横須賀市港湾部×LIXIL

港湾の社会課題に民間ならではのアイデアを提案
――横須賀市の港湾施設に、すり抜け防止対策の後付けフェンスを寄贈

高橋学、水越則之、佐々木佑香(横須賀市港湾部)

官民連携による社会課題への挑戦――防護柵改修後の横須賀市担当者の感想

佐々木氏: 私自身が3児の母親なので、アンケートにもあった子供連れの方々と同じ目線です。LIXILさんに「結束バンドの位置をなるべく小さな子供の目線から離れた場所に付けられないか、結び目を海側に向けて人に当たらないようにできないか」という要望と、「フェンスのずれ落ちがなく安全な設置」が両立できるかを施工確認の時にご検討いただき、大変感謝しています。また、アンケートでも多くの方が「改修した防護柵には安心感がある」とお答えくださっていますので、ご家族でうみかぜ公園に来園される皆様が安心して景観を楽しんでいただけるのではないかと思います。
維持管理の視点では、この護岸は定期的に清掃業者が入っていますが、私たち市の職員も週に1~2回ほど見回りをして、壊れた金網を補修し、金網にからまったゴミなどを回収しています。まだ設置したばかりですので、今後の維持管理の作業量は分からない部分もありますが、現時点では、補修の作業時間は短縮され、本質的な業務に注力することができています。この状態が1年後、2年後も続くことを期待しています。

高橋氏: 歩行者に加え、防護柵に直接触れる機会の多い釣り人にとっても使いやすい形になり、喜んでもらえたことはとても良かったと思っています。佐々木の話にもありましたが、定期清掃、我々による見回りとメンテナンスなど、頻繫に人の目が入っているのは、散歩する犬や鳩のような動物に対する配慮という点も大きいです。

LIXIL担当者: アンケート調査の時に、小型犬を連れた女性から「以前の防護柵の時に、金網に引っかかっていた釣り針が散歩中の犬に刺さり病院に連れて行ったことがあったので、それ以降は防護柵の近くは歩かないようにしている」というお話を伺いました。また釣り人からは今回の改修で防護柵がきれいになり、釣り針が引っかかりにくい太さになったのは良かったとおしゃっていました。

水越氏: 防護柵の足元部分のすき間について、劣化を抑えるためにも雨水や越波した海水の排水を阻害しないように広めに施工することを提案したことがありました。ですが、LIXILさんからの10mm開けるという提案には、想定しうる利用形態について検討した結果であることをお聞きしました。
結果として、LIXILさん提案の設置位置は、利用者によるフェンスのずれ落ちの防止や結束バンドへの負荷低減がされたものでした。手すりの結束バンドも不要となったことで、多くの利用者が喜んでいるというアンケート結果を見ると嬉しくなりますね。

LIXIL担当者: 施工については事前に、横須賀市、施工業者、LIXILの三者による施工確認会を実施し、結束バンドの結び目の向きなどの施工上の細かな点について意見交換を行いました。そこでの検討結果が実際の施工に反映できたことは良かったと思います。

水越氏: 2021年の緊急措置を講じてから3年後のまさに交換・改修のタイミングで、LIXILさんから今回のご提案をいただきました。結果良いものが設置でき、コスト削減にもなりました。
国土交通省では「民間提案型官民連携モデリング事業」を実施しています。これは民間提案に基づく新たな官民連携手法を、民間事業者と国土交通省が一体となって、地方公共団体に広げ、課題解決に応えていくものだと思っています。LIXILさんからのご提案は、まさにこうした流れのひとつだと思います。

高橋氏: 本当にありがたいというのが正直な気持ちです。横須賀市は寄贈商品で現場の補修と改善を実施でき、LIXILさんは公共への施工事例を示すことができました。お互いに良いとこ取りができたと思っています。宅地境界に使うフェンスを防護柵に付けるという発想は、我々にはまったくありませんでした。フェンスは支柱込みでしか販売されないものだと思い込んでいましたし。(笑)

水越則之氏(横須賀市港湾部 港湾管理課 港湾管理係 係長)
野比海岸の北下浦海岸通り駐車場に隣接した遊歩道にピンクのアート作品を並べたことで駐車場の利用が増え、新しい観光スポットになった(写真提供:横須賀市)

高橋氏: 2022年に、経営企画部に民官連携推進担当課ができ、ハード、ソフトに限らず、民官が連携してオープンに進めていきたいという機運が生まれています。 昨年、あまり使われていない駐車場の活用法を募集したところ、アート作品を取り入れた面白いアイデアが提案されて、新たな観光スポットにつながったという事例もあります。今後の課題は、地域との連携を深めることで地元のにぎわいを創出し、経済効果につなげていくことだと思います。 他の防護柵については、LIXILさんと共に長期で様子を見ながら考えていきたいと思っています。同じ悩みを持つ自治体から見学の希望がありましたら、ぜひ現場をご案内して、詳細をご説明させていただきたいと思っています。

LIXIL担当者:我々としても、台風の影響なども見てみたいので、まずはこれから1年間しっかり観察していきたいと思っています。

高橋氏: 海を仕事で使う方、観光で海に訪れる方、海辺を散歩される方などさまざまいらっしゃいますが、海は国民の財産であり、特定の誰かに帰属するものではありません。冒頭でもお伝えしましたが、横須賀市では、まちづくりのグランドデザインのひとつとして「海洋都市」を掲げており、より海に親しめるようにしたいと思っています。人が入る場所では安全がなにより大切です。皆さんの要望と安全のバランスを考えながらこれからも日々努めて参ります。

左から、横須賀市港湾部の佐々木氏、高橋氏、水越氏

横須賀市 平成地区8護岸

所在地 平成地区8護岸(横須賀市平成町3丁目28-1地先)
発注者 横須賀市 港湾部
施工者 田中土木 有限会社
主用途 防護柵(すり抜け防止対策)
工期 2024年12月16日~12月20日
LIXIL寄贈商品 ハイグリッドフェンス N8
樹脂製小口キャップ
ステンレス製結束バンド
手動結束工具

取材・文/フォンテルノ、人物撮影/シヲバラタク、施工写真/株式会社Across360 加々美義人(特記以外)

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公開日:2025年03月17日