横須賀市港湾部×LIXIL

港湾の社会課題に民間ならではのアイデアを提案
――横須賀市の港湾施設に、すり抜け防止対策の後付けフェンスを寄贈

高橋学、水越則之、佐々木佑香(横須賀市港湾部)

住宅用フェンスを活用するというアイデア――既設防護柵のすり抜け防止対策

LIXIL担当者: 私が海に面した公園を歩いているときに、たまたま応急対策を施した防護柵を見つけて「これが防護柵すり抜け防止対策か。LIXILでも何かできることがありそうだ」と思ったことがきっかけでした。その後、防護柵の新基準や既設防護柵への対応策についていろいろな文献を調べ、LIXIL製品の開発に繋げられる糸口を探りました。開発初期の段階で国土交通省港湾局の方と意見交換した際に、横須賀市をご紹介いただき、2024年3月に、横須賀市港湾部との面談が叶い、防護柵の現状についてヒアリングさせていただきました。
実際に現場の状況を見ると、樹脂製の結束バンドが劣化で壊れ、金網がフェンスから剥がれている箇所が多数見受けられました。金網が壊れてしまった主な原因は経年劣化ですが、一部の利用者による故意の破壊があることもわかり、それにより経年劣化が早く進んだと推測できました。
こうした意見交換を繰り返していく中で、本来なら既設防護柵を新規の防護柵に交換するのが一番良い方策だと思いましたが、その場合、製品代だけでなく、既設防護柵の撤去費用、廃棄費用、地盤の修復費用などが発生します。維持・管理の修繕費用が厳しいと伺っていたので、既設防護柵を活かしながら長寿命化することを主軸としたご提案を、同年6月にさせていただきました。
ご提案内容は、既設防護柵にLIXILの量産品を後付け設置するという方法です。宅地境界でよく使われている量産品のメッシュ型のスチール製グリッドフェンスは、線径が5㎜ほどと太いため、金網より耐久性、安全性が高く、ステンレス製結束バンドで固定するだけなので、新規で防護柵を設置する場合と比較して施工納期も半分程度に抑えられます。さらに、製品代のみだと、新規防護柵と比較して費用も5分の1程度に抑えることができます。
設置方法については、防護柵の手すりを握りやすいように、手すり部(上桟)の下にすき間を設けました。また、下部(下桟)はすき間を小さくし、海に物が落ちにくくする配慮をしています。また、子供も多い場所ですので、フェンスを留めるステンレス製結束バンドは安全性を考慮し樹脂コーティングされたものを採用、端部の巻き方も危険がないように工夫しました。
LIXILのメッシュ型のスチール製グリッドフェンスを横須賀市うみかぜ公園近くの平成地区8護岸に設置させていただくことになりました。長年エクステリア商品を開発・製造してきたLIXILのこれまでの知見を活かしたご提案ができたのではと考えています。公共の安全性確保という社会課題解決に向けた民間の取組みとして、全国各地の類似現場に対する事故防止の啓発につなげたいという想いで、今回は寄贈という形式を採りました。
そして2024年12月に設置が完了しました。

ステンレス製の結束バンドで既存の防護柵に付けられたスチール製グリッドフェンス
ステンレス製の結束バンドで既存の防護柵に付けられたスチール製グリッドフェンスUF8/N8。上桟より少し低くすることで、手すりを握りやすくし、上下がアール形状なので見た目にもやさしくなっている(うみかぜ公園に隣接する平成地区8護岸)
既設防護柵への後付けフェンス施工立面図
既設防護柵への後付けフェンス施工立面図(資料:LIXIL) [クリックして拡大]
スチール製グリッドフェンスを設置した既設防護柵
スチール製グリッドフェンスを設置した既設防護柵(うみかぜ公園に隣接する平成地区8護岸)

スチール製グリッドフェンスを使用した防護柵では上部・下部ともにアールのついた形状で、上部は手すりより低い位置に設置し、手をかける邪魔にならないようにしている。また下部は袋ゴミなどがすり抜け難いよう下桟の下まで伸ばしつつ、排水を阻害しない位置に設置している(うみかぜ公園に隣接する平成地区8護岸)

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公開日:2025年03月17日