住宅をエレメントから考える(後編)

間仕切りのイメージ

塩崎太伸(建築家)

『新建築住宅特集』2016年4月号 掲載

時に応じて

昼夜に応じて

「33年目の家」 松原慈+有山宙
透明度の高い波板ポリカーボネードやエキスパンドメタルに覆われ、昼は周囲の景色をぼやかしながら取り入れ、夜は室内の明かりが周囲に溢れ出す。
「O邸」 中山英之
細長い家型のファサードには、ガラス全体を覆うカーテンが掛かる。昼は全体に光を取り込み、夜は家型のファサードを浮かび上がらせる。
「行灯の家」 手塚貴晴+手塚由比
両面張りの障子が建物の四方を巡っていて、夜には室内の明かりと雰囲気が街並みに漏れ出す。
「六甲の住居」 島田陽
光を分解する光学フィルムを貼った2階間仕切りにより、見る位置によって異なる透明なマーブル色が空間に現れる。
「浅草の家」 松本賢
柿渋で染色された落水紙太鼓張りの障子は和室の角にL字に配され、中庭からの光によってテクスチャーが浮かび上がる。

四季の移り変わりに応じて

「白馬の山荘」 仲俊治+宇野悠里
半外部空間を、夏は光と風を取り込む蚊帳とポリカーボネートの透明屋根で、冬は雪に応じたビニールカーテンと木製雪囲いで覆う。
「深沢の住宅」 仲俊治+宇野悠里
吹抜けのテラスのファサードには土と植栽を置けるグリーンルーバーが設けられ、敷地外環境との中間領域として用いられている。
「m」 青木淳
懐の深い窓空間はカーテン網戸と木製サッシとの間に多くの観葉植物が置ける内外の緩衝領域。境界が奥行きをもつことで季節や場所に応じた植物が内外の関係をつくる。
「谷万成の家」 神家昭雄
マスカット栽培の温室の一部をマスカットで覆われたアトリエとし、季節に応じた植物の成長により空と室内との関係が変化する。
「緑縁の栖」
川本敦史+川本まゆみ
浮き壁によって囲まれた中間領域には木々や植物が茂り、周辺には壁の裾から植栽が覗くことで弱く建物との関係をつくっている。

時代に応じて

「上沢の住居」 島田陽
既存の平面の空間構成を利用しながら、改修時に対比的な曲面壁を挿入することで、小さな空間を囲いとっている。
「ICHINOE」 駒田剛司+駒田由香
鉄骨3階建ての店舗兼併用住宅の2階には大きなLDKを貫通させるような曲面壁を、3階には既存のグリッドを崩したBOXをつくるような間仕切りを入れることで、ひとつの住宅の中に異なる間仕切り方の空間の集合が生まれている。
「奥沢の家」 長坂常
ミラー塗装のサッシとミラーフィルムが貼られたガラスが、昼と夜とで写し込む風景を変え、改修した空間にさまざまな体験をもたらす。

モノや設備に応じて

「向日居」 末光弘和+末光陽子
間仕切りとなる門型ラーメン架構のユニット上部にはそれぞれ集熱装置が設えられ、晴れの日は太陽熱が壁内部を伝い、床に貯えられる。
「Holistic Light Box」 海野健三
間に断熱材を吹き込んだ強化ガラスの内壁により環境制御装置でありながらほのかに光を通す間仕切りに囲われた建築となっている。
「LCCM住宅デモンストレーション棟」
小泉雅生+LCCM住宅設計部会
ルーバーや縁側が間仕切りとなり、熱や光をコントロールする。層状の環境制御空間とした伝統的なパッシブデザイン。
「「新小岩の家」 飯田善彦
コアを囲む壁は本棚となっていて、中心性を保ちながらも住人の持ちものを取り込み、周りの部屋や生活と繋がっていく。
「玄以の家」
田岡佳江子+植南草一郎
住まい手である染織造形作家の作品が並んで吊るされたアトリエスペースは道路から見るとショーウィンドウのような間仕切りとなる。

おそらく、私たちの生活が豊かで楽しいものであるために変化は不可欠である。1日のうちに明るさや音が変化し、1年のうちに植物や気温や色が変化し、そうした時間とともに、また、歳を重ねるごとに私たち自身のものの見方も感じ取り方も変化していく。だからその時々で人や空間やその他諸々のものの仕切り方や繋がり方は変化するのが自然なのだろう。常に間仕切られている、あるいは常に繋がっているよりもその時々での変化は心地がよい。その変化を起こす時間や光や季節や緑などとの繋がりを同時に楽しめるからだろう。

背景:「六甲の住居」 島田陽

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公開日:2016年08月31日