タイル名称統一100周年企画

ツバメアーキテクツとつくるタイル──みたらしタイルとドーナツ

ツバメアーキテクツ×LIXILやきもの工房

『コンフォルト』2022 December No.188

ツバメアーキテクツが企画・設計に携わった東京・下北沢の新しい商店街BONUS TRACKの隣地に8月、HORA BUILDINGが竣工。その空間のためにLIXILやきもの工房とコラボレートしたタイルづくりを追った。

HORA BUILDINGのドーナツ屋「洞洞(ほらほら)」

HORA BUILDINGのドーナツ屋「洞洞(ほらほら)」。メインカウンターに今回デザイン・製作された「みたらしタイル」が張られている。(※1)

まちが入り込んでくるように

東京・下北沢のBONUS TRACKのある通りに面するHORA BUILDINGは、ツバメアーキテクツが設計を手掛け、完成後にSOHOオフィスとして入居した。半地下階にはツバメアーキテクツと佐藤七海店長の共同運営によるドーナツ屋「洞洞(ほらほら)」がオープン。生地から各種トッピングまで研究に打ち込んだドーナツメニューはリピートを決心させる旨さだ。
単なるドーナツ屋にあらず、イベントを企画し併設するカフェスペースをまるごとイベント会場にすることもありなのだ。BONUS TRACK側と背後の住宅地の間を通り抜けできる2カ所の出入口が設けられていることもおもしろい。
「アート展示にワークショップ。ポップアップショップも開きます。学生の企画持ち込みがあったり、ここにまちが入り込んでくるように、ぼくらの思いつかない使い方がされていい」とツバメアーキテクツ代表の一人、山道(さんどう)拓人さんが話す。ドーナツ屋と設計事務所の3層の空間は、立体的な広場のように縦につながり、さまざまな人の気配が行き交う。こうした自由度をもつ空間の大きな特徴となったのが、ツバメアーキテクツが実験的な発想で試作を展開したオリジナルタイル、「みたらしタイル」である。

HORA BUILDINGの正面外観

HORA BUILDINGの正面外観。BONUS TRACKのある通り側に面している。鉄骨造、地下1階、地上2階建て。延床面積135.78㎡。地盤面から約80㎝下がった地下階がドーナツ屋「洞洞」。

線路跡地に展開するBONUS TRACK

下北線路街

東北沢駅から世田谷代田駅間の線路跡地に、新たにつくられた下北線路街。その一部に2020年、現代版商店街BONUS TRACKがオープンした。ツバメアーキテクツは企画段階から参加し、設計を手がけた。

下北線路街

12のテナントが入る木造2階建ての5棟が中庭を挟み、通り抜けできる公園のような場所になっている。食事や読書、お茶を飲んだりとゆったりした時間が流れる。

表情の変化がおもしろい「ディップ」をオフィス空間に

ツバメアークテクツのオフィス(SOHO)

ドーナツ屋の上階はツバメアークテクツのオフィス(SOHO)。2層のフロアからさらに屋上へつながる開放的な空間だ。ここではキッチンの壁と腰壁に「みたらしタイル」のバリションのうち、「ディップ」の手法によるタイルを張った。

キッチンの壁面

キッチンの壁面。窓入る光にランダムな模様が浮かび上がる。模様の色は薄め。水まわりを考慮し、透明釉薬のコーティングを施したタイプを使用。

トイレのドアを挟む腰壁

トイレのドアを挟む腰壁には濃いめの色で、コーティングなしを張った。焼成窯の中のわずかな温度差で現れた色差が魅力。

シュガーグレーズのような「流し掛け」

メインカウンターとキッチン

ドーナツ屋「洞洞」のメインカウンターとキッチン。床が地盤面より約80㎝低いため、通りに面した窓から低く差し込む光がやわらかく、現しの天井とタイル張りのカウンターに反射する。カウンタートップにはみたらしタイルのバリエーションのうち、薄めの色で「流し掛け」の模様をつけ、透明釉薬のコーティングを施したタイプを張った(写真※1を参照)。

カフェスペース

カフェスペース。天板にタイルを張った可動式サブカウンターが中央に。一角にはアート展示やイベントなどを行うスペースと、住宅地へ通り抜けできる出入口も設けられている。

エントランスの前の土留め

エントランスの前の土留めの天端にもタイルを張り、ベンチをしつらえた。こちらは濃いめの「ディップ」、コーティングありをチョイス。外光の下でタイルの表情の変化が目を引く。

可動式サブカウンター

可動式サブカウンターのタイルは濃いめの色の「流し掛け」、コーティングあり。

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公開日:2023年01月25日