トラフとつくるタイル VOL.2

鈴野浩一、禿真哉(トラフ建築設計事務所)

『コンフォルト』2015 August No.145 掲載

さて、トラフとつくるタイルは?LIXILものづくり工房へ

理論に基づいたサンプルの多彩さに驚き、迷う

工場見学を終え、LIXILものづくり工房へ戻った禿さん。いよいよ、試作品第2弾との対面。前回のサンプルを見て、改善して欲しい点をいくつか示したトラフの二人。それに応えてものづくり工房のスタッフは試行錯誤を重ね、改善策に加え、新たな方向性も提示したサンプルを用意していた。

釉薬の厚みによって変わる雰囲気、明度と彩度の駆け引き、違う色を足したグラデーション、サイズを少し小さくしたものなど。一つひとつのサンプルデータを確認しながら検討を進める。最終的に第弾の試作品では、35ミリ角は釉薬は厚めの方向でマット仕様を、クローバーは第1弾の試作品からもう一段階、明るくしたものと、それのマット仕様とに決定した。

試作品第2弾をチェック !

上 / クローバー試作品第2弾。第1弾より色をやや濃くというオーダー。そのために顔料を増やした。前回好評だ った縁の釉薬だまりの面白さを生かす、ぎりぎりの量での提案だった。だが、厚みが増し透明感は薄れてしまっている。

下 / 40種類以上の緑の色、風合いのサンプルの中からの1つ。やきもののタイルづくりの深さに禿さんは改めてうなる。

35?@角タイルではトラフから、第1弾より生地の透明感がもう少しほしいというオーダーがあった。釉薬の厚い・薄い、乳白釉を使 った厚い・薄い、さらに乳白釉に微量のグレーを足した5段階のグラデーションなどがものづくり工房から提案された。工房のスタッフと禿さんの意見交換が続く。

「商品化するためには制約条件がたくさんあるんですね。もっと細かい検証が必要だとわかりました」と禿さん。その課題の一つは、30センチの紙張り1シートにピースをどう配置するかだ。壁面に施工した時、シ ートの境が意識されることなく、いかに自然に見えるか。それはタイルづくりのプロが何より工夫していることだという。

そこに、頼もしいアドバイザーがやって来た。かつて『ビーンズ』という商品で、大きさの違う4種類の豆形を四角いシートではなく、六角変形シート内に配した、LIXILタイル開発部の酒井渉さんだった。
(次のステップはvol.3で……)

「えっ。サンプルづくりってこんなにたいへんなんだ……」 小刀でのクローバー形削出しに挑戦した禿さん。乾式プレスしたままの焼成していない生地はもろく「あ、割れた、また、割れた。むずかしい!! それをこんなにたくさんつく ってくれたんですね」とものづくり工房スタッフの努力に感動することしきり。

取材・文/谷口三千代 撮影/梶原敏英(*を除く)

トラフ建築設計事務所

2004年に鈴野浩一と禿真哉により設立。住宅やオフィス、店舗、公共施設の設計のみならず、プロダクトデザインや展覧会の会場構成などでも活躍中。
東京都品川区小山 1-9-2-2F
http://torafu.com/

LIXILものづくり工房

愛知県常滑市奥栄町1-130(INAXライブミュージアム内)
https://livingculture.lixil.com/ilm/ceramicslab/

雑誌記事転載
『コンフォルト』2015 August No.145掲載
https://www.kskpub.com/book/b479868.html

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公開日:2015年09月30日