INAXタイルコンサルティングルーム大阪 オンラインセミナー

「ベルリン・モダニズム集合住宅と変貌を遂げるダッチデザイン国・オランダ」

安藤眞代 (インテリアデザイナー、studio Ma 代表)

ベルリンのル・コルビュジェ「ユニテダビダシオン」(1957)

ベルリンには世界遺産のモダニズム集合住宅群とは別に、建築界の巨匠ル・コルビュジエによって建てられた集合住宅もあります。ベルリンの「ユニテダビダシオン」です。コルビュジェのユニテダビダシオンというと、フランス(マルセイユなど)が有名ですが、唯一フランス国外で建設されたユニテダビダシオンがベルリンにあり、現存しています。フランス語でユニテは単位や集団、ダビダシオンは住居や家をあらわしています。コルビュジェは当時、新しい都市の理想像を持っていました。その一つが街を垂直に構成していくというものでした。そうした考え方を形にしたものがユニテダビダシオンで、ベルリンには1957年に建てられました。

ユニテダビダシオン

Photo:Studio Ma

ユニテダビダシオン

Photo:Studio Ma

こちらも、先ほどのモダニズム集合住宅群と同様、60年前に建てられたとは思えない美しい状態で維持され、現在も人が住み続けています。建物は17階で、全部で500戸以上の部屋数があります。ファサードではどの部屋も綺麗な色味でデザインされていて目を引きます。
1階部分はピロティになっています。ピロティはコンシェルジュが提唱した近代建築の5原則の一つとして知られています。
ピロティの秀逸な使い方としては、フランスのサヴォア邸が有名ですが、このユニテダビタシオンでもピロティが採用され、駐車場としても活用されています。
部屋のタイプはメゾネット的に部屋の中が2階建て構造になっている部屋もあれば、ワンルームタイプもありました。どの部屋も状態がよく今でも人気だそうです。ほぼ満室で、空き部屋待ちが出ているとのことでした。
現地の案内ツアーでは当時の写真や開放されたモデルルームを見ながら説明を受けました。建設当時の住人たちの素敵な写真が多く残され、ここに住むことが一つのステータスだったことをしのばせるものでした。

建設当時の写真

Photo:Studio Ma

建設当時の写真

Photo:Studio Ma

当時の部屋の内部もこうした形で写真展示されていました。今見ても全く古びていない、素晴らしいデザインです。奥がキッチンでダイニングとはガラスで仕切られているようなレイアウトだった部屋もあるようです。私が見学したモデルルームはガラスがなく、オープンになっていました。1戸あたりは決して広くないのですが、無駄を排して省スペースにレイアウトされている間取りでした。

間取りイラスト

Photo:Studio Ma

こちらはメゾネットタイプ(2階構造)の部屋。1階にキッチン、ダイニングがあり、 2階にはベッドルーム、お客様のゲストルームもあります。子どもがいても十分に家族で暮らしていける広さがあるものでした。

共有廊下写真

Photo:Studio Ma

各階の廊下。非常に通路幅が広くとられています。また、玄関ドアの色は統一されずに、アクセント的に色を変えているドアがありました。このフロアは深い赤と黄色の2色、また階が変わるとブルーやオレンジの組み合わせになるなど、デザイン的に変化がつけられていました。これはこの集合住宅の内部にいることが、実際の街にいるのと同じような感覚になるように、空間の色に変化をつけて、オリジナリティが生まれるように配慮されているためです。

部屋内部

Photo:Studio Ma

部屋内部

Photo:Studio Ma

部屋内部

Photo:Studio Ma

部屋内部

Photo:Studio Ma

部屋の内部はとてもシンプルでした。無駄をそぎ落としたミニマルな内部に、ブルーが巧みに用いられている壁、キッチンは当時からオープンキッチンのスタイルできれいなタイルも当時のまま残っていました。機能性を考えられた動線になっています。

眺望の写真

Photo:Studio Ma

ユニテダビダシオンもとてもいい立地にありました。近くにオリンピック会場があり、駅も近く、目の前は公園で緑があふれているような落ち着いた環境です。実際に現地にいても、とてもリラックスできる雰囲気があり、今も多く支持されているのも頷けます。一階には住人が使用できるコミュニティールームがあり、そこでくつろいだり、勉強したり、小さい子供が遊べるスペースになっていました。家族連れにもこの住環境は魅力的だと思いました。

このコラムの関連キーワード

公開日:2021年03月24日