2021年に向けた省エネ住宅づくり連載コラム(第10回)

一次エネルギー消費量の計算をマスターしよう![給湯設備編]
~まるわかり解説と建築士の対応方法~

久保田博之 (住宅性能設計コンサルタント・一級建築士、株式会社プレスト建築研究所 代表取締役)

前回(第9回)は、一次エネルギー消費量の計算に必要な設備の決め方と計算プログラムへの設定方法で換気設備(24時間換気設備)と照明設備を説明しました。今回は給湯設備を取り上げます。

給湯設備

まずは、給湯設備の有無と浴室の有無の条件が必要です。選択肢は、次の1~3です。

1. 給湯設備があり、浴室もある
2. 給湯設備があるが、浴室はない
3. 給湯設備はない

3.の場合は、給湯設備に関する設定は不要です。給湯一次エネルギーの計算結果はゼロになります。

1. 給湯設備があり、浴室もある
2. 給湯設備があるが、浴室はない
のいずれかを選択した場合は、給湯設備の一次エネルギー消費量計算を行うため、以下の仕様や性能値等を事前に準備します。

①給湯熱源機
②配管方式
③水栓
④ふろ機能・浴槽

①給湯熱源機とは

給湯設備のことで、通常は「給湯専用機」、「給湯と温水床暖房一体型」、「コージェネレーション」から選択します。
なお、「給湯設備機器を設置しない」の選択肢もありますが、これは評価時点で給湯器が決まっていない場合に使います。
ただし、「給湯設備機器を設置しない」を選択しても、1~4地域は、石油給湯機、5~8地域はガス給湯器を使っているものとして計算されますので注意してください。
なお、「コージェネレーション」については説明を省略します。

LIXIL住宅省エネシミュレーションの給湯熱源機の選択画面

LIXIL住宅省エネシミュレーションの給湯熱源機の選択画面

「給湯専用機」は、以下の表に示す7種類から選択します。給湯の一次エネルギー消費量は住宅内で比較的大きな割合を占め、年間のランニングコストに大きく影響しますので慎重に選定する必要があります。なお、給湯器は、「2.ガス従来型給湯機」よりも「4.ガス潜熱回収型給湯機(エコジョーズ)」、「3.石油従来型給湯機」よりも「5.石油潜熱回収型給湯機(エコフィール)」、「1.電気ヒーター給湯機」よりも「6.電気ヒートポンプ給湯機(エコキュート)」を選択した方が省エネになります。
また、複数を運転した場合のエネルギー計算はできないため、1つの住戸内に複数の給湯機を設置してある場合には上位(番号が小さい)の設備を選択します。

「給湯専用機」の種類

給湯専用機の機種 評価方法の選択
1 電気ヒーター給湯機
2 ガス従来型給湯機 エネルギー消費効率、モード熱効率の入力
3 石油従来型給湯機 熱効率、モード熱効率の入力
4 ガス潜熱回収型給湯機(エコジョーズ) エネルギー消費効率、モード熱効率の入力
5 石油潜熱回収型給湯機(エコフィール) 熱効率、モード熱効率の入力
6 電気ヒートポンプ給湯機(エコキュート) JIS効率の入力
7 電気ヒートポンプ・ガス瞬間式併用型給湯機 機器の品番の入力
品番入力しない場合は、冷媒の種類を選択します。
・フロン系冷媒(貯湯槽の容量選択必要)
   —貯湯槽95リットル未満
   —貯湯槽95リットル以上
・プロパン系冷媒

「給湯と温水床暖房一体型」は、以下の表に示す8種類から選択します。なお、4・7・8の電気ヒートポンプ・ガス瞬間式併用型給湯温水暖房機は、ハイブリッド給湯機と呼ばれる機器で、給湯と暖房の熱源によって選択肢が分かれていますので注意してください。
「給湯専用機」と同様に1つの住戸内に複数の機器を設置してある場合は、上位(番号が小さい)の設備を選択します。

「給湯と温水床暖房一体型」の種類

給湯・温水暖房一体型の機種 評価方法の選択
1 電気ヒーター給湯温水暖房機
2 石油従来型給湯温水暖房機 熱効率、モード熱効率の入力
3 ガス従来型給湯温水暖房機 熱効率、エネルギー消費効率、モード熱効率の入力
4 電気ヒートポンプ・ガス瞬間式併用型給湯温水暖房機
給湯:ガス
暖房:電気ヒートポンプ・ガス併用
機器の品番の入力
品番入力しない場合は、冷媒の種類を選択します。
・フロン系冷媒(貯湯槽の容量選択必要)
   —貯湯槽95リットル未満
   —貯湯槽95リットル以上
・プロパン系冷媒
5 石油潜熱回収型給湯温水暖房機 熱効率、モード熱効率の入力
6 ガス潜熱回収型給湯温水暖房機 熱効率、エネルギー消費効率、モード熱効率の入力
7 電気ヒートポンプ・ガス瞬間式併用型給湯温水暖房機
給湯:電気ヒートポンプ・ガス瞬間式併用
暖房:ガス瞬間式
タンクユニットの設置場所を選択
・屋内設置
・屋外設置
8 電気ヒートポンプ・ガス瞬間式併用型給湯温水暖房機
給湯:電気ヒートポンプ・ガス瞬間式併用
暖房:電気ヒートポンプ・ガス瞬間式併用
タンク容量
・160リットル未満 → 区分1を選択
・160リットル以上 → 区分2を選択

給湯機の選択の次に、評価方法の設定を行います。給湯器の仕様が決まっていない場合や省エネを評価しない場合には「評価しない」を選択することもできますが、仕様が決まっている場合は、商品カタログ等に記載してある効率等を設定した方が省エネ住宅として正しい評価ができます。

<エコジョーズの場合の設定方法>

「給湯温水一体型」は、暖房部と給湯部それぞれの効率の入力が必要になります。さらに、給湯部の効率は、メーカーのカタログ等を参照して、消費効率、またはモード熱効率のいずれかを入力します。
以下の事例では、給湯部にエネルギー消費効率を入力しています。

<エコキュートの場合の設定方法>

エコキュートのJIS効率は、「年間給湯保温効率」または「年間給湯効率」のことです。商品カタログ等に2種類の効率が記載ある場合は、「JIS C 9220:2011」の値を使います。なお、現時点で「JIS C 9220:2018」の値を用いることはできません。

エコキュートで年間給湯保温効率が2種類記載してある例

エコキュートで年間給湯保温効率が2種類記載してある例

②配管方式とは

給湯器から水栓までの配管方式について、「先分岐方式」または「ヘッダー方式」より選択します。ヘッダー方式の場合、ヘッダー分岐後のすべての配管が13A以下を使用した場合に限り、省エネルギー効果を評価できます。

配管方式 配管径
先分岐方式
ヘッダー方式 ヘッダー分岐後のすべての配管径が
・13A以下
・13Aより大きい
先分岐方式

先分岐方式

ヘッダー方式

ヘッダー方式

配管方式(架橋ポリエチレン管工業会「架橋ポリエチレン管 設計・施工マニュアル」より引用)

③水栓とは

「台所水栓」・「浴室シャワー水栓」・「洗面水栓」ごとに、「2 バルブ水栓」と「2 バルブ水栓以外のその他の水栓」から選択します。「2バルブ水栓」とは、以下の写真に示すようにお湯と水のハンドルを別々に操作するものです。

「2 バルブ水栓」のイメージ図

「2 バルブ水栓」のイメージ図

「2 バルブ水栓以外のその他の水栓」は節湯機能として「手元止水機能」・「小流量吐水機能」・「水優先吐水機能」があり、これらの機能を採用すると給湯の一次エネルギー消費量を削減することが出来ます。
商品カタログには「節湯A1」・「節湯B1」・「節湯C1」と表示してあり、水栓毎に選択可能な節湯機能は以下の通りになります。

水栓 2バルブ水栓 2バルブ水栓以外のその他の水栓
手元止水機能
節湯A1
小流量吐水機能
節湯B1
水優先吐水機能
節湯C1
台所水栓
浴室シャワー水栓
洗面水栓

④ふろ機能・浴槽とは

ふろ機能の種類は、湯張りと沸かしなおしの方法によって、「給湯単機能」・「ふろ給湯器(追焚なし)」・「ふろ給湯器(追焚あり)」より選択します。

ふろ機能の種類 意味
湯張り時 沸かしなおし時
給湯単機能 水栓から湯張り 水栓から差し湯
ふろ給湯機(追焚なし) 自動湯張り 水栓から差し湯
ふろ給湯機(追焚あり) 自動湯張り 追焚(自動保温等)

また、浴室がある場合は浴槽の保温機能(高断熱浴槽)の有無を選択できます。高断熱浴槽は保温構造とした浴槽で、LIXILの「サーモバスS」が該当します。

サーモバスS

これで一次エネルギー消費量の計算に最低限必要となる「暖冷房設備」・「24時間換気設備」・「照明設備」・「給湯設備」についての説明が終了しました。早速、「LIXIL省エネ住宅シミュレーション」を使って、一次エネルギー消費量計算にチャレンジしてみましょう。

この連載コラムを読んで実践して頂ければ、「住宅の省エネ性能の説明義務化」の準備は万全!ぜひ、この連載コラムを通して、今から2021年に向けた省エネ住宅づくりの準備を始めていきましょう。

久保田 博之

コラム執筆者紹介

久保田 博之

株式会社プレスト建築研究所 代表取締役 一級建築士(構造設計一級建築士)
木造住宅の温熱環境・構造に関わる設計コンサルタントや一般社団法人 日本ツーバイフォー建築協会等の団体によるセミナー講師を歴任する住宅性能のスペシャリスト。

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https://www.biz-lixil.com/service/proptool/shoene/

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公開日:2020年06月16日