Hareza池袋×LIXIL

池袋に誕生した「ハレ」の場

北典夫、土田耕太郎(KAJIMA DESIGN)

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──LIXILの製造現場から
【ものづくり工房でのタイル制作】

このお話を頂き、はじめにアーバンスクリーン(作品名 《ミルチス・マヂョル/ Mirsys Majol / Planetary Commune》、制作 岡﨑乾二郎)の絵を見せて頂いたときは、単純に驚き、タイルでこれだけビビットな色が出せるか不安になりました。しかし、すぐになんとしても成功させタイルの美しさをこの場所で多くの人に見てもらいたい。と思ったのを覚えています。
岡﨑さんとは20年以上継続して何回も、お仕事を一緒にさせていただいた経験があり、これだけの色数で岡﨑さんの色彩感覚を満足させるには相当の試作が必要だと覚悟をしました。また、ガラスとの調和が求められる中で、ガラスに負けないレベルの仕事をしなければ。というプレッシャーも強くありました。
発色に関して、まず岡﨑さんからポイントとして赤が挙げられました。やきものにとって赤はとても難しい色で、なかなか岡﨑さんからの合格はいただけませんでした。そこで、焼成方法を酸化焼成から還元焼成に切替え、銅を含んだ釉薬を還元焼成し赤く発色させる辰砂釉に挑戦することにしました。辰砂釉とは、古くから陶芸作家達が挑み独特の赤を表現してきた釉薬です。試作を繰返し合格を頂いた後は、岡﨑さんがこの赤をベースに色を再構成し、その他の目標色が次々と決まっていきました。色合いだけでなく、同じ色でも光沢のある物、マットな物。貫入の入る物、入らない物。釉薬を掛けず、素地の色で表現する物。など試行錯誤を繰り返しました。
岡﨑さん、北さん、土田さんには、何度も常滑のものづくり工房に足を運んでいただき打合せを繰り返しました。試作の中から選定いただき、足りない色を次回までに作るという作業を繰返し、微妙な色合いなどを調整し厳選されたB棟59色、C棟19色が採用されました。
形状は、30mm以下から300mmまで様々なサイズのタイルで構成され、B棟C棟合わせて、466形状になります。焼成前に焼成収縮を見越した寸法でカットし、1枚ずつ施釉しタイル側面にも釉薬を施しています。
施工され仕上がったタイル1枚1枚を見ても、釉薬の溜まり具合や透け感の違い、貫入の表情などが違い、また光の入り方によっても表情が違って見えます。タイル制作の立場から見ても見飽きないタイルを作ることができ、このお仕事に参加させていただけたことをとても光栄に感じています。

株式会社LIXIL
芦澤忠



Hareza池袋のアーバンスクリーンのタイルはLIXILのものづくり工房で制作された。写真左/タイルの配置を確認する岡﨑乾二郎氏(中央)、写真右/見本のタイルと番地図(写真:LIXIL)

「ミルチス・マヂョル/ Mirsys Majol / Planetary Commune」について

豊島区には特別な思いがあります。尊敬する詩人山之口獏、画家熊谷守一そして手塚治虫、自由学園、池袋モンパルナスなど若い頃から大きな刺激を受けてきました。旧池袋文芸座の建物は建築家だった父が設計したものでした。かつて要町界隈に住んでいたのもそれが所縁です。豊島区の文化に育てられたような気持ちです。豊島区に住んだ詩人でもう一人名高い小熊秀雄(1901~1940)の原作『火星探検』(1940)は手塚治虫が大きく影響された漫画です。天文学者を父にもつ子供たちが夢の中で火星の町に行き戻ってきます。その町の名はミルチス・マヂョル。子供たちの話を夢物語と聞いていた父は驚きます。それはもともと火星の運河につけられた名前だったから。火星の町は魅力的で、なによりも平和で子供たちはこれこそ未来の希望の町だと感じたのです。ミルチス・マヂョルの劇場で開かれた子供たちの歓迎会の素晴らしかったこと。そんな思いを豊島区の未来に重ねて制作しました。
(「広報としま」令和元年(2019年)9月11日 号外より)

地中海風のミルチス・マヂョル の語感は、マジョリカ(マヨルカ)タイルを思い起こさせます。重苦しい時代に「だからこそぼくらは、おしゃべりを続けなければならない」と人々を励げました小熊秀雄は、どこかのレストランで見かけた、マジョリカタイルの色彩が語りかけてくる饒舌に、希望と勇気をもらっていたのかもしれません。時代と場所を超えていく希望を、ガラスとタイルが連続して作り出す色面に、その色彩の力に託しました。

岡﨑 乾二郎

Hareza池袋 B棟 データ

所在地 東京都豊島区東池袋一丁目19番1
施工事業主 東京建物株式会社、株式会社サンケイビル
設計 KAJIMA DESIGN
施工 鹿島建設株式会社 東京建築支店
階数 地上8階、地下1階、塔屋1階
高さ 最高部約41m
敷地面積 2,983.59m2
延床面積 10,639m2
構造 鉄骨造、鉄骨鉄筋コンクリート造、一部鉄筋コンクリート造
用途 劇場、集会場、店舗、駐車場
竣工 2019年4月
LIXIL使用商品 磁器質 施釉特注タイル(厚み11mm)、磁器質 無釉特注タイル(厚み15mm)

取材・文/フォンテルノ 撮影/エスエス企画(人物撮影:淺井芽美)

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公開日:2020年02月18日

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