断熱リノベの匠 第8回

中古リノベを「高性能×デザイン」で100年住宅に

三浦 恭輔(取締役/有限会社 ミウラ)

「断熱リノベの匠(たくみ)」は、工務店・ビルダーさまによる断熱リノベーションの新たな挑戦、注目すべき取り組みの事例を連載でご紹介していきます。

今回ご紹介するのは、内装業からはじまり50年以上にわたり住宅・ホテル・官公庁舎など様々な建築に携わってきた技術とノウハウを受け継ぐ若き匠、三浦恭輔氏。50年先までお客様の住まいを守るという志を持って、建築デザイナーの経験を活かし「美しい空間」「住みよい性能」「安心なライフプラン」を提案すべく、新築・リノベの二刀流で、愛する地元のために奮闘中です。

有限会社 ミウラ 取締役部長 三浦 恭輔 氏

有限会社 ミウラ 取締役部長 三浦 恭輔 氏

「ユネスコ世界ジオパーク」に認定されている自然豊かな島原半島の長崎県諫早市で、昭和47年に内装業からスタートした「ミウラホーム」。三浦 恭輔 氏は、東京の建築設計事務所で経験を積んだあと2年前に故郷に戻り、現在は社長である父を支えながら新たな取り組みを行っておられます。

そんな匠の挑戦のひとつが高付加価値なリノベ提案です。50年以上にわたる内装業の技術・デザイン力と新築高性能住宅のノウハウをもとに、従来のリノベーションを超える高性能×デザインのリノベを体現すべく、“100年経っても価値が落ちない家”を目指して、築50年の家をフルリノベーションしたモデルハウスをつくられました。

リノベーションでどこまでできるのかイメージしづらいお客様にわかりやすく提案するには、実際のリノベ住宅を見て、泊まってもらうのが一番との想いから、創業者であるおばあ様が所有する家をリノベしてモデルハウスにされたそうですが、実際に古い家を解体してみると、思ってもみなかった問題点に直面するなど、完成までの道のりは平坦ではなかったようです。

築50年の住宅を “100年経っても価値が落ちない家” を目指して再生

三浦氏が今回のリノベにあたり心掛けたとおっしゃるのは「できるだけ現状に逆らわない」ということ。その家の個性、オンリーワンの空間に魅力を感じると語る匠は、例えばリビングとダイニングを間仕切る4本の柱についても、(下記ダイニング写真の)右2本が古材、左の2本は新材を使用されたそうです。 構造上必要な柱を残しながら仕上げ材をプラスすることで、空間に開放感をもたらす意匠として昇華させています。

また、“100年経っても価値が落ちない家”を目指す内装として、主な壁はビニルクロスではなく自然由来の漆喰壁を使用されたとのこと。すぐれた耐久性や調湿・防臭・吸音効果といった特徴を活かし、健康・快適な空間がずっと続くように気を配ったそうです。そのほかにも、家事をラクにする動線や古いものと新しいものが響き合うこだわりのデザイン、質が高く洗練された水まわり設備などにより、今の暮らしにフィットする、時代を超えたタイムレスな魅力を持った住まいを実現しておられます。

生活者の目線で見ても、更地を取得して新築を考えるより、中古物件付きの土地を探して、住宅性能と内装・設備にお金をかけるほうが賢い選択と思えるレベルになっているように感じます。それを裏づけるように、ミウラホームへ相談に訪れるお客様のおよそ3分の1が中古住宅のリノベを検討されているそうで、このモデルハウスは、そんな一次取得の若いご家族にとって、マイホームのイメージを膨らませる良い見本になると感じます。

その一方で、古い物件は解体してみないとわからないことが多く、ビルダーとしては苦労が多いようです。今回は慣れないフルリノベということもありますが、柱と土台の勝ち負けが逆だったなど驚くことが色々あったそうで、大工仕事に5ヶ月も費やしたのだとのこと。しかし、三浦氏はそうしたリスクはあるものの、これからの住宅市場を見据えると取り組む価値は大きいと考えておられます。

耐震等級3相当の耐震性は確保しながらも、間仕切りの少ない開放的なリビングダイニングにリニューアル。この家を50年間支えてきた柱は、ダイニング空間や階段まわりのアクセントとして活かされている。写真の左に見える柱の、右2本は古材、左2本は新材を使用。

室内装飾は漆喰壁をベースに、アクセントウォールなどを取り入れた上質なしつらいに。フロア材には質感もよく耐久性にすぐれた無垢材を採用。内装のプロらしい、ひとクラス上のコーディネートは、唯一無二のセンスを感じる。LIXIL主催デザインコンテスト2024で、九州2位を受賞。

グリーンのアクセントクロスが印象的な主寝室。ゆとりのスペースを活かして、寝室内には書斎スペースとウォークインクローゼットが備えられている。

リモートワークにも趣味の部屋としても使い勝手が良さそうな書斎スペース。新しいものと古いものが響き合うデザインへのこだわりが小さなスペースにも感じられる。

レインシャワー付きのバスルームやモザイクタイルがお洒落な洗面室など、水まわりは洗練されたデザインで統一されている。

エントランスにも、デザインや素材へのこだわりの深さが感じられる。

築50年の住宅を「まるごと断熱リフォーム」で、HEAT20 G2を超える性能に(SW工法リフォーム)

今回、初めて本格的な断熱リノベに取り組んだ三浦氏が「まるごと断熱リフォーム」の魅力として感じたのが、外張り断熱への対応が可能だった事なのだとか。匠にとっては熱橋がなく結露の心配が少ないのが重要なポイントで、外張り断熱によって高いUA値を実現できたことも満足だったようです。逆に反省点としては気密と床下換気だそうで、リノベで気密性を高める難しさを痛感し、今後の課題にしたいと振り返っておられました。

そして最後に、新たな一歩を踏み出した今の心境をお訊ねしました。「新築のコストがどんどん高くなり、地方都市の地価にも格差が生まれる中で、土地が高くても好きな街に住みたい、空き家を再利用したいなど、地元のお客様の声に既存住宅のリノベで積極的に応えていきたい」と熱く語る三浦氏。そんな若き匠の挑戦は始まったばかり。今後の活躍に注目したいと思います。

Before

After

リノベ前の室内。玄関ホールにあった階段はリビング階段に変更。居間から離れた場所にあったダイニングキッチンも開放感あるLDK空間へ。2階の二間続きの和室は広い空間を活かして書斎やウォークインクローゼットを備えた充実の主寝室に一新。

1F

2F

Before 平面図

1階はDKと居間が分離された昔ながらのプラン。2階は全室和室、田の字の間取り構成。

1F

2F

After 平面図

1階はリビングとダイニングキッチンをひとつの空間にリニューアル。2階も書斎コーナーやウォークインクローゼットを備えた主寝室をはじめ、今のライフスタイルに合った洋室で構成。

まるごと断熱リフォーム(SW工法リフォーム)のイメージCG

まるごと断熱リフォーム(SW工法リフォーム)のイメージCG
断熱リノベによる既存住宅の高性能化によって、外の温度の影響を受けにくく、家の中の快適な温度を逃しにくくなるため、冬は暖かく夏は涼しく過ごせる暮らしを実現。

Reform Data

延床面積: 38.6坪/木造2階建/築年数:およそ50年/エリア:長崎県雲仙市愛野町
断熱リフォームによる性能改善:省エネ区分 6地域 / 改修後UA値:0.39 W/㎡K C値:1.1㎠/㎡

躯体・基礎ともに十分な耐震改修を行い、築50年の住宅を耐震等級3相当に。

フルスケルトンでありながら、高性能を追求し、熱橋のない外張り断熱を選択。

LIXILまるごと断熱リフォームによって、断熱性能はHEAT20 G2グレードを超える水準のUA値0.39W/㎡Kに大きく改善。

ビルダー紹介

社名 有限会社 ミウラ
所在地 長崎県諫早市森山町杉谷108-1
設立 1972年
URL https://www.miura-home.com

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公開日:2025年09月08日