TODA BUILDING×LIXIL
手仕事の技を体感できるアートな空間
中川康弘、一條真人、大嶽 伸(戸田建設)
焼き物の良さを引き出したテラコッタ陶板

テラコッタ陶板の4階壁面
──エスカレーターの袖壁にはLIXILのテラコッタ陶板が使われていますね。
中川氏:旧本社ビル外壁の泰山タイルは緑と青をベースにした色で、当初はインテリアでそれを表現できないかと緑色の石材を貼る計画をしていました。弊社社長の大谷にプレゼンテーションしたところ「天然の石もいいが、土から練り上げ、釉薬をかけて焼く焼き物のような素材でないとものづくり感は宿らないのではないか」という意見から、テラコッタ陶板を採用することにしました。
一條氏:旧本社ビルとTODA BUILDINGは、建物のスケール感が全く異なりますし、1階から3階まで16m、3層分の吹き抜けの大壁に使うため、焼き物の良さをどう表現できるかが課題でした。当然、泰山タイルをつくった当時よりも今のほうが技術力は向上しているはずです。ただ、合理化されて均一につくられた既製品では焼き物らしさを表現するのは難しいと感じていました。そこで、実績があるLIXILとならば、培ってきた技術力を引き出して唯一無二の焼き物ができるはずだと、協働でテラコッタ陶板づくりにチャレンジすることになりました。
中川氏:旧本社ビルがそうであったように、次は我々が後輩たちにメッセージを残す番です。これからの100年を見据えた新しい焼き物が、このテラコッタ陶板ということになりますね。
今回、焼き物らしさを表現したテラコッタ陶板にするため、小端小口面に素地の色が出ない四面コバ施釉を条件にしました。そうすると締め固まってサイズが小さくなり、施工の際にテラコッタ陶板の目地の隙間は10mm程度になると想定されました。しかし、エスカレーターを上がりながら触った際に指が挟まってしまう危険性を考慮し、6mm以下にする必要がありました。実際に焼いてみてどのくらい縮むかを計算し、試行錯誤しながらつくってもらいましたが、今回、再生原料も使っているためなおさら難しく、工場サイドはご苦労されたと思います。出来上がったテラコッタ陶板は小口に少しバリがある感じなど、不均一な成形が焼き物らしく、趣があります。

テラコッタ陶板の4階壁面


一條氏:これからの世の中を考えたときに再生原料が半分以上入っていないと、環境配慮についてなにも訴えることができません。ただ、再生原料が多くなるほど、釉薬による色の調整も難しくなってきます。テラコッタ陶板の色は再生原料を入れる前の試作で方向性が決まっていましたが、再生原料を使ったらその色を再現できなくなってしまった。結果、小さいサンプルを300枚位焼き直してもらったと思いますが、実際の量産に入るぎりぎりまでかけて色の調整をしてもらいました。
──あれだけの大壁をテラコッタ陶板でどのように表現されたのでしょうか。

戸田建設株式会社
建築設計統轄部 建築設計第1部 主任
一級建築士
大嶽 伸 氏
大嶽氏:エスカレーターの大壁には、約7000枚のテラコッタ陶板が貼られています。テラコッタ陶板全部に番地を振るのではなく、CGを用いた検証をもとに理想とする色割合を定め、その割合となるように現場の職人さんに施工してもらいました。社長からは「旧本社ビルの外壁タイルの記憶を継承した緑色の素材」という大きな命題を与えられて、さらに、近くからは手仕事の温かみを感じとることができ、遠くからは単一な表情とならないようにしなければいけませんでした。凹凸、角(つの)のありなしなど4つの形状と8色で32パターンを考え、それらの組み合わせによって、単一ではなく奥行きのある複雑な表情を持った壁面を表現しました。





【寸法】
A:400x135 t=35mm
B:400x100 t=35mm
C:400x135 t=35mm
D:400x100 t=35mm



環境に配慮したLIXILのLEED対応のトイレ。目線に窓が設けられ、京橋の街並みが眺められる
一條氏:自然な感じでランダムに貼るってとても複雑で難しいですね。何パターンもつくって、社内で検討して合意を得て、そこから決まったパターンを分析して比率を算出して、LIXILにテラコッタ陶板を焼いてもらいました。さらに協力会社の職長さんと「こういう割合で、横並びは駄目だけれどもひとつ飛ばしはいい」「この一面に赤いアクセントは必ず入れる」など綿密に打ち合わせをしました。ただし、テラコッタ陶板はパターンで梱包・箱詰めされてこないので、毎晩、職長さんが足場に一枚ずつ配置に合わせて並べておいて、翌朝、職人さんが準備されたテラコッタ陶板を貼っていくという作業でした。その際もルールに則って微調整しながら貼ってもらったので、どこから見ても自然で美しい仕上がりになっています。設計から製作、施工まで、皆で同じ方向で進めたので、あれだけ素晴らしいテラコッタ陶板の袖壁ができたと強く感じています。
今回、テラコッタ陶板をはじめ、外装のフィン、LEED対応のトイレなど、LIXILと協働したことで一段レベルアップして取り組めました。建築材料・住宅設備機器メーカーのLIXILとゼロからものをつくれたというのはいい経験でした。
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公開日:2025年02月26日

