ジブリパーク 「ジブリの大倉庫」

ジブリパーク 人々をいざなうタイルで彩られた中央階段

白石普、吉永美帆子(タイル職人/Euclid)、芦澤忠(LIXILやきもの工房)

100年残る空間をつくる

──多くの人々が中央階段のタイルに触れます。見た目の美しさや手でタイルに触れた感触だけでなく安全性など、タイル装飾ならではの施工の大変さがあると思います。

白石氏:やはり触り心地と、尖った箇所は硬いものに当たると欠けやすく怪我をしますから、安全面に気をつけました。施釉の際には、なるべくタイル側面の小口まで釉薬がかかるようにして強度を持たせ、施工時も「なるべく滑らかになるように」と指示をして、尖がりや異物感がないように細心の注意を払って仕上げました。

芦澤:タイル張りは、ある程度まで職人さんに任せて張ってもらったのですか?

白石氏:多い時には15人位でタイルを張っていましたが、三次曲面や納まりの難しいところなど最終的には僕と吉永で施工していました。
タイル制作はいろいろな窯元に協力いただいて、芦澤さんがいるLIXILやきもの工房(常滑)でも焼いてもらいましたが、やきものの街である瀬戸、多治見(笠原)、土岐でつくりました。2022年は「タイル名称統一100周年」の記念すべき年でもあったからです。タイルを生産している、いろいろな街も一緒に参加してもらいたかった。タイルの未来のためにも、これからの可能性を持った若いタイル職人さんとも一緒にタイルを張りたいという思いでした。

※「タイル」は、建築物の壁・床を被覆する薄板状の陶磁器を指す呼称。2022年4月12日、日本で「タイル」という名称に統一されてからちょうど100年目を迎えた

きれいな曲線を表現したベンチ
滑らかな表面になるように丁寧にタイルが施され、きれいな曲線を表現したベンチ。ポッコリとした“ルーザ”に遊び心が隠れている
宮崎吾朗監督が中央階段にタイル装飾を選んだ
100年後も色褪せず輝きが変わらないものとして、ジブリパークの宮崎吾朗監督が中央階段にタイル装飾を選んだ

未来のタイル職人へのメッセージ

──最後に、タイル職人として「ジブリの大倉庫」 中央階段に込めた思いや空間の魅力をお聞かせください。

中央階段正面の滝壺
中央階段正面の滝壺。さまざまなタイルによって美しく無国籍な雰囲気をつくり出している

白石氏:僕、タイルが好きなんですね。日本におけるタイルの明るい未来をつくりたいと思っています。ジブリパークは人気過ぎてチケットがなかなか取れないと聞きますが、地元の子どもたちの遠足を受け入れているそうですよ。これを聞いて、さすがジブリだと思いました。子どもたちが「ジブリの大倉庫」にある中央階段のタイルを見て触って、「タイルって美しいな」と感じてくれて、その中の一人でも卒業文集に「将来の夢はタイル職人」とか書いてくれるようになればいいと思いながらタイルを張っていました。

芦澤:タイルを見て触れた子どもたちの楽しそうな笑顔が思い浮かびますね。なんだか嬉しいですね。

白石氏:実現するか分かりませんが、20年後くらいに「ジブリパークのタイルに感動してタイル職人になりました」という人が出てくるのを期待しています。まだ、遅くないと思っています。タイル業界ができてたかだか100年、これからの100年で僕を超えるようなタイル職人がどんどん生まれてきて欲しい。ジブリパークがそのきっかけになって、将来自分のようなタイル職人が増えていると本当に嬉しいですね。

タイル装飾にはジブリのキャラクターが隠れている
タイル装飾にはジブリのキャラクターが隠れている
現場で頑張っている白石氏に、宮崎吾朗監督がヘルメットにサインして活を入れてくれた
現場で頑張っている白石氏に、宮崎吾朗監督がヘルメットにサインして活を入れてくれた
宮崎吾朗監督デザインの「ジブリの大倉庫」の銘板
宮崎吾朗監督デザインの「ジブリの大倉庫」の銘板を白石氏が作成した。上部に「ジブリは職人と共に新しい風を吹かせる」とイタリア語で刻印してある。緑色の装飾には“Euclid”の文字と鹿島建設と日本設計のロゴマークが隠れている

「ジブリの大倉庫」(ジブリパーク第1期工事)データ

所在地 愛知県長久手市茨ケ廻間乙1533-1
施工事業主 愛知県
設計 スタジオジブリ(デザイン監修)、日本設計
施工 鹿島建設
階数 地上2階
敷地面積 約0.8ha
延床面積 9,437.35m2
構造 SRC造、一部RC、S造
主用途 美術館
竣工 2022年5月
LIXIL使用商品 オリジナル特注タイル

取材・文/フォンテルノ 撮影/エスエス企画 ©Studio Ghibli

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公開日:2023年03月13日