2021年に向けた省エネ住宅づくり連載コラム(第3回)

省エネ性能の3つの基準はカンタン!
~まるわかり解説と建築士の対応方法~

久保田博之 (住宅性能設計コンサルタント・一級建築士、株式会社プレスト建築研究所 代表取締役)

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住宅の省エネ性能の説明義務化に向けて、9月5日に経済産業省・国土交通省が建築物省エネ法の関連政令案を公開しました。これによると、省エネ基準に適合しているか・していないか、適合していない場合には適合させるためにはどこをどのように変更して建築コストはおよそ●●円アップする、という説明書を作成してお施主様に説明しなければいけないことがわかりました。

今後、この内容は多少の変更はあるものの、ほぼ確定と言ってもよいでしょう。そのため、外皮性能(外皮平均熱貫流率 UA、冷房期の平均日射熱取得率 ηAC)と一次エネルギー消費量の計算は必須となります。

今回は、これら3つの基準について、ポイントを絞ってご説明します。このポイントをご理解して頂ければ、お施主様への説明も難しくありません。

1.外皮平均熱貫流率 UA(ユーエー)とは?

冬季に室内の暖房を止めると、室内の温度は徐々に下がっていきます。これは、住宅の外気に面した断熱部位(外皮)から熱が逃げていくからです。この逃げていく熱の総量を少なくすれば、室内温度の下がり方は緩やかになり、その結果、暖房費が削減出来て快適性も向上します。つまり、断熱性能が良い住宅になります。

なお、住宅の外気に面した断熱部位を「外皮」と呼びます。外壁と開口部(サッシ・玄関ドア等)は必ず外皮となります。また、天井断熱の場合には天井、屋根断熱の場合には屋根が外皮となり、同様に床断熱の場合には1階床、基礎断熱の場合には基礎が外皮になります。

共通の外皮 断熱仕様によって異なる外皮
天井断熱・屋根断熱 床断熱・基礎断熱
外壁、開口部(サッシ・玄関ドア等) 天井 または 屋根 1階床 または 基礎

外皮から逃げる熱の総量を「外皮熱損失量」と言い、この値は断熱性能の指標の一つです。ただし、延べ面積の大きい住宅ほど熱が逃げる外皮の面積も大きくなるため、「外皮熱損失量」も大きくなってしまいます。そのため、延べ面積が小さい住宅と比較すると、断熱性能が悪い住宅のように見えてしまいます。
そこで、外皮熱損失量を外皮の面積で割って平均化した値にすれば、住宅の大きさに関係なく断熱性能を評価することができます。これが、「外皮平均熱貫流率 UA」なのです。

以下の表は省エネの地域区分における「外皮平均熱貫流率 UA」の基準値で、実際の設計値をこの基準値以下にする必要があります。

地域区分 1 2 3 4 5 6 7 8
主な地域 北海道
旭川
北海道
札幌
北東北 南東北・栃木・
新潟・長野
その他 宮崎・鹿児島 沖縄
外皮平均熱貫流率 UAの基準値
[W/(㎡・K)]
0.46以下 0.46以下 0.56以下 0.75以下 0.87以下 0.87以下 0.87以下

もし、設計値がこの基準値を超えてしまった場合、対策はカンタンです。外皮である外壁や開口部等の断熱性能を上げればよいのです。

2.冷房期の平均日射熱取得率 ηAC(イータエーシー)とは?

夏季に窓から差し込む太陽熱は、室内の温度を上げます。また、外壁や屋根も強い日差しが当たると熱せられて、その熱が室内に入り込みます。これらの窓や壁、屋根から入り込む熱の総量を小さくすれば、室内温度が上がりにくく、冷房の効率や快適性も向上します。

そのためには、日射遮蔽対策が必要不可欠で、その性能を評価するのが「冷房期の平均日射熱取得率 ηAC」なのです。基本的な考え方は「外皮平均熱貫流率 UA」と同じで、窓や外壁、屋根から室内に入ってくる日射熱の総量を求め、その値を外皮の面積で割って平均化した値です。そのため、住宅の大きさに関係なく日射遮蔽性能を評価することができます。

以下の表は省エネの地域区分における「冷房期の平均日射熱取得率 ηAC」の基準値で、実際の設計値をこの基準値以下にする必要があります。なお、冷房期の基準なので、1~4地域の基準はありません。ただし、これらの地域でも、近年は酷暑になる時期もあるので、基準値はなくても「冷房期の平均日射熱取得率 ηAC」を考慮した設計は必要でしょう。

地域区分 1 2 3 4 5 6 7 8
主な地域 北海道
旭川
北海道
札幌
北東北 南東北・栃木・
新潟・長野
その他 宮崎・鹿児島 沖縄
冷房期の平均日射熱取得率
ηACの基準値
3.0以下 2.8以下 2.7以下 3.2以下

もし、設計値がこの基準値を超えてしまった場合、どのようにしたらよいのでしょうか?室内に入ってくる熱の多くは窓からの太陽熱です。よって、窓の日射遮蔽対策を行うことが最も効果的で、具体的には以下の方法となります。

● 窓に日射遮蔽性能の高いLow-Eガラスを用いる。
● 窓に庇を設ける、もしくは軒を深くする。
● 窓に外付けブラインドや和障子を設置する。

3.一次エネルギー消費量とは?

この用語を初めて聞いた方も多いと思われます。従来の家づくりでは、省エネルギー性能があまり重視されていなかったためですが、これからは基本的な知識として不可欠となります。
一次エネルギーとは、天然ガスや石油、石炭などの化石燃料や、原子力、水力などの自然界から取られたままのエネルギーのことです。それに対して、二次エネルギーとは、ガスや電気などの一次エネルギーを変換・加工したエネルギーのことです。つまり、私たちが家庭で使っているエネルギーのほとんどは二次エネルギーです。

普段使っている二次エネルギーの消費量の方がわかりやすいのに、なぜ、一次エネルギーの消費量を使うのでしょうか?家庭で消費する二次エネルギーは電気、ガス、灯油など様々で、それらの消費量は200kWh、10㎥、18ℓなどと表しますが、これでは住宅1棟で消費しているエネルギーの総量を共通の尺度で表せません。
それに対して、二次エネルギーの原料である一次エネルギーの消費量は、全てJ(ジュール)というエネルギーの単位で統一されています。つまり、実際に使うのは二次エネルギーであっても、その原料の一次エネルギーの消費量で表せば、電気、ガス、灯油などをどのように組み合わせて使用してもJ(ジュール)という同じ土俵で比較できることになります。

一次エネルギー消費量を小さくするには、暖冷房機器、給湯機器、換気設備、そして照明設備などについて、エネルギー消費効率の良いものを選択することが重要です。そのため、今後はお施主様に設備機器の選び方や提案も必要になります。

いががでしたでしょうか?住宅の省エネ性能の3つの基準について、ポイントをご理解頂けたと思います。

ただし、これらの3つの基準に適合しない場合には、適合させるための改善策とそれにかかるコストもお施主様に提示しなければなりません。そのため、次回のコラムでは3つの基準の内、まずは断熱性能に直結する「外皮平均熱貫流率 UA」を取り上げて、最適な省エネ住宅のつくり方のテクニックを説明していきます。

この連載コラムを読んで実践して頂ければ、「住宅の省エネ性能の説明義務化」の準備は万全!ぜひ、この連載コラムを通して、今から2021年に向けた省エネ住宅づくりの準備を始めていきましょう。

久保田 博之

コラム執筆者紹介

久保田 博之

株式会社プレスト建築研究所 代表取締役 一級建築士(構造設計一級建築士)
木造住宅の温熱環境・構造に関わる設計コンサルタントや一般社団法人 日本ツーバイフォー建築協会等の団体によるセミナー講師を歴任する住宅性能のスペシャリスト。

  1. ※ 平成28年1月29日 国土交通省告示第265号より。今後、一部の地域区分が見直しされる動向となっています
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公開日:2019年10月15日

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