もっと自由に、快適に、清潔に──20年のSATIS Sタイプストーリー

『コンフォルト』2021 June No.179掲載

チーム一体で進めた緻密な技術開発

LIXILシャワートイレ開発グループ 田中伸幸さん×LIXIL衛陶開発グループ 丸山隆志さん

田中伸幸 Nobuyuki Tanaka

1992年の入社以来シャワートイレ開発一筋。1967年発売の「サニタリイナ61」と。

丸山隆志 Takashi Maruyama

衛陶開発グループでしかできないことに挑戦しようと、2014年入社時から現部署を志望。

〈サティス〉がめざしてきたのは、小さく美しいデザインと機能性の両立だ。もちろんそれは大変に難しい。「水圧と水の流し方をコントロールする小さなバルブを1998年に完成させたのが小型化の要のひとつ。開発には10年ほどかけています」と、シャワートイレ開発グループで〈サティス〉開発に携わり続けてきた田中伸幸さん。
「便座自体は小さくするわけにはいきません。使い心地は死守し、駆動部を小さくしてきました。プロジェクトチームを組み、“理想のスケッチ”を元に、すべてのパーツを限界まで小さく設計して詰め込む過程はデザイナーと技術者の闘い(笑)」
水がどう流れるかも重要だ。実は初代以来、鉢内の形状は何度も変化している。本体の設計を担当する衛陶開発グループの丸山隆志さんは「実は水をデザインするということなんです」と話す。洗浄水の流れや排出性は解析技術を用いてもなかなか再現できない。モデルチェンジのたび、モックアップをつくっては、実際に流して検討している。
「初代を見た時は、3D技術などが浸透していない当時の開発環境で、よくこんなものができたなぁと感嘆したものです。陶器は乾燥・焼成する過程で動くので難しい。でも、さらにやれることはあるはずだとの思いで取り組んできました」
節水性能が求められる現在、〈サティス〉の洗浄水量は初代の8ℓから5ℓまでに低減した。鉢内形状の工夫と、2016年モデルから採用された、汚れが流れ落ちやすい新素材アクアセラミックによる成果だ。
陶器の便器は樹脂に比べて傷がつきにくく長く清潔を保てるうえ、日の当たる明るい空間でも劣化しにくい。「独特の優美さがあるのも陶器のよさです」。(丸山さん)
そう。明るいバスルームやベッドサイドに据えても違和感のないトイレは〈サティス〉からはじまった。
「狭い場所でも手洗い器や収納、鏡などコーディネートしてもてなしのトイレ空間がつくれるだけでなく、開放的な空間にも合うデザイン性を追求してきました」(田中さん)
では、2021年モデルではデザインはどう変化したのか。
まず目に留まるのは、本体がどの方向から見ても非常にすっきりとした直線になっていることだ。
実は初代の時から開発メンバーは“まっすぐ”をめざしていたそうだ。
「陶器製造時の収縮量は部位ごとに異なり、形状のコントロールが難しい。“まっすぐ”でなくくびれてしまうのも、設置面が摩擦抵抗によりほかの部位より収縮しにくいためなんです」と丸山さん。下部のくびれは、やきものの宿命なのか? 丸山さんたちは収縮をコントロールできるよう、原料を流し込む型そのものの形状に試行錯誤を重ねた。そして遂に長年の課題だった直線デザインを実現したのだ。また同時に、フタや駆動部の樹脂カバーとの段差やすき間も徹底的に見直し、直線化した。

「実現できた時のうれしさ! だから開発は面白いんです。でもまだまだ理想の“まっすぐ”を追い求めます」(丸山さん)
リモコンのデザインも刷新された。便座の温度設定など副操作用の設定リモコンは分離して、便フタの後方に納めた。その分、壁リモコンはシンプルで使いやすくデザイン性の高いものにできた。便フタ開閉やお尻ターボ洗浄など、新たな機能に対応するボタンもついている。
「そのほかにもさまざまな機能を加え、さらに設定リモコンのスペースも設けたわけですから、駆動部はぎゅうぎゅうです」(田中さん)
コロナ禍のステイホームで、自宅トイレを使う頻度は増している。
「トイレの個室は自分をリセットする場にもなってきました。我々が提案し続けてきた空間としての居心地よさが、いっそう求められてきています。その意味でも2021年モデルは自信作です」(田中さん)
これからもさらに新しい価値創造に向けて探求し続けたいと話す2人。技術開発への取り組みは止まらない。

やきものの性質を知り抜く

本体側面のくびれ解消に向けて型の試作を繰り返し、内部構造を新たに設計。収縮度や設置面の摩擦抵抗を計算し、直線基調のラインを追求している。

コロナ禍に求められるトイレの役割

自宅で過ごす時間が増え、トイレの使用頻度は増加。また、機能だけでなく居心地のよさを求める声も多い。家族がいてもひとりでゆっくりできる場として、心を休めたりスマホや読書に使う人も。

自宅のトイレの使用頻度に変化はありましたか
あなたにとってどのようなトイレが理想のトイレですか

清潔さの追求が生む新しいサティスファクション

トイレの居心地のよさは清潔さとも一体のもの。進化を遂げた〈SATIS Sタイプ〉2021年モデルは、汚れにくさや清掃性、除菌性能なども大きく向上している。日常の手入れも格段にラクになるのは間違いない。

フチのない鉢内をパワーストリーム洗浄

鉢内は従来通りのフチレス形状で、折り返し部などの掃除に困ることがない。さらに鉢のすみずみまで洗浄水が回るパワーストリーム洗浄を実現。水は鉢内形状に設けたガイド部に沿ってぐるりと強力に流れ、外にこぼれない。

ヒンジ形状の工夫ですき間を減らす

便フタ後方、駆動部カバーとのヒンジ部は、より直線的ですっきりとしたデザインにして、すき間の溝も極力少なくしている。ホコリが溜まりにくく、清掃性も向上した。サイド後方の樹脂カバーも簡単にはずせて掃除しやすくなっている。

ノズルは凹凸の少ない形状、先端は着脱可能に。

お尻洗浄とビデのノズル本体は細く凹凸の少ない形状に変えたことで、汚れがたまりにくく清掃もしやすくなった。シャワー使用後はノズル先端を銀イオン水で洗浄して菌の繁殖を抑える機能も追加している。ノズル先端は簡単に外して交換可能。

便フタを閉めて便器洗浄できるように

リモコンに便座開閉に加えて便フタ開閉ボタンも登場。いずれも便器に手を触れずに操作できる。フタを閉じてから水を流すのもすべてリモコン操作で可能。コロナ後も“なるべく触らない”が求められることを考えても有用な機能だ。

ノズルシャッターはフラットで拭きやすく

ノズル部をカバーするノズルシャッターは、従来の折れ曲がった形状から、緩い弧を描くフラット形状に。拭き掃除が簡単になり、便フタが開いている時の見た目もすっきりした。取り付けやすく外れにくい構造に改良されている。

SATIS Gタイプも進化を続ける

上位機種〈SATIS Gタイプ〉もデザイン・機能とも進化。ゆとりある快適空間をつくる。

便座の幅は12㎜も広げて、お尻や太ももの圧迫感を減らした。鉢内はパワードライブ式の強力洗浄を効果的に回すため、新形状に変更。

横幅が広く、張りのある曲面で上質感を出したGタイプ。2020年11月発売モデルでは、機能向上やデザインの刷新と共に、新色として落ち着きのあるノーブルグレーも登場した。

LIXIL SATIS

https://www.lixil.co.jp/lineup/toiletroom/satis

LIXIL

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雑誌記事転載
『コンフォルト』2021 June No.179
https://confortmag.net/no-179/

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公開日:2021年06月14日