断熱リノベの匠 第9回

高性能なZEHリノベで、理想の家に

久保田 翔(専務取締役/有限会社 久保田工務店)

「断熱リノベの匠(たくみ)」は、工務店・ビルダーさまによる断熱リノベーションの新たな挑戦、注目すべき取り組みの事例を連載でご紹介していきます。

今回ご紹介するのは、創業76年を迎える工務店の三代目として、自社大工の伝統を守り続ける匠、久保田 翔氏。父である現社長がはじめた高性能住宅への取り組みを、ゼネコンでの勤務経験を活かして、自社の標準仕様へと進化させ、現在は新築・リノベともに高性能住宅二刀流へと、さらなる進化を目指しておられます。

有限会社 久保田工務店 専務取締役 久保田 翔 氏

海・山・温泉と、豊かな自然がひろがる長崎県雲仙市で、昭和24年に創業した「久保田工務店」。大工の集団としてスタートし、今もなお自社大工にこだわり、その熟練の家づくりはお施主様からの信頼も厚く、地元で愛されている工務店です。久保田 翔 氏は、父である社長とともに、真心を込めた住まいづくりを心がけておられます。

さらに、早くから性能住宅に取り組み、地域の人たちが住宅の性能に目を向けていなかった20年前から、スーパーウォールによる新築住宅を提案し、BELS工務店としても着実に実績を積み上げてこられました。また、ZEH化にも意欲的で、5年前からはZEH率100%を目指して、実績値も公表されています。

その一方で、リフォームやリノベーションも数多く手掛けてこられたものの性能向上については限定的だったそうですが、まるごと断熱リフォームの誕生をきっかけに、自宅の断熱リノベを決断されました。

実は匠は、中学生の頃から父が建てたスーパーウォール住宅に暮らしていたそうですが、その後実家を出て、同じく父が建てた築20年になる在来工法の家で暮らしはじめたところ、あまりの快適性の違いから、建て替えを検討されていたとのことです。

※「BELS工務店」とは、建築物省エネルギー性能表示制度の普及活動に協力し、自社で建設する住宅でBELS評価を取得する目標を掲げ、実践している工務店のことを指します。BELSは建物の省エネ性能を第三者評価機関が評価・認定する制度であり、星マークで性能を5段階表示するため、消費者にも分かりやすく信頼性が高いのが特徴です。

久保田氏が育った実家である築20年のスーパーウォール住宅。左奥には、今回リノベした平屋の自宅が見えています。

築20年の平屋の家を、今の暮らしに合わせて、性能も間取りも一新

しかし、基礎も屋根瓦もキレイ、柱もシロアリの被害がなく使える状況だったため、建て替えるのはもったいないという想いと、断熱リノベ住宅の価値をさらに高めたいとの想いで新築同様にZEH化も行い、築20年の平屋をフルリノベーションされました。さて、その結果はいかに…。久保田氏の奥様とともに今の暮らし心地について語っていただきました。

「九州であっても冬は寒く、外気温が2・3℃の日もあって、朝などは室内温度が外とあまり変わらなく、家族みんな寒い思いをしていました。それが今では冬でも朝から暖かく、リノベでも実家(20年前のスーパーウォール住宅)より快適性が進化していると実感しています。寝る時もこれまでの羽毛布団ではなく、一年中薄い布団で十分です。それからゴキブリが出なくなりました。気密性の高さが虫を寄せつけないのだと思います」

「平屋の暮らしは理想でしたが、リノベ前の間取りはキッチンとダイニングが廊下を挟んで別々で、とっても不便でした。そこで増築も含めて今の暮らしに合うように間取りを一新。キッチンの場所も変えて、使い勝手の良い開放的なL D Kを叶えることができました」

このように、まるごと断熱リフォームによる性能改善に手応えを感じた匠ですが、今後お客様におすすめし、その先にこんな希望を抱いているそうです。

スーパーウォールで新築の家を建てたお客様からは、快適性に対する驚きの声をいただくことが多いものの、従来のリノベのお客様からはそのような声を聞いたことがない。でもまるごと断熱リフォームなら、暮らし心地の違いに驚いていただけるはずだと…。また、熟年層のお客様が暮らしの変化に合わせてリフォームする際に性能アップすることで、ご自身の暮らしの質向上はもちろん、二世帯住宅や将来的に住み継げる価値向上につながると期待しておられます。

説明を受けないと築20年のリノベーション住宅とは気づかないほど見事にリニューアルされた平屋住宅。リノベの参考モデルとしてだけではなく、新築を予定されているお客様も案内されている。

これまではキッチンとダイニングが別々の部屋で使いにくかったが、今回のリノベで暮らしが一変。

狭かった洗面・脱衣室も広々とした空間となり、洗濯などの家事も快適に。

太陽光発電の製品代が実質0円で設置できる、LTSP社の「建て得」を採用。BEI値は0.27で建築物省エネ法の省エネ基準を大幅にクリアした高い値で達成している。(創エネ含む)

築20年の住宅を「まるごと断熱リフォーム」で、HEAT20 G2を超える性能に (SW工法リフォーム)

今回、まるごと断熱リフォームで自宅をリニューアルした久保田氏は、リノベを振り返って、気密性を高めることの難しさを感じたそうです。

昔の家は隙間も多く、経年劣化で建物の歪みも起こりがちですが、断熱パネルはグラスウールとは異なり性能を担保するために精度の高い施工が必要になります。リノベでは断熱パネルを使用するのが初めてだったため、躯体の補正など気密を高めるための施工技術を再認識する機会になったそうです。そして、最後に今後の取り組みについて訊ねたところ、地域に根ざした工務店らしい想いがありました。

雲仙市国見町には昔に建てられた立派なお宅が多いそうですが、同じ規模の住宅をいま新築で建てるとすると建築費用がかなりかかります。しかし断熱リノベであれば、建築費用を抑えながら快適でゆとりある暮らしができる魅力があり、まわりに空き家が増えていく中で、古い家を潰すのではなく活かすという流れができないかと…。匠の今後の取り組みによって、その想いが実り、空き家が少しでも再生されていくことに期待したいものです。

Before

After

写真(左)脱衣室になる前の和室。写真(中)ダイニングキッチンになる前の和室と縁側。
写真(右)リビングになる前の旧リビング・洋室。

Before 平面図

少ない家族のために設計された、築20年になる和室中心のコンパクトな平屋住宅。

After 平面図

今のライフスタイルにフィットするよう、水まわりの位置変更や増築を含めて間取りを一新。

まるごと断熱リフォーム(SW工法リフォーム)のイメージCG

断熱リノベによる既存住宅の高性能化によって、外の温度の影響を受けにくく、家の中の快適な温度を逃しにくくなるため、冬は暖かく夏は涼しく過ごせる暮らしを実現。

Reform Data

延床面積:39.28坪/木造平屋建/築年数:2005年に竣工・築20年/エリア:長崎県雲仙市
断熱リフォームによる性能改善:省エネ区分 7地域
改修前UA値:1.74 W/㎡K/改修後UA値:0.29 W/㎡K

基礎も柱も小屋組み、屋根の瓦も劣化が少なかったため、築20年の平屋住宅をフルリノベーション。新築と比べても見劣りしない高性能住宅に生まれ変わった。

LIXILまるごと断熱リフォームによって、断熱性能はHEAT20 G2グレードを超える水準のUA値0.29 W/㎡Kに大きく改善。

ビルダー紹介

社名 有限会社 久保田工務店
所在地 長崎県雲仙市国見町多比良丙805-5
創業 1949年
URL https://www.gamadasu-kubota.jp

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公開日:2025年11月25日