter

これまで個人事業主として事業を営んでいる方にとって、法人化(いわゆる法人成り)のタイミングはとても悩ましい問題の一つです。

法人化(法人成り)とは、個人事業主として事業をおこなっている方が、新しく会社を設立して、その会社組織の中で事業を継続して行っていくことです。 

何事にもメリットとデメリットがあります。この両面をしっかり把握することが第一歩です。今回は、法人化のメリットやデメリットを検討します。そして、次回ご自身の事業を法人化するタイミングについて考えます。

では、一般的な法人化のメリットについて大きく4つ挙げていきます。
具体的に見ていきます。

【個人事業主が法人化する4つのメリット】

1)税負担が軽減される

一般的に、一定以上の所得であれば、個人事業主よりも法人の方が税負担が軽くなるといわれています。

個人事業の売上には、所得税が課せられ、法人の売上には、法人税が課せられます。
所得税と法人税の違いとして、所得税は、累進課税制度となっており、課税対象の所得金額に応じて、金額が多くなるほど税率も高くなります。当然所得が多くなればなるほど所得税も多くなります。(最大45%の間で所得に応じて変化します)

一方で法人の場合はというと、所得に対して法人税が課せられます。法人税は税率がほぼ一律であるため、売上や従業員数、事業規模などを拡大させていく予定であれば、法人化を選択した方が良いと言えるでしょう。

また、法人では役員報酬を経費に計上することで法人の税負担を軽減することも可能となります。代表取締役や取締役の給与は、役員給与として会社の経費にすることが認められます。ただし、受け取る役員にとっては、所得税の課税対象となりますので注意が必要となってきます。

2)社会的な信用度が増す

法人化すると、取引先や金融機関などからの社会的な信用が高まります。

例えば、金融機関にとっては法人扱いとなり、個人事業とは大きな違いが生じてきます。法人化すると会社名や本店住所、事業目的などが謄本に記載されて法務局に登録されますので、社会的な信用につながるのです。

また、新たな取引先として取引をしてくれる企業も生まれてきます。大手企業の中には法人格のない企業とは取引しない場合もありますので、取引先の幅は広がるでしょう。

人材採用でも違いが生まれてきます。法人では、社会的な信用力が増したり、会社が社会保険料の一部を負担することが必要となるため、就職を検討している人にとって安心感を抱かせることができます。良い人材を確保できるなど、採用活動がしやすくなることにつながっていきます。

3)自分(社長)の給与に給与所得控除が使える

個人事業主として得られる資金は、事業所得の扱いとなりますが、法人の場合には、給与所得としての扱いとなります。法人化によって、法人から給与という形で報酬を受け取ることが可能となります。

その際に、個人事業主では享受することのできない給与所得控除を活用していくことができます。例えば、年間給与を500万円とした場合、154万円の控除を受けることができます。これに対して、個人事業主は、青色申告で年間65万円の控除が受けられるのみとなります。

4)決算対策がしやすくなる

個人事業の確定申告は、所得税は翌年3月15日まで、消費税に関しては翌年3月31日までに行います。1月から12月までを事業期間として、1年間の収入と支出をもとに税額が計算され、この期間の設定を動かすことはできません。

これに対し法人は、決算時期や決算日を決めることができます。売上のピークや不調な月を予測しながら、年間収益の予測をあらかじめ立てた上で、決算月の設定を行えるため、余裕をもった節税対策や決算準備をしていくことが可能となります。また業務の繁忙期を避けて決算期を設定していくことなども可能となります。

つづいて、法人化のデメリットについても見ていきます。

【個人事業主が法人化する3つのデメリット】

1)設立や決算に際して費用がかかる

まず法人を設立するにあたって費用が必要です。登録免許税や定款認定手数料、設立手続きの代行手数料、公証人手数料などが必要になります。

法人の場合、複式簿記を行う必要があり、決算書類には、損益計算書、貸借対照表、株主資本等変動計算書などが求められています。個人事業の場合は自分で確定申告していた場合でも、法人化後は税理士などの専門家に依頼することが必要になってきます。

2)赤字決算においても負担が必要

個人事業では、所得が0円の場合、所得税も住民税もかかりません。しかし法人には、法人税の一部として、所得に関係なく定額で決められているものがあり、赤字であっても支払わなければなりません。

3)社会保険の加入が義務付けられる

「社会保険の加入」は雇用される側のメリットがあるものの、法人側としては費用負担の増加というデメリットがあります。社会保険料の負担としては、健康保険、厚生年金、雇用保険料が発生します。

以上、法人化のメリットやデメリットをご紹介しました。次回は、事業を法人化するタイミングについて考えていきます。

公開日:2019年02月05日

  • facebook
  • twitter