高崎市児童相談所×LIXIL

建築を外構の設計からはじめる

小鮒朋也、細谷奈央(石井設計グループ)

設計するうえで欠かせない建材のBIMデータ

小鮒氏:

3Dで図面を起こす際は、サイズ感を与えて形にしていき、どのような見え方になるか確認しながら調整して、発注者様の前で即興的につくるケースもあります。決められた敷地面積、容積から周辺環境を考慮して建物をイメージしていく。そういったつくり方をする設計者はあまりいないのかもしれませんが、そうすることで発注者様から要望を聞き出せて、それに沿って高さや色味、新しい設えを提案しながら図面を修正していけます。私の場合、現地で打ち合わせしながらつくってしまうこともあります。
以前から3Dはありましたが、そのまま図面にならないので、BIMによって一気に図面に変換できるというのは、大きな違いだと思います。LIXILさんのBIMデータも図面化するときに、3Dモデルが、そのままいろいろな情報を可視化できるような変換の性能があるといいですね、製品を選択すると詳細や平面、正面図などがBIMデータから拾い上げられて、図面にコピペができる。そういう機能があると、ダウンロードするために毎回行ったり来たりという手間がなくなりますから。BIMデータモデルの中に全て入っているという状態はあったらいいと思う機能のひとつです。

細谷氏:

高崎市児童相談所の外構では特注サイズを採用したこともあって、既製品の範囲内という制限なく、設計に合わせてカスタマイズできるとさらに使いやすいと感じました。

小鮒氏:

建物、外構問わず設計するうえで情報をBIMに書き込まないといけない。トイレなどの建材にしても、2次元を貼り付けても図面上は描いてあるけれど、3Dを見たときに歯抜けになってしまうという状況は避けたいところです。現状、既製品のBIMデータがないと、BIMで設計することが複雑になってきます。設計者からするとオリジナルからつくるという行為を少し置き去りにしやすい時代でもあり、良し悪しですが、既製品を設計に組み込めるのがBIMの特徴のひとつでもあるので、建材メーカーはどれだけ情報化された自社製品のBIMデータを持っているか、その点がより強みになってくると思います。

高崎市児童相談所 鳥瞰

外構の設えで人々をいざなう

小鮒氏:

極端な話、現代の人たちは建物そのものを意外と見ていません。むしろ用途とそこまでのアクセスが重要で、そこに関わってくるのが外構だと感じています。“外の構え”と書く通り、魅力のある外構:ランドスケープがあれば、その上にどのような建物でも関係ない。私たちは空を見上げるように建物を見て歩きませんよね。足元がどう出来上がっているかで、人がそこへ行くか行かないかが分かれる。
図面やパースをつくる上でも、今は建物だけではなくて“外構ありき”で、そういうものをつくっていかないといけない。まして、前橋や高崎のような地方こそ、まちの魅力をつくるには緑があってこそだと思います。やはり人が集まる場所というのは緑地ですよね。そういったことからも今後、外構から設計に入っていくスタイルは増えてくると思います。
“公園のような建築”とか、いろいろな言い方はありますが、人が集まりたくなるような場所をつくるというのは、用途を越えて建築の未来というか、何かその先にあるのかもしれない。時代を象徴するような尖がった建物をつくるというよりは、外から攻めていくようになってきていると思います。多くの人にとって、緑豊かな外構は印象に残っているけれど、施設の建物はどうなっていたか大抵は思い浮かばない。そういった建築がある意味で正しくて、いい建築なのかもしれないと思いはじめています。

取材・文/フォンテルノ 撮影/シヲバラタク パース図提供/石井アーキテクトパートナーズ

【石井設計グループサイト】
http://www.ishii-g.jp

【LIXIL BIMデータサイト】
https://www.biz-lixil.com/prod_data/bim_rev/

このコラムの関連キーワード

公開日:2024年01月29日