BIM(Building Information Modeling)による設計の現在

  • facebook
  • twitter
小平・村山・大和衛生組合 資源物中間処理施設 エコプラザ スリーハーモニー南側の俯瞰(写真提供:メタウォーター)

小平・村山・大和衛生組合 資源物中間処理施設 エコプラザ スリーハーモニー南側の俯瞰(写真提供:メタウォーター)

建設現場を取り巻く状況

近年の建設現場を取り巻く状況は、労働人口の減少による技術者不足に加え、熟練者が一気に退職を迎えることで次世代への技術継承がうまくできるかなど、喫緊の課題が山積している。それを補う新しい方法として、CADに代わって昨今注目を集めているのがBIM(Building Information Modeling)である。
これまでの、2次元で図面を作ってから3次元の形状を組み立て、CGでシミュレーションするのとは違い、BIMは最初から3次元で設計するため、コンピューターの仮想空間上で、実際に建物を建てる時と同じように、3Dの建材パーツを用いて組み立てていく。
各パーツが、3次元の形状、寸法、素材、性能など、さまざまなオブジェクト情報を持っているので、平面図、立面図、断面図、面積表などの設計図書を一括管理でき、3Dデータを修正すれば、平面図、立面図などすべてが連動して自動修正される。また、意匠・構造・設備設計などの干渉チェックを3次元で可視化できるので、問題を共有化しやすい。他にも、施工工程や予算の管理、3Dパースのプレゼン利用など、あらゆる面において利便性が高いことから、さらなる生産性の向上と作業の効率化が期待されている。
ここでは、早くからBIMを導入した、青木あすなろ建設の取り組みについてお話を伺いながら、BIM活用のこれからを展望する。

BIM設計のメリット――青木あすなろ建設・森竹敏朗さんに聞く

BIMを使って設計したという、「小平・村山・大和衛生組合 資源物中間処理施設 エコプラザ スリーハーモニー(以下、エコプラザ スリーハーモニー)」(2019年4月竣工)は、小平市、武蔵村山市、東大和市の3市が共同で建設した、プラスチックの再資源化を行う中間処理施設である。建築設計の一員を務めた青木あすなろ建設株式会社(以下、青木あすなろ建設)・東京建築本店設計部の森竹敏朗さんと、BIMのオペレーションを担当された尾内直美さんに、BIM導入の経緯から、使い勝手やメリットについてお話をいただいた。

青木あすなろ建設の森竹敏朗さん(左)と、BIMのオペレーションを担当した設計部の尾内直美さん(右)

青木あすなろ建設の森竹敏朗さん(左)と、BIMのオペレーションを担当した設計部の尾内直美さん(右)

関係者への説明やコミュニケーションで役に立ったBIM設計

森竹さん:

エコプラザ スリーハーモニーは、プラスチックゴミを処理し、最終的には再資源化するという施設です。施設内は、ゴミを溜めるピットという深い穴があり、ベルトコンベアが入り組んでいて、再資源化するための機械を設置するなど、複雑な機械のための建物という要素が強かった物件です。
このように複雑な施設の場合は、人の頭で考えても想定外のミスが発生しやすいので、BIMのように、3D形状に属性情報を持たせたデータで一括管理しながら設計を進める方法は、おおいにメリットがありました。
この施設は市街地に立地し、3市が共同で利用することから関係者も多く、施設の説明の機会は多くありました。施設の設置はメタウォーター株式会社(以下、メタウォーター)が再資源化設備と建築を一括して請け負っており、青木あすなろ建設はその建築部分の設計・施工をお手伝いするという仕組みで、説明のため私たちが表に立つことはなかったのですが、資料を提供しています。
その際に、なるべく正確にお伝えするのにBIMがとても役立ちました。例えば、建物とその中の機械の関係を示すとか、道路沿いに植栽と透視性の高いフェンスを設置して緑豊かな町並みをつくるとか、住宅が面する境界に防音フェンスをつくるとか、太陽光を集光するエコシステムを配置するなど、さまざまな工夫について説明するとき、絵としてきれいに見せることも大事ですが、仕組みをお伝えするにはBIMによる正確な資料が効果的でわかりやすいと思いました。また、BIMモデルをクラウドにアップロードすると、インターネットネットでどこからでもブラウザで見ることができるので、関係者の要望や調整をモデル化して共有し、お互いの理解を深めることができました。コミュニケーションの手段としても便利なものだと思います。
本案件では、メタウォーターにBIMによる設計の機会と、再資源化設備の3Dモデルの提供をいただき感謝しています。

尾内さん:

今回この現場では、LIXILの門扉、フェンスが採用されましたが、ポイントとしては、部材のBIMデータがあったことにプラスして、設計者をサポートしてくれる機能が付いていることでした。例えば、ぱっと見て平らに見える敷地も、計測すると20~30㎝高低差があったりします。ではどうやって地盤に合わせてフェンスを設置するか、私達も悩むわけですね。そういうところを、LIXILのBIMデータに付属しているAPIの設計支援プログラムがサポートしてくれました。うちではまだ使っていませんが、駐輪場など、収容台数や敷地形状に合わせて平面的にレイアウトしてくれる機能を持ったBIMデータも提供されていますね。“設計のサポート”機能があるというところが特徴だと思います。
LIXILの外構商品のように、多くのメーカーでいろんな部材のBIMデータを作っていただくことによって、BIMがより普及し、使いやすくなると思います。

エコプラザ スリーハーモニー北側俯瞰(写真提供:メタウォーター)

エコプラザ スリーハーモニー北側俯瞰(写真提供:メタウォーター)

エコプラザ スリーハーモニーの正面外観イメージパース(提供:青木あすなろ建設)

エコプラザ スリーハーモニーの正面外観イメージパース
(提供:青木あすなろ建設)

エコプラザ スリーハーモニーの実際の正面外観(写真:シヲバラタク)

エコプラザ スリーハーモニーの実際の正面外観
(写真:シヲバラタク)

エコプラザ スリーハーモニーのBIMによる外観パース。敷地を囲むフェンスにもBIMデータを活用

エコプラザ スリーハーモニーのBIMによる外観パース。敷地を囲むフェンスにもBIMデータを活用

インターネット上でブラウザをビューアとして共有(2点とも提供:青木あすなろ建設)

インターネット上でブラウザをビューアとして共有(2点とも提供:青木あすなろ建設)

BIMの導入の経緯

森竹さん:

弊社は3D化には古くから取り組んでいましたが、BIMを導入したのは2010年です。きっかけは、ソフトベンダーがBIMソフトを提供するキャンペーンを行っていたんですね。BIMの特徴は、3D部材を入力していくとそのまま図面になっていくことと、部材情報(プロパティ)がデータベースで管理されていることです。まずは使ってみようということで導入しました。
しかし、通常の業務を抱えながら新しいソフトのスキルを身につけるのは非常に難しく、修行僧のような心持ちで取り組まないといけませんでした。今の日本の建築生産システムの流れの中では、まだ3次元やデータベースが組み入れられていません。2次元の図面で検討して承認を取り、それに基づいて制作を進めるという一連の流れがあり、さまざまな2次元詳細図データ等のストックも充実して、熟練した技術者も多いので、そのプロセスに沿って品質が管理され時間も配分されます。BIMはそのプロセスに影響を与えるので時間配分も異なり、関係者にストレスを感じさせる場面もあります。今でもBIMはそう簡単に広がるものではないですね。
どこの企業も同じだと思いますが、現在30~40歳の就職氷河期といわれた世代の人材が足りません。最近になり若い人を多く採用しているのですが、中間世代の欠如で、技術の継承がうまくいくのかどうか、いろいろなことが心配されています。そうした中で、BIMのような技術を使うことで、建設コストを抑えながら生産性を向上させ、かつ技術の継承を助けるというのですから当然期待は高まりますし、最近になって国もこの分野へ力を入れ始めた感じです。しかし中間世代は実務にとても忙しいので、BIM習得の負担をかけることはためらわれます。まず若い人たちにBIMを習得してもらい、徐々に中堅の人たちに普及させていこうと思っています。

CADとBIMの違い

森竹さん:

CADとBIMでは、使っていて明らかに脳の疲れ方が違います。左脳と右脳の使う部分のバランスがぜんぜん違っている感じですね。
設計で2次元の場合、通常、壁は厚みがあるので2本の線を引き、そこに扉があれば、その形を多くの線で描きます。つまり図面化のために頭を使う。ところがBIMだと、2クリックで壁ができてしまう。そこに1クリックで扉のデータをはめればいい。確認するときも、すぐに3次元で見られますから、この空間はきれいに設えられそうだとか、使いにくいなあとか、空間の品質に頭を使う。改良点も見つけやすく、大変便利です。

尾内さん:

便利な半面、詳細図面や数量などを求めるなどBIMモデルとしての要求水準が高いときは、かなりつくり込んでいないといけません。例えばパイプシャフトがある場合、2次元図面では慣習化された簡単な表現で済むのですが、3次元の場合、その中もちゃんとつくっておかないといけない。また、通常のパースですと、見えるところだけモデル化して材料を貼っておけばいいのですが、裏側の見えないところまで全部つくり込んでおかないと、すべて見られてしまう。その入力の手間が膨大なんです。そこをどう効率化するかが最大の課題ですね。

オペレーターの尾内さん

「BIMでは窓などの部品が揃っているので、一から作る必要がなく、パーツを配置するだけでいいので、便利でした」と語るオペレーターの尾内さん

BIMにコスト情報を盛り込む難しさ

森竹さん:

多くの人がBIMに期待をしているのはコスト管理です。数量が拾えるということ。例えば、壁の面積があって、クロスなど材料の単価があれば、試算ができるじゃないかと。そうすると設計へのコストの影響度が増し、最初から仕上げ材を細かく選定してデータを持たせないといけないので、仕事の優劣・順番にも影響を与えます。
以前、海外の仕事をすることがありまして、「コンストラクションマネジメント(CM)」という職域を体験しました。日本でいう「ゼネラルマネジメント(総合請負)」では、マネジメントの傘下に工事会社がはいりますが、私がポルトガルで体験したCMでは、建て主が工事会社と直接工事契約をし、別に並列で建設マネジメント契約をする。建設工事の契約形態によって、建設費の価格の捉え方が変わることを体験しました。
国内の例でも、LIXILなどのメーカーと工事会社の間には取引が出てきます。現実には、メーカーの希望小売価格(建値)と、現場の取引価格に乖離が生じるわけですね。それは、工事会社が搾取しているわけではなく、仮設や安全施設をつくったり、工事をやるための計画や管理をしたり、工事時には確実に発生する費用ですが、計画段階では正確には見込みにくい費用を弾力的に扱えるようにする知恵なのでしょう。
公共工事や民間工事の観点でもそれぞれ独特の価格の見方があります。
またBIMで出てくる数量には癖があり、積算基準との整合を求めるなら、そこにも課題を感じることでしょう。
仕事の流れや相場によってもコストのとらえ方が違ってくるわけですから複雑です。BIM情報の中に価格を入れるならば、場面に応じて誤解を生じないように利用しないといけないですね。

設計におけるBIMの今後について

森竹さん:

今後BIMに期待することのひとつとしては、3次元で精度にこだわるとデータが重くなって扱いにくいだけでなく、図面も分かりにくくなるので、意図的に伝えたいところをある程度抽象化してわかりやすく表現する手法が増えるといいですよね。図面だけでなくVR・AR・MRでの表現、WEBでの共有、ICTの活用、AI、デジタルツインなど、今後BIMと結びついていく技術にも期待しています。
それと、建築のファシリティマネジメントの観点では、設備が何年経ったらどういうメンテナンスが必要かという情報と、運用されているリアルタイムな設備状況の情報をメーカーと利用者が共有していくことで、建物の長寿命化を図ることができると思います。ここでもデータベースの性質をもつBIMが役立つでしょうね。
自動車業界では、所有からシェアへという流れがあると聞きます。自分が「所有」してメンテナンスする形から、高度技術を維持管理できる専門業者に所有させ責任を持ってもらい、それを「利用する」ことに価値観が移行している。ひとつの社会現象ですね。建物においても、そのような考え方は進むかもしれません。
最後に、BIMは大変便利ですが、全部正確に入力することを設計者に求められると、そこに労力を奪われ、肝心な設計の内容を詰めることがおろそかになってしまう。また、入力作業をだれかに押し付けてしまうと、部材の入力を間違えた場合の責任はだれが取るのか、という責任問題も出てきますね。賢く使えば皆が便利に利用できるものなので、だれかが悪者になるのは避けたいところです。多くの専門分野の知見と改善の努力が活かされるようBIM化の作業が分配され、うまく統合されていく仕組みに発展するよう願っています。データベースを基盤とするBIMには、業務の分散化と統合、そして共有利用ができます。データベースにのせる質の高いデータを守るのは、製品化から運用まで製品の生涯を見つめるメーカーさんですので、その力に期待しています。
ぜひともBIMは、社会の生活の質を上げるツールとして成長して欲しいですね。

森竹さん

「意匠を考えるのに便利なBIMや、構造に強いBIMなどいろいろあり、どれがスタンダードになっていくのか悩ましいところ」と語る森竹さん

LIXILのBIMの取り組み

日本におけるBIM元年は2009年と言われているが、その歩みは遅々として進まず、BIMによる設計が動き始めたのは、10年が過ぎたここ最近のことである。
建材・設備機器メーカーのLIXILも、このBIMに対応した新たな技術支援を展開している。AUTODESK REVITやGRAPHISOFT ARCHICADにそれぞれ対応した「設計支援プログラム API(Application Programming Interface)」を、LIXILのエクステリア事業部が設計者の視点に立ち、“設計者ファースト”をコンセプトに独自開発を行った。例えば、ある形状の敷地に駐輪場を作る場合、敷地形状や駐輪台数を入力すれば、適正な駐輪場の配置を計画してくれる。また、外構フェンスでは、オブジェクトを一つひとつ並べるのではなく、土地の起伏の変化点をクリックするだけで傾斜を計測し、フェンスを自動で割付してくれるのである。LIXILが提供する商品データは、2019年3月末現在で、エクステリアだけでもREVITとARCHICADでそれぞれ190商品群にのぼる。
またLIXILでは、2017年から“BIM Café”と銘打ち、お客様のもとへ出向いて、設計者やオペレーターを交えてBIMについて語り合う場を設けている。カーテンウォール、サッシ、衛生設備機器、エクステリアにおけるBIMの取り組みを紹介し、希望があればAPIを無償提供している。

LIXILのエクステリア事業部BIM担当者は、最近のBIM事情を次のように語る。
「昨年は、大手設計事務所様やゼネコン様をはじめ、多くのお客様に設計支援プログラムを提供させていただきましたが、2019年に入ると、上半期ですでに昨年の件数を上回りました。設計の現場では、去年とは全く違う勢いでBIMが浸透して行っているのが分かります。今年に入ってからは、毎日どこかに出向いて“BIM Café”を行っている状況です。当初の“BIM Café”では、コーヒーをポットで持参して、お菓子付きでリラックスした雰囲気でやっていましたが、最近はエクステリアだけの“BIM Café Exterior”などのように、1時間程度のショートカット版で行うことが多くなっています。お客様の社内においてもBIMによる設計を進めたい意向が強まってきているようで、建材メーカーが出向いて説明することは、おおいに歓迎されます」。

2017年からLIXILが取り組んでいる“BIM Café”2017年からLIXILが取り組んでいる“BIM Café”

BIM普及への期待

LIXILでは2011年頃から、ビルサッシやカーテンウォールについて、それぞれの現場ごとに求められる商品のBIMデータを作り、設計事務所やゼネコンに提供するという個別対応をしてきた。建物の構造にからむ部材は、早くから対応が求められたこともある。
衛生設備機器類では2016年4月にREVIT対応のBIMデータを、また、同年10月にはARCHICAD対応のBIMデータをLIXILのホームページ上で一般公開している。衛生設備機器に関しては、配管等の設備設計専門のCADとしてRebroやTfasがあるので、それに対応したデータも提供。続く2018年4月に、ARCHICADに対応した規格品の単窓データを一般公開している。
非住宅エクステリアでは、それより先の2015年よりARCHICAD対応のBIMデータを、また2017年7月にはREVIT対応のBIMデータを一般公開している。ちなみにエクステリアでBIMデータを提供しているのは今のところLIXILだけという。
BIM担当者は今後の抱負を次のように語った。
「設計者にとってどうすれば使いやすくなるかを考えて、BIMデータの改良を重ねています。建物同様にエクステリアもBIMで設計したほうが全体としての統一感があり、見栄えもよくなります。また、ARCHICAD の場合だとBIMx(ビムエックス)を使えば、俯瞰から通路シェルターの下に移動して、屋根が歩行者からどのように見えるかなど、VRのウォークスルーのように自在に体感できます。お施主様に説明する時も、一目瞭然です。エクステリアのBIMの場合は、APIという設計支援プログラムがあることで、設計者のやりたいことがより簡単にできるのではないでしょうか。
今回、小平・村山・大和衛生組合 資源物中間処理施設 エコプラザ スリーハーモニー(以下、エコプラザ スリーハーモニー)は、ゴミ処理施設ということもあり、近隣への配慮は欠かせません。防音フェンスがどのように設置されているか、車の出入りスペースはどうなっているかなどの状況が、BIMではより伝わりやすいと思います。LIXILが外構商品のBIMデータを持っていたことで、この現場でご採用いただくことができました。巷では、BIM案件は決定率(受注率)が高い、と言われています。可視化されて分かりやすいことでお施主さまの納得感が格段に違い、そのことで受注につながるということだと思います。多くの可能性をもったBIMを、私たちもメーカーとして積極的に取り組んでいきたいと思っています」。今後のBIMの動向を、設計者は注視していく必要がありそうだ。

LIXILのBIMデータが生かされたエコプラザ スリーハーモニーの防音フェンス設置現場

LIXILのBIMデータが生かされたエコプラザ
スリーハーモニーの防音フェンス設置現場

LIXIL製品を採用いただいたエコプラザ スリーハーモニーの入口引き戸(写真2点とも:シヲバラタク

LIXIL製品を採用いただいたエコプラザ
スリーハーモニーの入口引き戸(2点とも写真:シヲバラタク)

公開日:2019年08月28日

  • facebook
  • twitter