水盤上に浮く円弧状のリゾートホテル
ラグーナベイコート倶楽部 ホテル&スパリゾート

堀尾明(リゾートトラスト株式会社)、清水満(株式会社安井建築設計事務所)

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ラグーナベイコート倶楽部 ホテル&スパリゾートの建築設計に関わって

安井建築設計事務所・名古屋事務所設計部部長 清水満氏(談)

“Futuristic Luxury”という設計コンセプト

最初にこのお話をいただいたのは2007年の頃です。エクシブ鳥羽を私どもが設計をした頃からのご縁で、名古屋に本拠地を置くリゾートトラストさんが、いよいよ愛知県に初めて本格的なホテルを建てることになり、私どももかなり力が入りました。
海に近いところなので水をテーマにした “AQUA×RESORT”をコンセプトに検討を始めました。その後、リーマン・ショック等があり設計を一時中断しましたが、2015年に再開が決まり、当初から温めていたアイデアを基本に進めていくことになりました。
建物は、風光明媚な三河湾国定公園の海や山の景観に調和させるとともに、マリンリゾートを印象付けるランドマークとなるフォルムを目指しました。高さを30m以下に抑え、総延長400mの建物を海岸線に沿わせ両端に向かって徐々に低くしていくアール(曲面・曲線)が特徴です。突き出たアールの中央高層棟をV字柱とコアで支えることで、海に向かって幅138mの大開口を穿(うが)ち、大きな水盤の中に浮かぶ建物としました。


ラグーナベイコート倶楽部 ホテル&スパリゾートの設計と担当された安井建築設計事務所・名古屋事務所設計部の清水満部長(撮影:フォンテルノ)

“Futuristic Luxury”をコンセプトに建てられたホテルは、この地域のランドマークとなっている

大水盤に浮かんでいるかのような建物は、近未来的な景観をつくりだしている(撮影:黒住直臣)

最初は“AQUA×RESORT”をコンセプトにスタートしましたが、建築のイメージにインスパイアされて“Futuristic Luxury”という今までに見たことがない、一歩先をゆくラグジュアリーな空間を模索するコンセプトを掲げ熱い情熱を持ったリゾートトラストさんのもとプロジェクトが進行しました。
設計監理では、建築、インテリア、ランドスケープが一つのチームとなって協議しながらつくっていきました。非常に良いチーム体制で最後まで仕事ができたことで、これまでのホテル施設と一線を画した、“建築とインテリアが融合した”新しい空間になったと思います。

施設の概要

施設は、パブリックゾーンを1、2階レベルの2つの水盤を中心に構成しています。2階にメインエントランスを設けてレセプションフロアとし、1階に、水盤に浮かぶようなメインダイニングやレストラン、マリーナを望むプール、ジム、ボールルームなどを配置し、地下1階から専用廊下でアクセスするスパゾーンをつくりました。客室は全室が海へのビューを確保するように、1〜7階を片廊下形式で海岸線に沿って計画し、眺望の良い上階にはグレードの高い客室を配置しています。


ラグーナベイコート倶楽部の断面図。ロビーやスパから海が繋がって見えるように、断面図で検討した(提供:安井建築設計事務所)[クリックで拡大]

水盤上に浮く客室を実現させたハットトラス構造

水盤の上に浮かせる建物というアイデアは、設計の初期段階にあったものです。弊社の構造部にも知恵を出してもらい、中央高層棟と呼んでいる中央部が抜けている8層の建物の最上層を鉄骨のハットトラスという構造体にしています。建物が湾曲したまま出っ張っているので海側に垂れるのを防ぐために、両端はSRC造の躯体、中心部をS造で軽量化、そして最上層を硬い構造でしっかりと固めました。
こういう大胆な構造をとったことによって、2階のロビー空間からも、手前の水盤と海が繋がって見える風景をつくることができました。エッジを消す手法は、シンガポールのマリーナ・ベイ・サンズの屋上にある、空とプールの境界が消えるインフィニティプールが有名ですね。ラグーナベイコート倶楽部の水盤、プールも インフィニティエッジで構成されています。
また、水盤を海と繋がって見せるために、水盤のタイルはプールより黒いものを使っています。黒いタイルから徐々にブルーのタイルに変化するようにグラデーションになっています。

水盤部分のタイルは海と一体となって見える黒いタイルから、プールまわりはプールと同じ青のモザイクタイルへとグラデーションをかけて変化させている(2点とも)

存在感を消したいコア部分

敷地は海に面していると言っても、敷地境界にはコンクリート護岸や堤防があり、海側の護岸道路は一般の人が歩ける緑道になっています。このため、2階のロビーラウンジや1階中央のスパから護岸や堤防が見えず、水盤越しに空間と海が一体となるように、建物の高さを何度も検討しました。さらに、スパから見えるコア(階段室)はなるべく存在感を消すよう、カーテンウォールのガラスの色を海に近いブルーグレーにし、下2段をフロストガラスに変えて、入浴されている方の映り込みやレストランからの光の反射を防いでいます。


レストランの光や入浴中の人物の映り込みを防ぐため、コアを巻くガラスの下2段はフロストガラスにするなど、細かい配慮が施されている(オーダーカーテンウォール:LIXIL)

建物を特徴づける白いライン

建物は、敷地に沿ってカーブし流れるようなデザインを強調するために、白い帯で印象づけたいと考えました。しかも帯が全周回っているように見せたかったことと、避難階段などを一切見せず、曲面をきれいに表現することがポイントでした。
施工を担当された鹿島建設さんが採用したのは無足場工法です。PC板をクレーンで吊って建付け、ジョイントするだけというやり方です。あらかじめカーブしたPC板には、45二丁掛けの小さなタイルを貼ってひとつのパネルにしているので、美しい曲面を創り出すことができました。このPC板のタイルはLIXILさんにお願いしましたが、本当にきれいな仕上がりになっています。美しさを保つために、タイルの表面にはマイクロガードを塗布するなど、汚れから守る方法もアドバイスいただきました。


建物の流麗なカーブを強調する白い帯は、湾曲するPC板にLIXILの白いタイル(45二丁掛けPC打込)とサッシが使われている(タイル、サッシ:LIXIL)

海沿いという厳しい環境であることから、白いタイルの美しさを保つため外装汚れ防止に保護剤のマイクロガードを塗布した

インテリアデザインについて

インテリアの全体は丹青社さんが担当しましたが、ロビー・客室などの基本デザインは、香港のデザイナーAB Concept さんが担当されました。彼らに蒲郡に来てもらい、敷地を案内しながらいろいろ話をしていくうちに、この地に触発されて、彼らは“グレート・ウェーブ”を体現して、曲面や曲線としてインテリアにも多用したいという話になりました。
ベースとなる部屋のデザインや家具などのイメージ画を彼らが描き、それをもとに丹青社のデザイナーチームが派生形となる50タイプほどをデザインし、まとめ上げました。客室は全部で193室あり、すべてが海・マリーナを望むレイアウトですから、風景の取り込み方などもしっかり考える必要がありました。
一日の光の移り変わりを取り入れ、デザインコンセプトをサンライズ(爽やかな朝)、サンセット(薄暮の頃)、トワイライト(月夜の光)、という3つのキーワードで表現。ベイスイートをサンライズ、ラグジュアリースイートをサンセット、ロイヤルスイートをトワイライトとグレード別にそれぞれ振り分けました。
AB Concept さんのデザインを実際の部屋として完成させるのはとても大変でした。その一例としてはロイヤルスイートの金色のドット壁がありますが、こちらは、月夜の水面がキラキラ輝いているイメージです。照明は間接照明を主体につくり込み、色温度をかなり気にして調整しているので、写真で見るより実際のほうがいいとみなさん言われます。AB Concept さんの思い描いたものが実現できたのではないかと思います。

壁面やカーペットの模様まで曲線が多用された客室。考え抜かれた間接照明の明かりが印象的

ロイヤルスイートの波打つ金色のドット壁は、月夜の水面がキラキラ輝いているイメージ

客室の水まわりには信頼の製品を

水まわりについては、トイレやシャワーホース、ウォールバーなどはLIXILさんとリゾートトラストさんの間で、これまで積み上げてこられた信頼の製品がありましたので、そこは尊重させていただきました。ちょっと冒険したいようなところはLIXILグループ企業のグローエやジャクソンなど、海外でも人気のあるデザインを使いました。
浴室は、曲線などデザイン性が求められたこともあり、すべてユニット工法でつくっています。工場生産のパネルを組み合わせて現場で組み立てる方法ですから、カーブした石の壁面なども美しく仕上がっています。最近は現場の手が少ないということもあり、こうした乾式工法を採用することが多くなっています。

浴室はすべてユニット工法でつくられている(2点とも)

信頼できるパートナー

この現場では、多くの専門家やメーカーさんが一丸となって、“Futuristic Luxury”という難しいテーマに挑戦していただきました。特にLIXILさんには、プレゼンテーションの度に、新しい課題に応えていただきました。オーナーさまが求めていることを理解し、メーカーとしての専門性の高いアドバイスやサポートが得られたことは大変ありがたく、彼らの働きがリゾートトラストさんとの信頼につながったと思っています。さまざまな方に助けられながらの仕事でしたが、信頼のおけるパートナーの大切さが際立った現場でした。携わった方、すべての皆さんに誇りを持っていただきたいと思います。

ラグーナベイコート倶楽部 ホテル&スパリゾート データ

所在地 愛知県蒲郡市海陽町二丁目9—1
建築主 リゾートトラスト株式会社
設計監理 株式会社安井建築設計事務所
施工 鹿島建設株式会社
設計協力 ・内装設計 株式会社丹青社、AB Concept
・造園設計 株式会社ランドスケープデザイン
・照明計画 (内部)株式会社ヌーサデザイン、(外部)アカリ・アンド・デザイン
・造成設計 富士エンジニアリング株式会社
規模・階数 地上7階、地下1階、塔屋1階
最高高さ 29.65m
敷地面積 52,264.50m2
延床面積 36,700.21m2
構造 RC造、一部S造、一部SRC造
用途 完全会員制リゾートホテル
客室数 193室(以下、主な客室タイプと面積)
■ロイヤルスイート
2ベッドルームタイプ 53室(平均124m2
1ベッドルームタイプ 23室(平均100m2
■ラグジュアリースイート
2ベッドルームタイプ 14室(平均112m2
1ベッドルームタイプ 19室(平均72m2
■ベイスイート
2ベッドルームタイプ 58室(平均62m2
1ベッドルームタイプ 26室(平均54m2
竣工 2019年1月(2019年3月28日開業)
LIXIL使用商品 外壁:オーダーカーテンウォール、大型タイル、モザイクタイル
その他擁壁、水盤ガーデンテラス、プール、ザ・ベイコートスパ、大浴場、アウトドアプール
共用トイレ:大便器、小便器、水栓金具
ザ・ベイコートスパ:大便器、シャワーブース水栓金具
トリートメントサロン:シャワーブース水栓金具(浴槽GROHE)
プール更衣室:大便器、洗面器、シャワーブース水栓金具
アウトドアプール:シャワー水栓金具
テニスコート:大便器、洗面器
客室:大便器、(浴槽、水栓金具GROHE)ロイヤルスイート(バイブラバス JAXON)

取材・文/フォンテルノ 特記以外の写真撮影/エスエス企画

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公開日:2019年10月30日

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