東日本大震災復興支援活動

「女川温泉ゆぽっぽ タイルアートプロジェクト」── タイルアートをLIXILがサポート

坂 茂(建築家、坂茂建築設計)

『新建築』2015年9月号 掲載

インタビュー
女川の象徴として
須田善明(女川町長)

坂 茂さんとは、東日本大震災の避難所の紙管による間仕切りづくりや、コンテナを用いた「女川町コンテナ多層仮設住宅」でお世話になりました。千住博さんや秋元康さんもこの地を訪れていただき、震災前にあった温泉を、寄付を募って仮設でつくれないかという話が出たのですが、仮設でも費用がかさむため、せっかくの寄付なので常設で進められればと思いました。その際、震災からのご縁もありますので、坂さんに設計のお話をしたら、ウミネコが羽を広げたような建築を描いていただきました。復興の象徴になる強さを感じましたので、正式にお願いした次第です。

タイルアートのプロジェクトでは、千住さんと水戸岡鋭治さんが手がけた「JR博多シティ」のタイルアートをご紹介いただき、全国からご支援いただいたこともあり、感謝の意を込めて、みなさんに描いていただきました。その打ち合わせの時に冗談交じりに千住さんに他の絵もお願いしたところ、「霊峰富士」などが実現することになり、感謝しています。

タイル制作では検品にも立ち会わせていただきました。千住さんの絵を忠実に再現いただき、LIXILの技術力にあらためて驚いています。万が一タイルが割れても復原できるというのも素晴らしいですね。

建築が完成して、ランドマークとしての役割、建築の力を感じました。日本の地方都市はどこも均一化して、写真1枚ではどの町なのか分からないですが、この建築が写っていると女川だと分かるのは素晴らしいことだと思います。女川の新しい駅舎を見に行こう、温泉に入りに行こうという方も増えています。これから新しい町ができてくるという女川の象徴になってくれればと思います。

(2015年7月18日、女川町庁舎にて 文責:本誌編集部)

インタビュー
タイルで町を明るく彩る
阿部鳴美(NPO法人みなとまちセラミカ工房代表)

津波からの復興という縁でスペインタイルに出会い、スペインに研修に行った時のことです。町の至る所にタイルが装飾として使われていて、光が当たるとキラキラと輝くんです。その色と鮮やかさが、私が思う女川の未来のイメージと重なり、明るい町だったら楽しいのになと思いました。しかも、博物館を訪ねた時に、何百年も前につくられたタイルが展示されていて、当時の様子が伝わってきて、タイルをつくった人と繋がれたような気がしました。女川の町が新しくなる時、なくなってしまった風景や出来事をタイルで蘇らせれば、復興の証として残せるのではないかと思ったんです。そういう町づくりができたら素晴らしいのではないかと現地で感じて帰ってきました。

女川に帰ってから、NPO法人として事業を進めていくかたちを選択して、タイルづくりを始めました。最初はスペインという異文化を町の人が受け入れてくれるかどうか心配だったのですが、懐かしい風景や色の鮮やかさもあり、少しずつ浸透していきました。その時、町から新しいゆぽっぽにタイルを使いたいという話があり、そのタイルを工房でつくれないかという話がありました。でも、われわれはまだ素人の域を出ていません。

その後、LIXILでつくっていただけるという話になり、職人中の職人の方に任せたほうがよいので安心したのと同時に、その制作に携われないんだという寂しい気持ちもありました。でもその後、転写作業のお話しをいただき、うれしくて手伝いに行きました。長時間の作業でしたが、花を応募していただいたみなさんの思いを受け止めながら取り組みました。
これからも町を明るくするタイル制作に励んでいきます。

(2015年7月18日、NPO法人みなとまちセラミカ工房にて 文責:本誌編集部)

みなとまちセラミカ工房制作のスペインタイル。
2014年4月のキックオフミーティング。千住氏がCGパースにイメージを描いている様子。*
タイルの焼成発色テストピース。** (**提供:LIXIL)
愛知県常滑市の「LIXILものづくり工房」で転写紙張り作業をしているみなとまちセラミカ工房のみなさん。**
「LIXILものづくり工房」での検品風景。全作品が床一面い広げられ色やグラデーションを確認する。千住氏,須田町長,阿部氏が立ち会った。**
3月21日に行われた「おながわ復興まちびらき2015春」。**