ピンチや失敗は新展開の種!
「なんとかせにゃあクロニクル 伊奈製陶100年の挑戦」展
『コンフォルト』2024 December No.200
現在に受け継がれる「なんとかせにゃあ」DNA

トイレが自分で掃除する
SATIS X (2024年)
LIXIL水まわり・タイル100年を機に、SATISが さらなる進化を遂げた。最大の特徴は1日1回 SATIS Xが自ら、便器内を泡で清掃し、清潔を保つこと。洗浄機能も強化。家事が軽減され、日々の暮らしにゆとりをもたらすトイレが誕生した。
働き方をアシストするトイレ
水まわり製品の開発に携わるデザイナー・冨岡陽一郎さんは「伊奈製陶、INAXが培ってきた技術とデザインの歴史は確実に今につながっています」と話す。LIXIL水まわり・タイル100周年にあたり、これまでの歴史を丹念に調べてきた。「1950〜60年代に陶芸家、70〜80年代には建築家、デザイナーとコラボレートして、タイルの色彩の開発や、水まわりを空間として提案するなど、暮らしの中にデザインを取り入れていきました。90年代以降、建築家との社内ワークショップから生まれたトイレが、コンパクトでベーシックなデザインのSATIS(2001年)です」。タンクレスにすることで、狭いトイレ空間にゆとりをもたらした。それから23年、進化を続け今年6月、「SATISX」が発売された。「2000年以降、住まい手にとっての使いやすさや、環境への視点などから製品開発を進めてきましたが、近年、働き方、暮らし方が変化し、新たな課題が見えてきたんです。共働き世帯の割合が大きくなり、家事を負担しながら多忙な日常を送っていたり、あるいは在宅ワークが増えたり。トイレを使う頻度も増え、それだけ汚れがちになりますね。トイレを清潔に保ち、家事を軽減できないか。そこからアプローチしたのが、使っていない時間帯にトイレが自分で便器内を掃除する機能でした」
一つ前のSATIS Gで登場した豊かなインテリア空間を演出するカラーもXに引き継がれた。「LIXILのやきもの技術の強みは、伊奈製陶が長年タイルで培った釉薬技術です」と、冨岡さんの言葉が熱っぽくなる。それを背景にしたマット調のノーブルグレー、ノーブルブラック、ノーブルトープの3色と、ピュアホワイトのラインアップはトイレのイメージをがらりと変えた。
自動で清掃する「泡クリーン」

トイレが中性洗剤の泡をつくり、自動で清掃を行う。夜間などの使用頻度の低い時間帯に清掃開始の時刻を設定。便器内でたっぷりの泡を攪拌後、約3時間つけおきし、数回洗い流す。専用アプリで開始時間の設定などができる。
隅々まで洗う「極みトリプル水流」

左右と中央の三方向からの水流によって、便器の隅々まで水が行きわたって洗浄。これまでよりも強力に洗い流す。便器の陶器表面は清掃性のよいアクアセラミック。
おしり用とビデ用、2本のノズル

使用時、同時に2本のノズルが出ることはない
シャワートイレにおしり用(右)とビデ用 (左)、それぞれ専用の2本ノズルを全機種に搭載しているのはLIXILだけだ(※1)。 SATIS Xではノズルオートクリーニング(パワフル)機能で、SATIS Gの2倍以上の水量で洗い流し、シャッタークリーニングも行う。
水まわり空間のデザイン史

SUITEROOM 2004年(平成16)。透明な間仕切りを用い、バスルームユニットを開発。開放的で豊かな水まわり空間を提案した。

INAXによる第3空間構想は1989年(平成元)。ライフスタイルの多様化で、機能中心に開発していた水まわり製品から、バス・トイレを空間としてデザインする方向に。梅田正徳、象設計集団などと共同開発。写真はデザイナーのケネス・グランジによるXstage KG。
蛇口から冷たいミネラル in ウォーター
Greentap グリーンタップ LIXIL×Suntory (2024年)
LIXILの浄水技術と、Suntoryの美味開発技術を掛け合わせ、Greentapのミネラル in ウォーターという新たな水を開発。水道水をLIXILの浄水カートリッジでろ過し、Suntoryが開発した植物ミネラルエキスをプラスすることで、雑味がなく、まろやかでおいしい冷たい水をキッチンの蛇口から提供する。
キッチン用ミネラル浄水栓

クールシルバーとクロム仕上げがある。
ミネラルボトル

Suntoryの独自開発による、ヤシ殻から抽出した自然由来の植物ミネラルエキス。
ミネラル浄水ユニット

ミネラル浄水ユニットに、左から浄水カートリッジ、クリーンフィルター、ミネラルボトルをセットするだけ。交換セットは専用アプリを使用すると自動で注文(※2)できる。
家でつくるミネラル in ウォーター
やきもの技術には、陶器の微細な孔をコントロールするセラミック技術もある。セラミック・フィルターと独自の活性炭ブレンド技術で、2001年に浄水カートリッジを開発。キッチン水栓に組み入れ、水道水を手軽にろ過して浄水を使えるようになった。「新チャレンジとしてサントリー食品インターナショナル㈱と共同開発し、浄水に植物ミネラルエキスを加えたまろやかでおいしい水、ミネラル in ウォーターを提供するサービスGreentapを始めました」と冨岡さん。デザイン面も共同開発。キッチンのシンク下のスペースを有効に使えるよう、構成ユニットのコンパクトなデザインに力を注いだ。まろやかな味わいを感じるおいしさの温度にもこだわり、冷水ユニットも備えている。通常のLIXILのキッチン(一部除く)に取り付けられ、条件によってはリフォームにも対応可能だ。 「Greentapは、水のストックが不要で買い出しの手間も不要、さらに冷蔵庫で冷やす手間やスペースも不要。スマートなGreentapライフは家事ラクも実現します」
Greentapのユニット構成

浄水カートリッジの内容

「ミネラル浄水ユニット」で水道水からミネラル in ウォーターをつくり、冷水ユニットで約10℃に冷やして浄水栓へ送水する。
LIXIL独自のナノテクノロジーによる抗菌セラミック・フィルターを採用。土から焼成した天然素材のセラミックのフィルターで、水道水の雑味を取り除く。
ミネラル成分の比較

(注)24年12月販売時点の数値となります
*1 浄水(*3)にサントリー製植物ミネラルエキスを加えた水
*2 サントリー食品インターナショナル(株)のペットボトル製品
*3 神奈川県の水道水を産業用浄水器でろ過した水
*4 市販のアルカリイオン水

冨岡陽一郎 Yoichiro Tomioka
LIXIL WATER TECHNOLOGY JAPAN デザイン・新技術統括部 デザインセンター長
※1 一般社団法人 日本レストルーム工業会会員の温水洗浄便座メーカーにおいて。2023年6月現在。LIXIL調べ。
※2 Greentapと専用アプリをインターネット接続で連携することで使用量や残量確認が可能になり、ミネラルボトルが残りわずかになるとGreentapのセンサーが検知し交換セットを自動的にスマート注文。スマート注文は、スーパー長期割3プランの契約が必要。
このコラムの関連キーワード
公開日:2025年01月28日