断熱リノベの匠 第10回

地域とともにリノベで拓く、新たな一歩

吉田 健二 (代表取締役/吉田建設 株式会社)

「断熱リノベの匠(たくみ)」は、工務店・ビルダーさまによる断熱リノベーションの新たな挑戦、注目すべき取り組みの事例を連載でご紹介していきます。

今回ご紹介するのは、75年前に大工工事業として創業し、個人住宅、宅地開発、公共事業、ビル建築など幅広く事業を拡大しながら、地域とともに歩んできた吉田建設。一貫して変わらない先代の姿勢を引き継ぎ、自社大工による家づくりに情熱を注ぐ匠が吉田健二氏です。新築住宅が減り、空き家が増え続ける地域の未来にビルダーして何ができるのか。その新たな一歩として「性能向上リノベーション」事業をスタートされました。

吉田建設 株式会社 代表取締役 吉田 健二 氏

瀬戸内海に面し、豊かな自然に囲まれた香川県高松市で、昭和26年に創業した吉田建設。吉田 健二 氏は、先代の志を引き継いで自社大工にこだわり、多くの職人を育成し、地域の住宅建築に長年にわたり貢献してこられました。
そんな吉田建設は、スーパーウォールによる新築住宅の高性能化には早くから取り組んできたものの、リノベーションにはあまり積極的ではなかったとのこと。
しかし、新築住宅が減り、古くなった住宅が空き家として増え続ける中で、既存住宅の断熱問題をなんとかしなければという想いと、築20〜30年を迎えるお客様がライフステージの変化に伴いリフォームを行なっても断熱不足による寒さやヒートショックのリスクは我慢するしかないという現状を解決するために、今後の事業として性能向上リノベーションが不可欠だという結論に達したのだと吉田氏は語ります。
この決断から、耐震性はしっかりしていても断熱性が低い既存住宅がリフォーム時期を迎える、今後の市場に商機を見出すとともに、これまで培ってきた断熱・気密の技術を活かして、リノベで地域の住環境の未来を支えようとする志が感じられます。

半世紀前に自社が手がけた住宅をリノベーションのBefore・Afterをリアル体験できるモデルハウスとして再生した「Resumu Lab.」(リスム ラボ)。再び住む新しく住み替えるの意味の「Re:住む」に、暮らしの実体験や研究施設( laboratory )の略語である「Lab. 」を合わせて命名。

リノベの魅力を体感してもらうための、モデルハウスの姿

性能向上リノベーションを新たな事業と位置付けた吉田氏が、まず着手したのは、事業再構築補助金を活用したモデルハウスの計画。縁あって自社が50年ほど前に手がけた民家を買い取ってリノベを行なったとのことですが、ビフォーアフターの暮らし心地の違いを実感してもらうために、あえて一部屋だけ昔のままの状態を残したそうです。
壁や窓も変えていないため冬は驚くほど寒く夏は暑いのだそう。部屋の匂いまで懐かしさを感じるほど、そのままだということです。
そうすることで、お客様に圧倒的な快適性の違いを肌で感じてもらうことができ、それだけではなく、建物の内外12箇所に温湿度計を設置してデータをとり、温度や不快指数、エアコンの電気代をグラフで表示。サーモカメラも導入するなど、見える化の工夫を行なっているそうです。
もちろん、断熱性能の体感だけではなく、間取りやインテリアについても、暮らしやすさのポイントとして回遊動線を取り入れるなど、吉田建設のテイストを活かした空間提案を行なっておられます。
そして何より特筆すべきは、匠のアイデアと行動力による、地域の子どもたちを対象としたイベントの開催。それは先述の昔のままの部屋を利用した「むかしの家とこれからの家、何が違うの?体験ツアー」と題した夏休み自由研究向けの企画だそう。
未来を担う子どもたちに、脱炭素社会に向けた住宅の取り組みをモデルハウスで体験してもらい自由研究にまとめてもらおうという趣旨で、市のゼロカーボン推進課に企画を持ち込んだところ協力してもらえることになり、各小学校に募集チラシを配布してくれたそうです。その結果、30名の小学生とその親御さんたちが参加され、しかもイベント後に子どもたちのレポートコンテストまで実施したのだとか。こうした取り組みは、親御さんの学びにもなり、口コミによる波及効果につながっていくことが期待でき、地域に貢献するビルダーとしての理想的な姿ではないかと感じます。

モデルハウスは、性能向上の体感はもちろんのこと、暮らしの空間としての素材・色調・ディテールにこだわった上質なしつらえ。大きな窓を介してLDKと中間領域の土間、外の眺望や庭など中と外がつながり、和と北欧が融合した「ジャパンディスタイル」のインテリアに。それら要素の組み合せによって、心の豊かさを感じられる住まいを提案している。

「むかしの家」として、リノベ前のそのままの状態で残した2階の和室。50年ほど前の建物なので、壁は土壁、窓も一枚ガラス。断熱性の違いを実際に体感でき、家の歴史を情緒的に感じられる場所でもある。

写真左:「むかしの家とこれからの家 何が違うの? 体験ツアー」の実際の様子。イベント後、自分の住んでいる家とおじいちゃんおばあちゃんの家を比較してレポートしてくれたお子さんもいたという。
写真右:小学校で配布されたイベントチラシ。後援:高松市と記されているので、親御さんも安心して参加できる。

半世紀前の住宅を「まるごと断熱リフォーム」で、HEAT20 G2を超える性能に(SW工法リフォーム)

モデルハウスが完成して一年半が経ち、リノベの相談件数も狙い通り多くなるなど順調な滑り出しを見せている新事業。しかし、課題はあると語る吉田氏。
それは、新築とは異なり一邸一邸の状態に合わせた臨機応変な負荷のかかる対応が必要になることのようです。しかし、一方で将来的に新築とリノベの受注が半々になってもいいと匠は考えておられるそうです。それはなぜなのでしょうか?
ハウスメーカーは新築を勧め、リノベ対応は自社で建てたお客様のみのことが多く、リフォーム専門会社は断熱・気密の技術があまりない。しかし自分たちは、建て替えとリノベを検討しているお客様に、適正な見立てをして両方の提案ができる。そして技術がある。つまり、それが強みとなり差別化になるとの考えからのようです。
需要があり価値が認められれば、見合った価格にすることも可能に。だからホームページでもリフォームではなく、性能向上リノベーションと打ち出したそうです。
そこには匠の意気込みと自負、勝算が感じられます。これからの地域ビルダーの道をリノベで切り拓く挑戦は始まったばかりです。今後のさらなる成長に期待したいと思います

Before

After

Before 平面図

築50年の2階建住宅。前所有者が約10年間居住し、その後賃貸の借家として40年近く活用。

After 平面図

建物形状はそのまま活かし間取りを一新。2階には体感ルーム、説明展示室が用意されている。

まるごと断熱リフォーム(SW工法リフォーム)のイメージCG

断熱リノベによる既存住宅の高性能化によって、外の温度の影響を受けにくく、家の中の快適な温度を逃しにくくなるため、冬は暖かく夏は涼しく過ごせる暮らしを実現。

Reform Data

延床面積:32.37坪/木造2階建/築年数:1977年に竣工・築49年/エリア:香川県高松市牟礼町
断熱リフォームによる性能改善:省エネ区分 6地域
改修前UA値:3.89 W/㎡K/改修後UA値:0.36 W/㎡K/C値:1.01㎠/㎡

50年経った住宅のため、水まわりの土台や柱が腐っていたそうだが、古い住宅を解体して簡単に産業廃棄物にしないとの想いから丁寧に改修工事が行われました。

LIXILまるごと断熱リフォームによって、断熱性能はHEAT20 G2グレードを超える水準のUA値0.36 W/㎡Kに大きく改善。

ビルダー紹介

社名 吉田建設 株式会社
所在地 香川県高松市牟礼町牟礼2109-3
創業 1951年
URL https://yoshidakensetu.com

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公開日:2026年03月19日