富士市立岩松北小学校×静岡県富士市×LIXIL

コロナ禍の教室環境改善で子どもたちを守りたい
──スタイルシェード実証実験の取り組み

環境が改善されたことを実感する子どもたち

宮川校長:

とにかく私たち教師は、教室の室内の環境を整えたいという思いがありました。特に石川先生は養護教諭なので、温度や照度に関しても、座席によって不利なことがないようにしたいと強く思われていたようです。

石川先生:

文科省で決められている教室の照度があるので、夏はシェードで照り返しを遮りながら室内灯で調整しました。ノートを取る時の照度はほぼ安定していたと思います。これから冬を迎え日差しが低くなるので、教室の真ん中まで直射日光が入りかなりまぶしくなります。ですから冬も同じようにシェードを使うことになるでしょう。カーテンはむしろ使っていないですね。カーテンが風でフワフワ揺れると明るさが安定しないですから。

宮川校長:

夏の実験で分かったことですが、カーテン自体が熱を持ってしまうので近くの子どもが暑がります。それにカーテンを閉めるとかなり暗くなってしまうので、照度環境という面でもシェードは有効だと思いました。(図5)

照度(まぶしさ)測定結果

照度(まぶしさ)測定結果
図5:3つの教室で、日射遮蔽の条件を変えて照度(まぶしさ)を比較。スタイルシェードを設置した教室は、窓側のまぶしさ(最大照度)は押さえられ、廊下側(最小照度)との差も少ないことがわかった
ベランダにスタイルシェードを設置した後の教室内のようす
スタイルシェードを取り付けたベランダのようす
ベランダにスタイルシェードを設置した後の教室内のようす。カーテンのように風でひらひらすることもなく、必要な照度も確保されている。ベランダ側の高窓が少し開けられ、吸気しているのがわかる(左)。スタイルシェードを取り付けたベランダのようす(右)

石川先生:

定期的に席替えはありますが、しばらくは同じ席で生活することになります。どの子にとっても“大丈夫”な環境にはしてあげたいですね。

特にコロナになってからは席と席の間を一列分開けているので、両サイドの席はすぐ窓で、カーテンが自分の座席まで大きく広がって来たり、熱気が入って来たりします。その点シェードはひらひらすることもないし、シェードとシェードの間から空気が入って換気もあるので、あらためて利点を感じました。それと、シェードをしていると子どもたちがテントに入っているみたいでとても落ち着くと言います。囲まれている感じで居心地がいいみたいですね。

宮川校長:

色合いもきれいなので、子どもたちは猫カフェみたいなんて言ってますね。(笑)

石川先生:

シェードを付ける前と後で、アンケートを取っているのですが、付けた後の方が「落ち着いた」「集中できる」などの感想が多くありました。(図6、7)

岩松北小学校4年生児童への事前アンケート(n=101)

岩松北小学校4年生児童への事前アンケート(n=101)
図6:事前アンケートでは、児童の多くが、教室内環境に不満を感じていることがわかる

岩松北小学校4年生児童への事後アンケート(n=101)

岩松北小学校4年生児童への事後アンケート(n=101)
図7:児童の多くが主体的に測定や実験に関わりながら、教室内環境改善の効果を感じたことがうかがえる

宮川校長:

子どもたちがテレビ取材を受けたのですが、そこでも「勉強がしやすくなったので、学力の向上につながります!」なんて言ってる子がいました。結果はまだ出ていませんが(笑)。スタートが、「まぶしい!」「暑い!」「ひらひらする!」でしたから、それに比べてかなり落ち着いた環境に改善されていて子どもたちも実感していることが、アンケートからもわかりますね。

実験に参加した4年1組の児童たち
授業「何を知らせたら、自分たちのシェードへの思いやシェードの良さをずっと受け継いでいってもらえるだろう」
実験に参加した4年1組の児童たち(左)と、授業「何を知らせたら、自分たちのシェードへの思いやシェードの良さをずっと受け継いでいってもらえるだろう」(右)(提供:2点とも富士市立岩松北小学校)
実験に参加した4年2組の児童たち
シェードが取り付けられる前の体育館の屋根の照り返しやまぶしさをみんなで確認する
実験に参加した4年2組の児童たち(左)と、シェードが取り付けられる前の体育館の屋根の照り返しやまぶしさをみんなで確認するようす(右)(提供:2点とも富士市立岩松北小学校)
実験に参加した4年3組の児童たち
教室の環境を毎日測定するようす
実験に参加した4年3組の児童たち(左)と、教室の環境を毎日測定するようす(右)(提供:2点とも富士市立岩松北小学校)

環境教育は親世代の気づきにもつながる

大畠美奈さん富士市役所 環境部環境総務課主査 大畠美奈さん

大畠さん:

今回の取り組みについては市の環境部としても、気候変動への適応策のひとつである熱中症対策に当てはまるので、とてもありがたいことと考えています。エアコンを使いながら換気するという新しいやり方を模索する中で、どう環境負荷を低減させるか、消費電力なども気になるところですが、教室環境に改善が見られたことはすばらしい成果です。

それだけではなく、子どもたちも巻き込んだ取り組みになったということがとても評価されますね。環境部では環境教育にも力を入れていますので、エアコンとのかかわりを考え、熱中症が増えたことが地球環境の変化にまでつながる“気づき”になると思っています。今後の社会を担っていく子どもたちがこうした体験を通して、将来、環境問題を担うリーダーになっていくのではないかと期待しています。

市ではSDGsの取り組みも推進しており、今年の7月には、「SDGs未来都市」※7 に選定されました。この選定を受けて策定した「富士市SDGs未来都市計画」には環境教育を充実させていく目標があり、小・中学校との連携が欠かせないものになってくるので、今回の岩松北小学校との連携を参考に、他の小・中学校に広げていければいいと思っています。

校舎から見える晴れた冬の日の富士山富士山の南に位置する富士市は、北方にいつも雄大な富士が聳える。写真は校舎から見える晴れた冬の日の富士山(提供:富士市立岩松北小学校)

また今年9月末に完成したごみの焼却施設「富士市新環境クリーンセンター」に併設する形で、循環啓発棟という富士市初の環境啓発施設ができました。ここでは富士市の環境について学べるだけでなく、ごみの焼却熱を有効活用した温浴施設もあり、食事も楽しむことができます。ちょうどいま「富士市環境ウィーク」※8 というイベントをやっていて、そちらで岩松北小学校の取り組みを展示していますが、今後もさまざまなところで紹介していきたいと思います。

飯盛:

コロナという状況は初めてのことで、シェードを使った日射遮蔽は有効だと思ってはいたのですが、換気量を計測して基準を満たすことが確認できたことは成果の一つだと思います。実験結果を広く知っていただいて、熱中症予防や環境負荷低減に貢献できればうれしいですね。メーカーとしても、今後は多くの人が集まる場所などでも応用できるのではないかと考えております。

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公開日:2021年03月24日