DTL建築セミナー 空間・素材・建築 ―令和時代の建築作法

第1回「建築という混成系」

平田晃久(建築家)

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建築全体につながっていくマテリアル

講師に平田晃久さんを迎えたDTL建築セミナー「空間・素材・建築──令和時代の建築作法」は、参加者35人の小さなライブハウスのような雰囲気の中、平田さんの世界感を感じることができ、非常に有意義な時間でした。
冒頭に、「発酵するマテリアリティ」という言葉で始まり、最初は頭の中に疑問符がつきましたが、私の中では、素材が経年変化し建築として熟成されて行くようなイメージかなと勝手に考えました。話が始まると平田さんが独立してからの代表作品の紹介から始まり、作品が出来上がる過程や、その場に建築がどうつながっていくか等々の話で、題の意味よりは、建築のあり方について考えさせられ、話の内容に圧倒されてしまいました。
 建築のいたるところが緑化された事例の「Tree-ness House」の紹介では、光の入り方、方位、雨のかかり方等、その場での最適な植物の選定や、形を決定する技術的なディテールのつくり方、また内装材の色の選定まで、建築全体につながっていくマテリアルをわかりやすく説明していただきました。
 平田さんがつくる複雑な形については、サンゴ礁や煙に例えての説明があり、形を導く考え方からその数学的解決策まで、デザインとディテール、サイエンスが一体となって形づくられていることを実感しました。
 セミナー終了後の懇親会では、設計期間中でのモックアップ作成エピソードや、コンペの取り組み方等、普段なかなか聞けないところまでお話しいただき、たいへん勉強になりました。
 今後、自身の設計業務の中でも、設計の取り組み方等に活用させていきたいと思います。

安川 雅巳

安川 雅巳(やすかわ・まさみ)

株式会社 ニュージェック
2001年 大阪芸術大学芸術学部建築学科卒/2001年 セキスイハイム株式会社入社。/2005年 株式会社ニュージェック入社

固有な形式性の追求から多様性の獲得へ

平田君はいつもコンブの話をする。チャーミングなスケッチと難しそうな文字式を使った、自然界の「からまりしろ」の話だ。建築は形式性に依拠しているので、自然のような複雑なものを参照するのは難しい。「自然みたいな」、「有機的な」建築を目指すことは、すぐに形態を模したつまらなさに堕ちてしまう。
 でも多分、彼が目指しているのは、自然界から新たな形式性を抽出して建築をつくることだ。タマゴとコンブとイワの関係にある他者性と階層性を、顕在化させようとする。多様性を知性でコントロールしようとする、ものすごく傲慢な試み。
 だからこそ、平田君の話はいつも明快でわかりやすい。明晰さをつきつめると自然に近づくという不思議。今回のセミナーの感想に、「どこか懐かしい感じがする」、「斬新なヴァナキュラー」という声があった。誰もやったことがない新しさに挑んでいるのに、昔からそこにあるかのように佇み、心地よい親密さを生み出している。生物が生き残るためにシンプルなシステムを構築するように、その場固有の形式性を徹底的に追求することで、自然発生的な多様性を獲得することに成功し始めているのかもしれない。

松森 織江

松森 織江(まつもり・おりえ)

株式会社東畑建築事務所
大阪府生まれ/1995年 京都大学大学院工学研究科建築学専攻修士課程修了/1995年 株式会社東畑建築事務所入社/現在、同社設計室部長

都市とのつながりと〈からまりしろ〉

「いかに都市空間とつながっていくか」、「いかに周辺環境を建築に取り込んでいくか」といった建築と都市とのつながりを感じるセミナーでした。たとえば、周辺の地形を読み取り、建築で地形を生成した「Alp」、浅草寺周辺の密集する小規模店舗の流れを立体的に展開した「nine hours 浅草」など、紹介されたほとんどの作品において都市空間の文脈を読み解いて設計されたように感じました。通常は単純に接道条件や方位など合理性だけを考えて敷地内で完結した建物が多い中、そのような考えを持って設計している部分に共感を覚えました。
 また、この都市とのつながりが、セミナーのキーワードのひとつである〈からまりしろ〉を表現した部分になっているのではないかと感じました。その〈からまりしろ〉に人の動線や植栽を計画することで、人びとが歩き、時には、たまりながら、まるで森の中を歩いているような体験ができる建築を実現しているように感じました。
 このような都市スケールとヒューマンスケールを上手く計画した都市の中の森が建築を特徴づけ、魅力的にしているのではないかと感じました。

村井 俊彦

村井 俊彦(むらい・としひこ)

INA新建築研究所
兵庫県生まれ/1996年中央工学校中央実務専門学校建築学科卒業/2007年?INA新建築研究所/現在、同社西日本支社主幹

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公開日:2019年09月26日

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