寒河江の観光拠点に賑わいを創出する2つの施設が完成

地主愛子氏(株式会社 羽田設計事務所)、加藤忠弘氏(株式会社 NIIZEKI STUDIO)

道の駅寒河江
「CLAAPIN SAGAE」の外観

山形県寒河江(さがえ)市は、夏暑く冬寒いという典型的な北国の盆地気候の土地です。寒河江川の河川敷と国道112号線に挟まれたエリアに、交流人口拡大のための観光拠点として一帯の再整備計画が立ち上がり、未来志向の新たな寒河江市のシンボルとなる2つの施設が誕生しました。2024年に竣工した、屋内型児童遊戯施設「さくらんぼこどもキャンパスCLAAPIN SAGAE ※以下、CLAAPIN SAGAEとする」、2025年には情報発信複合施設「ギャザリングスポット in チェリーランド ※以下、ギャザリングスポットとする」です。
2つの施設ではLIXIL商品が採用されましたが、どのように使われ役立っているのか、また採用のポイントなどを、設計者の加藤氏(CLAAPIN SAGAE)、地主氏(ギャザリングスポット)それぞれに、設計全体の解説を交えてお話を伺いました。

道の駅含む一帯の再整備計画が2020年にスタート

加藤忠弘氏
加藤忠弘氏
(株式会社 NIIZEKI STUDIO)

加藤氏:1993年にオープンした「道の駅 寒河江 チェリーランド」は25年が経ち老朽化が目立ってきたことから、寒河江市は2020年に一帯の再整備計画を立ち上げました。コロナ前は年間平均120万人の来場者数を数えた道の駅ですが、コロナで100万人を切るまでに落ち込んだこともあり、今回の再整備では、人が集うきっかけとなるような施設を新たにつくり、活性化を図りたいという自治体の思いがあったようです。
そのために寒河江市は、寒河江川南の河川敷を含む一帯を「健康促進エリア」と位置づけ、国道112号線に面する「交流拡大エリア」と「アクティビティエリア」を、人々の交流を活性化するエリアとしています。「アクティビティエリア」には以前チェリードームとイベント広場がありましたが老朽化したことから取り壊し、今回のプロジェクトである屋内型児童遊戯施設「CLAAPIN SAGAE」と、情報発信複合施設「ギャザリングスポット」の整備につながりました。

敷地全体図 敷地全体図。上が北で寒河江川が東西に流れている[クリックで拡大]

新たな集客施設のコンペに挑む

加藤氏:冬は雪深く、夏は40度近い猛暑となる山形県では、東根市に公共施設として無料で利用できる屋内型の子どもの遊び場「ひがしね あそびあランド」ができて注目されたことをきっかけに、各自治体がそれに続けと同様の児童遊戯施設がつくり出されてきました。その中で、寒河江市が立地場所として選定したのがこのエリアでした。
事業方式はDBO方式(Design-Build-Operate)という、行政が資金調達と施設を所有し、民間業者に施設の設計・施工、運営を委託する方式により実施されました。コンペには4チームが参加し、設計として羽田設計事務所とNIIZEKI STUDIOが参加しているチェリーフラワーパーク株式会社が選定されました。提案チームには設計会社のみならず施工会社、運営会社、維持管理会社も参加しており、提案時から維持管理運営までを見通して入念に議論してきました。
NIIZEKI STUDIOの代表を務める新関が山形に縁があり、山形の建築士会との交流もあったことから羽田設計事務所の代表の水戸部裕行さんにご協力させていただき、上記のチームが構成されました。構造設計を担当された木下洋介構造計画さんも、そのような繋がりの中でコンペ提案時の初期段階から計画考案にご参加いただき、実現性を高める作業にご協力いただきました。施工は、寒河江市庁舎の建設にも携わっている歴史ある現地建設会社の高木さんと、日本トップクラスの木造建築技術を誇るシェルターさん。鉄骨加工についても、日本有数の特殊な鉄骨建築物を手掛けてこられた日南鉄鋼さんにご協力いただき、設計検討段階で各社3次元CADを共有しながら、施工を見据えた議論を重ねてきました。とても良いコミュニケーションが取れたことで、メンバーそれぞれがクオリティの高い専門性を遺憾なく発揮できたと思っています。

拡張計画におけるエリアの位置づけ

加藤氏:私たちが設計した屋内型児童遊戯施設「CLAAPIN SAGAE」をどのように敷地内に配置していくかという検討はとても大切なポイントでした。敷地の西に広がる既存のランドスケープを残しつつ、どのように活かすか。横長な敷地に沿うように国道に面して建物を並べることも考えましたが、緑地はそのまま残して、建物を中央に配置することにしました。有機的で波打ったような屋根の平屋の建築として低く抑えた佇まいにできたことで、風光明媚な環境に溶け込みながら、寒河江のランドマークとなるようなシンボリックな建築になったと思います。
建物東側の多目的駐車場は、「CLAAPIN SAGAE」と「道の駅 寒河江 チェリーランド」との間に配されていて、通常時の駐車場機能だけでなく、様々なイベントが開催できるよう設備を整備しています。コロナにより延期されていた寒河江の人気イベント「さくらんぼ種飛ばし大会」など、エリア一体の活性化の拠点となるように、この場所に配置しました。そして、西側の緑地は静かな場所なので、グランピングもできるキャンプエリアや、自然の起伏だけを活かした屋外遊戯スペースとしました。その中心には、この場所の地下水をくみ上げた人工のせせらぎがあり、夏でも家族で集えるような親水エリアをつくりました。このように西側は、寒河江の自然を存分に体験できるエリアになっています。

アイデア段階のスケッチ
アイデア段階のスケッチ:「CLAAPIN SAGAE」の設計期間は約2年。敷地南の国道側に小ぶりの建物をならべてさまざまな居場所をつくる案(A)、正円形の建物案(B)、川側に寄せる案(C)、地形とつながりながら多方向に開かれる案(D)などさまざまな検討がなされた(提供:NIIZEKI STUDIO)
平面計画図
平面計画図。コンペ提案時は2階建てだったが、ワークショップなどを重ねる中で、市民の方々の意見を汲み取り、大人が安心して子どもを見守ることができる平屋の計画に修正し、最終案になったという(提供:NIIZEKI STUDIO)
部分断面図
部分断面図:大型ネット遊具でもある中央のタワーは木造のチューブ構造となっており、周辺に並ぶU字型のコンクリート壁とともに屋根を支える重要な構造となっている(提供:NIIZEKI STUDIO)[クリックで拡大]

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公開日:2025年09月16日