SOMPO TOILET
「豊かな発見に巡り合える多様なトイレ」

損保ジャパン霞が関ビル15
損保ジャパン霞が関ビルの15階に設置されたトイレは、目的別に8つのテーマで作られている。写真はRefresh TOILETで、カーテンを通して柔らかい自然光が差し込む空間になっている

三浦史野氏(損害保険ジャパン株式会社 人事部担当部長)
大坪孝平氏(SOMPOコーポレートサービス株式会社ファシリティマネジメント部兼 SOMPO不動産戦略部)

2023年10月に竣工した損保ジャパン霞が関ビルは、SOMPOひまわり生命保険株式会社の本社を含むグループ会社が入居する地上16階の社屋ビル。この新社屋では、SOMPOグループの全社員がこれからの“みらい”を見据えて挑戦する場として“SOMPO Mirai Point”という15、16階の2層にわたる特殊ラウンジを社員に開放し、新たな事業に挑戦する企業姿勢を示している。
15階のゆとりのある空間にはカフェが併設され、くつろげるテーブルや椅子が置かれるほか、ユニークな形・内装の8種類のトイレが話題となっている。これまでのような男女別のトイレではなく、テーマ性のある個室完結型トイレが回遊できる通路に並び、廊下を歩いていると心地よいサウンドが流れている。
今回は、オフィスにおける新しいトイレの取り組みを推進した損害保険ジャパンのチーム「SOMPO Mirai Point」のご担当者にその狙いやコンセプトをお話しいただいた。

SOMPOグループの交流の場としての新社屋

──新社屋の特長

三浦史野氏(損害保険ジャパン株式会社 人事部担当部長)

三浦氏:損害保険ジャパン株式会社(以下、損保ジャパン)は、もともといくつかの会社が合併してできた会社で、新社屋は日本興亜損害保険株式会社が持っていた土地に建てられました。2019年に社名変更した「SOMPOひまわり生命保険株式会社」がメインテナントとして入っています。
敷地は、長い歴史を持つ霞が関の中央官庁街と急進的な再開発が続く赤坂・虎ノ門エリアの接点にあります。それぞれの特徴を捉えて、近隣への視線制御や環境制御の機能をもつ金属ルーバーと、周辺の建物との調和を図る石張りの外装、建物を見る時間や角度によっていろいろな見え方のする外観となっています。
また、SOMPOグループが一番大切にしている「安心、安全、健康」を表す建物として、建物全体の耐震性能を高める中間層免震構造を採用し、周辺の緑と連続した公開空地の確保、その他にも豊かな眺望を享受できる明るいワークプレイスを設けるなど、設計を担当された日建設計さんからさまざまなご提案をいただき、敷地の特徴や企業理念をうまく表した建物になったと思います。

──眺望の良い2フロアを開放し「特殊ラウンジ」に

三浦氏:SOMPOグループが都内で新しいビルを建てるのは久しぶりです。グループのパーパスとしている「“安心・安全・健康”であふれる未来へ」を受けながら、「SOMPO Mirai Point」として目指すべき建物環境を検討していきました。そうした中で、SOMPOグループは損保ジャパンをメインに、SOMPOケアという介護事業や生命保険会社があり、グループの皆さまが集まって交流できるような建物にしたいという思いが強くなりました。
そこで、SOMPOグループの未来を語れるような象徴的な建物にしようと、15、16階の最も眺望の良いフロアを、2層にわたる「特殊ラウンジ」として計画しました。通常、上階は役員などが使うフロアになりがちですが、それだけは避けたかったのです。16階にはVIPルームがありますが、お客さまを招いて誰でも使える空間になっています。

写真左:2023年10月に竣工した損保ジャパン霞が関ビル全景。繊細な陰影と重厚な佇まいによって損害保険会社としての風格が表れている(写真:堀内広治)
写真右上:赤褐色の金属ルーバーがつくる変化に富んだ色彩が、霞が関の豊かな緑と調和する風景をつくり出している(写真:エスエス東京)
写真右下:ルーバー越しの赤坂・虎ノ門エリアの眺望。バルコニーとルーバーによる日射制御によりブラインドなしでも快適な環境を確保している

ワークプレイスで過ごす“ちょっとした時間”に豊かな体験を

──15階のトイレにこだわった理由

三浦氏:15階のトイレは当初、16階と同じ通常の男女別トイレの設計で進めていたのですが、「SOMPO Mirai Point」と言っておきながらこれまでと同じトイレでいいのだろうか。多様性を受け入れながら変化していく働き方に順応できるトイレにしたいと、日建設計さんにご相談させていただきました。
その頃、日建設計さんの東京本社3階に「PYNT(ピント)」というコミュニケーションの活性化をはかるためのフロアが開設され、そこのトイレのコンセプトは「誰が使うか」ではなく「どう使うか」にフォーカスした画期的なものでした。SOMPO TOILETはさらに「どこを使いたいか」といった個室自体がもつ空間の豊かさや個室を選択する楽しさに焦点を当ててみることにしました。トイレで顔を洗ったり、服を着替えたり、さまざまな機能とそれに応じた特徴的な個室形状と環境を併せ持つことでさらに使い勝手の良い場所になることを狙いました。
弊社は6割が女性なので、女性から見て使い勝手の良いトイレということもポイントの一つです。育休中の社員が子ども連れで来社したときに、おむつ替えに会議室を使っていたことなどもあり、女性目線で求められるトイレの使い方を洗い出していきました。そうして絞り込んだのが以下の8つのテーマです。次にそれぞれの目的に合わせたデザインに落とし込んでいきました。

図:トイレバリエーション(画像提供:日建設計)
《8つのテーマとデザインコンセプト》
① Wheel chair TOILET――車椅子に座った高さから個室を見渡すと鮮やかな桜色の天井と鏡の映り込みにより、奥行のある幻想的な風景が広がります
② Gallery TOILET――大きな鏡と丸い洗面台、少し変わったアート、黒い空間に白く浮かび上がる衛生陶器が、見慣れない光景で心を楽しませます
③ Relax TOILET――時間帯によって洗面台の上から差込む光が青色の壁面に多彩な変化をつくりだし、眺めていると気分を落ち着かせることができます
④ Fitting TOILET――細長いトンネルのような空間の中には小上がり、コート掛け、姿見があり、全身の身だしなみを整えられます
⑤ Meditation TOILET――天井から降り注ぐ繊細な影の中でそれらの移ろいをただ眺めているだけで心が落ち着きます
⑥ Refresh TOILET――2色のカーテンの間から光が差し込み、明るい現象的な空間に包まれながら気分を切り替えることができます
⑦ Child care TOILET――やわらかな壁に包まれた個室にはベビーベッドがあり子どものオムツを交換できます
⑧ Make up TOILET――柔らかな光が入り込む個室には三面鏡を備えた洗面台があり気軽に身だしなみを整えられます

Wheel chair TOILET 車椅子に座った高さから個室を見渡すと鮮やかな桜色の天井と鏡の映り込みにより、奥行のある幻想的な風景が広がる(写真左:エスエス東京)

Gallery TOILET 大きな鏡と丸い洗面台、少し変わったアート、黒い空間に白く浮かび上がる衛生陶器が見慣れない光景で、心を楽しませる


Relax TOILET 時間帯によって洗面台の上から差込む光が青色の壁面に多彩な変化をつくりだし、眺めていると気分を落ち着かせることができる(写真:エスエス東京)

Meditation TOILET 天井から降り注ぐ繊細な影の中で、それらの移ろいをただ眺めているだけで心が落ち着く(写真:エスエス東京)

Refresh TOILET 2色のカーテンの間から光が差し込み、明るい現象的な空間に包まれながら気分を切り替えることができる

Fitting TOILET 細長いトンネルのような空間の中には小上がり、コート掛け、姿見があり、全身の身だしなみを整えられる(写真:エスエス東京)

Child care TOILET やわらかな壁に包まれた個室にはベビーベッドがあり子どものオムツを交換できる

Make up TOILET 柔らかな光が入り込む個室には、三面鏡を備えた洗面台があり、全身の身だしなみを整えることができる

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公開日:2025年02月26日