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SEKKEI EXPO
『建築の本質から考える住宅設計の新視点』
株式会社COMODO建築工房
代表取締役・一級建築士
飯田亮 氏
プロフィール
Livearth 代表
OhashiArchitects 代表
大橋利紀 氏
プロフィール
PROGRAM 1
建築に「美」「居心地」「愛」を
株式会社COMODO建築工房 代表取締役・一級建築士 飯田亮 氏
10年後が完成形。熟成され土着的に
工務店には風景に対する責任がある
「建築に美を、建築に居心地を、そして建築に愛を。」を建築理念として掲げて活動している。13期目を迎えるCOMODO建築工房では栃木県内で設計・施工を行っているが、そのほかにCOMODO建築設計室として設計事業を、COMODO☆LABOとして工務店のブランディング・プロモーション支援事業を全国的に手がけている。
2011年に母親のためにつくった住宅「くの字の平屋」が自分の建築理念の原点となり、同時に“出世作”となった。これが評価されなかったら「一級建築士を返納する」くらいの覚悟で、何よりも魂を込め、愛を持ってつくった。高さを抑えたプロポーション、内と外をつなぎ庭の豊かな緑を美しく切り取る気持ちのいい開口、無垢の木をはじめとする自然素材の活用など、今も変わらない設計メソッドによって完成させた。
ここから、くの字の平屋に強く共鳴してくれた施主の「VermeerRay(フェルメールレイ)」(2014年)など、住まいや暮らしへの価値観が重なる顧客との家づくりが安定的に続くようになった。くの字の平屋もフェルメールレイも“10年後の姿が完成形となる”というイメージで設計した。いずれも実際に10年の時を経たときに見てみると、熟成された土着的な、つくったときよりもさらに良い建築になったと思う。
2011年に母親のためにつくった住宅「くの字の平屋」が自分の建築理念の原点となり、同時に“出世作”となった。これが評価されなかったら「一級建築士を返納する」くらいの覚悟で、何よりも魂を込め、愛を持ってつくった。高さを抑えたプロポーション、内と外をつなぎ庭の豊かな緑を美しく切り取る気持ちのいい開口、無垢の木をはじめとする自然素材の活用など、今も変わらない設計メソッドによって完成させた。
ここから、くの字の平屋に強く共鳴してくれた施主の「VermeerRay(フェルメールレイ)」(2014年)など、住まいや暮らしへの価値観が重なる顧客との家づくりが安定的に続くようになった。くの字の平屋もフェルメールレイも“10年後の姿が完成形となる”というイメージで設計した。いずれも実際に10年の時を経たときに見てみると、熟成された土着的な、つくったときよりもさらに良い建築になったと思う。
3つのキーポイント
COMODOの設計では、より良い建築を実現するために3つのキーポイントを設けている。まず、ひとつめは「心地よさを生む」こと。空間に心地よさを生むために大事なのが「足るを知る」という考え方だ。心地よさを生み出すために“足し算”は要らない。余計な装飾を施したり、むやみに素材に着色したりする必要はない。肝心なのはバランス。心地よさは何かひとつがよければいいというものではない。点と点を結ぶ線やその線によって形づくられる面、細かく言えば壁と開口の大きさのバランスやそれぞれの縦横比、明暗差(陰影)、天井の高低差など多岐にわたる要素が織りなされて生まれる。
2つめは「風景をつくる」ということ。施主にとっての家は、他人からすれば「ただの風景」になるわけで、つくり手として風景を損なうような建築はつくりたくない。むしろ、より良い風景になるような建築をつくりたい。もちろん住宅の中から見たときは、近所の家の庭の緑にしても遠くに見える山々の稜線にしても外部の豊かな景色を“おすそ分け”してもらっている。住宅は敷地も含めて、それのみで完結しているのではなく常に街や地域と“呼応”している。
1棟の住宅に地域の風景に対する影響力があるということは、見方を変えると工務店や設計者は地域の風景や街並みの景観形成に対して何らかの責任を負っているということになる。ただ良い家をつくればいいのではなく、自己主張をし過ぎず、周辺環境になじみ、地域の風景に少しでも良い影響を及ぼすような家にしたいと、施主と共に取り組んでいる。
3つめは「デザインと性能」だ。以前は、ひたすら「建築の美しさ」だけに向き合ってきたが、近年は工務店としてしっかりと性能(耐震・断熱等)を確保することにも取り組んでおり、それを反映した建築となっている。
性能向上に取り組んでみると、特に断熱・気密性能は暖かさや涼しさ、空気質といった快適さに直結しており、それは自分がずっと大切にしている心地よさを生む重要なファクターであることがよく分かった。ずっとデザイン的なアプローチから目に見えない心地よさを追求してきたが、今は数値によって可視化される性能によって担保される心地よさも重視している。
一方で自分のアイデンティティとも言えるデザインは変わらずに大切なもの。自分なりにデザインと性能の高いレベルでの融合を目指していきたい。
2つめは「風景をつくる」ということ。施主にとっての家は、他人からすれば「ただの風景」になるわけで、つくり手として風景を損なうような建築はつくりたくない。むしろ、より良い風景になるような建築をつくりたい。もちろん住宅の中から見たときは、近所の家の庭の緑にしても遠くに見える山々の稜線にしても外部の豊かな景色を“おすそ分け”してもらっている。住宅は敷地も含めて、それのみで完結しているのではなく常に街や地域と“呼応”している。
1棟の住宅に地域の風景に対する影響力があるということは、見方を変えると工務店や設計者は地域の風景や街並みの景観形成に対して何らかの責任を負っているということになる。ただ良い家をつくればいいのではなく、自己主張をし過ぎず、周辺環境になじみ、地域の風景に少しでも良い影響を及ぼすような家にしたいと、施主と共に取り組んでいる。
3つめは「デザインと性能」だ。以前は、ひたすら「建築の美しさ」だけに向き合ってきたが、近年は工務店としてしっかりと性能(耐震・断熱等)を確保することにも取り組んでおり、それを反映した建築となっている。
性能向上に取り組んでみると、特に断熱・気密性能は暖かさや涼しさ、空気質といった快適さに直結しており、それは自分がずっと大切にしている心地よさを生む重要なファクターであることがよく分かった。ずっとデザイン的なアプローチから目に見えない心地よさを追求してきたが、今は数値によって可視化される性能によって担保される心地よさも重視している。
一方で自分のアイデンティティとも言えるデザインは変わらずに大切なもの。自分なりにデザインと性能の高いレベルでの融合を目指していきたい。
エゴを抑制する
工務店にとっては建築理念を、経営とバランスさせることも重要だ。経営感覚があることは、自己都合・自己表現、つくり手のエゴに走りがちな建築を抑制し、「住まい手のため」、「地域の風景のため」という利他を意識した良質な建築を生み出すことにもつながる。
価格高騰が深刻化する市場において、「意匠・性能・コスト」のベストバランスを見いだすコントロール力を備えていることは、工務店の強みとなるはずだ。
価格高騰が深刻化する市場において、「意匠・性能・コスト」のベストバランスを見いだすコントロール力を備えていることは、工務店の強みとなるはずだ。
工務店の顧客層が確実に変化
「ひと」が決め手となり、明暗分ける
建築や人に対して興味を持ち、“愛”を持つことがより良い家づくりと暮らしづくりにつながる。「ひと対ひと」の感性や価値観の重なり、響き合いを建築に反映させていきたい
「この人と一緒に家をつくりたい」と施主に感じてほしいし、自分も施主に対してそう感じたい。そう思えない、価値観があわない顧客の依頼は断ることもある。施主との関係は、引き渡し後も生涯にわたって続く。お互いに人間として興味を持ち、好きになれることは、実はとても重要なことだ。
施主に興味を持つからこそ、ヒアリングでは、これまでどんな家で育ち、どんな暮らしをしてきたかといった生い立ちや歴史といったパーソナルが部分をひも解きつつ、おじいちゃんおばあちゃんになったときに、どんな時間を過ごしたいかといったことなどを聴く。どんな家が欲しいかではなく、施主本人のことを理解することが良い建築と、結果的に施主(家族)の家とそこでの暮らしに対する高い満足度につながる。
コロナ禍、そしてその後の建材価格高騰、物価上昇により、当社も含めて工務店の実態を見れば、受注価格は4000万円、5000万円と上がっている。コロナ前は3000万円ぐらいでつくれることもあった。が、人々の年収は住宅価格ほど上がっていない。つまり、当社もそうだが、実は工務店の客層(世帯年収)は確実に変化しているはずだ。
その時、自分は今のターゲット層に見合った工務店経営者、設計者であるかということを強く意識している。前述のように、建築や家づくりにおいて何よりも“ひと”を大切にしているからだ。所作、服装、言葉遣い、SNSによる情報発信などにも気を配っている。そうした階層の人たちほど、人のことをよく見ていて、「人が決め手になる」と自分は見ている。
まずは建築や顧客に対して興味を持つことが必要だ。興味の先には“愛”が生まれる。これから間違いなく“人の時代”になる。“建築愛”、“顧客愛”、“スタッフ愛”が工務店の明暗を分けると本気で思っている。
施主に興味を持つからこそ、ヒアリングでは、これまでどんな家で育ち、どんな暮らしをしてきたかといった生い立ちや歴史といったパーソナルが部分をひも解きつつ、おじいちゃんおばあちゃんになったときに、どんな時間を過ごしたいかといったことなどを聴く。どんな家が欲しいかではなく、施主本人のことを理解することが良い建築と、結果的に施主(家族)の家とそこでの暮らしに対する高い満足度につながる。
コロナ禍、そしてその後の建材価格高騰、物価上昇により、当社も含めて工務店の実態を見れば、受注価格は4000万円、5000万円と上がっている。コロナ前は3000万円ぐらいでつくれることもあった。が、人々の年収は住宅価格ほど上がっていない。つまり、当社もそうだが、実は工務店の客層(世帯年収)は確実に変化しているはずだ。
その時、自分は今のターゲット層に見合った工務店経営者、設計者であるかということを強く意識している。前述のように、建築や家づくりにおいて何よりも“ひと”を大切にしているからだ。所作、服装、言葉遣い、SNSによる情報発信などにも気を配っている。そうした階層の人たちほど、人のことをよく見ていて、「人が決め手になる」と自分は見ている。
まずは建築や顧客に対して興味を持つことが必要だ。興味の先には“愛”が生まれる。これから間違いなく“人の時代”になる。“建築愛”、“顧客愛”、“スタッフ愛”が工務店の明暗を分けると本気で思っている。
PROGRAM 2
Livearth の考える 建築の主題から始まる設計法とは?
Livearth 代表
OhashiArchitects 代表
大橋利紀 氏
意匠×デザイン×情緒
住宅設計の論理を体系化
構造的思考でチーム設計を洗練する
「『(顧客は)何のために注文住宅を建てるのか』『自社の存在価値とは何か』。こうした問いに真摯に向き合い続け、同社の設計と経営をつなぐ思想を核としてきた」と話すのは、工務店・リヴアースの代表の大橋利紀氏。同社は住宅市場の大きな変化を見据えたいま、「建築の本質から考える住宅設計」という独自の視点を打ち出している。また、こうした独自の設計メソッドをチームで進めるため、大橋氏は「感覚の言語化」と「設計の標準ルール化」に力を入れている。
「包の家」南庭と内外をつなぐ土間
建築的主題を決める
リヴアースの設計プロセスは、以下の2つのステップで構成されている。@建築的主題を決める、A建築的要素の関係性を決める。
建築的主題を決定する3つの条件は、「地所」「人」「物語」であり、これらが建物の個性を大きく左右する。
「地所」とは、敷地の特性。太陽の動き、隣棟建物との距離、風景の抜け、地域性、文化など。
設計者がその土地に立った時の「意識の向く方向」が、建築的主題に大きく関わる。その読み取りには、観念的・感性的な部分だけでなく、物理的な温熱要素も多く含まれ、どちらかに完全に振り切ることはなく、常に行ったり来たりしながら総合的に解いていく。
「人」とは、家族それぞれの関係性、パーソナルスペースの大きさや距離、生活様式など。例えば明るい家を好むか、陰影のある暗い家を好むかも、住まう人の感性が大きく影響し、家の個性に反映される。
「物語」とは、工務店・設計事務所としての「やることやらないこと」を含め、設計に関する独自の美意識や判断基準、哲学をあらわす。
建築的主題を決定する3つの条件は、「地所」「人」「物語」であり、これらが建物の個性を大きく左右する。
「地所」とは、敷地の特性。太陽の動き、隣棟建物との距離、風景の抜け、地域性、文化など。
設計者がその土地に立った時の「意識の向く方向」が、建築的主題に大きく関わる。その読み取りには、観念的・感性的な部分だけでなく、物理的な温熱要素も多く含まれ、どちらかに完全に振り切ることはなく、常に行ったり来たりしながら総合的に解いていく。
「人」とは、家族それぞれの関係性、パーソナルスペースの大きさや距離、生活様式など。例えば明るい家を好むか、陰影のある暗い家を好むかも、住まう人の感性が大きく影響し、家の個性に反映される。
「物語」とは、工務店・設計事務所としての「やることやらないこと」を含め、設計に関する独自の美意識や判断基準、哲学をあらわす。
1枚目:南面道路から眺める建物外観。大開口の側に庭とマウンドで奥行きを作り、佇まいを整える
2枚目:東側から眺める南庭と土間。庇下のゆったり幅広の土間がもう一つの居場所になる
3枚目:室内側からみた南面。玄関の位置も曖昧に設け、複数の出入り口の選択肢を持たせる
2枚目:東側から眺める南庭と土間。庇下のゆったり幅広の土間がもう一つの居場所になる
3枚目:室内側からみた南面。玄関の位置も曖昧に設け、複数の出入り口の選択肢を持たせる
建築的要素の関係性を決める
建築的主題が定まったあとは、建築の根本要素「窓」「壁」「空間」「素材」を、互いの関係性のなかでどう構成するかを検討していく。
「窓」は、単に光や風を取り入れるだけでなく、「心を動かす風景」を切り取る装置として設計する。大きければ良いのではなく、居場所に対する目線や高さ・大きさとの関係性が重要。窓辺と居場所が重なることで、空間に物語性や居心地の良さが生まれる。
「壁」は、窓と対になる存在として、光と影、開放と包まれ感を制御する。天井まで窓を伸ばさず、垂れ壁や腰壁を設けることで、風景との対比を演出し、陰影を楽しむ空間をつくる。
「空間」は、窓や壁と関わりながら、高さ方向や間合いによって空間の質が決まる。三次元空間における寸法比や、視線の抜け、周囲との関係性のバランスも重要である。
「素材」は、経年変化により味わいが深まる自然素材(無垢材・左官・石など)を用いることで、陰影や光の変化に富んだ豊かな空間をつくる。フェイク素材では得られない、リアルな時間軸の価値を重視する。
こうした要素を互いに整合させることで、「駐車場配置」「庭とのつながり」「屋根の架け方」など具体設計に落とし込まれていく。
「窓」は、単に光や風を取り入れるだけでなく、「心を動かす風景」を切り取る装置として設計する。大きければ良いのではなく、居場所に対する目線や高さ・大きさとの関係性が重要。窓辺と居場所が重なることで、空間に物語性や居心地の良さが生まれる。
「壁」は、窓と対になる存在として、光と影、開放と包まれ感を制御する。天井まで窓を伸ばさず、垂れ壁や腰壁を設けることで、風景との対比を演出し、陰影を楽しむ空間をつくる。
「空間」は、窓や壁と関わりながら、高さ方向や間合いによって空間の質が決まる。三次元空間における寸法比や、視線の抜け、周囲との関係性のバランスも重要である。
「素材」は、経年変化により味わいが深まる自然素材(無垢材・左官・石など)を用いることで、陰影や光の変化に富んだ豊かな空間をつくる。フェイク素材では得られない、リアルな時間軸の価値を重視する。
こうした要素を互いに整合させることで、「駐車場配置」「庭とのつながり」「屋根の架け方」など具体設計に落とし込まれていく。
1枚目:東から眺める1階内観。畳リビングと土間を柔軟に使いこなし、基本的に生活を1階で完結できる
2枚目:畳リビングから眺める南面。大開口窓先の庭が奥行きある風景をつくり、街と緩やかにつながる
3枚目:西面キッチン窓。居場所の目線に合わせた高さ大きさにより、物語性と心地よさを生み出す
2枚目:畳リビングから眺める南面。大開口窓先の庭が奥行きある風景をつくり、街と緩やかにつながる
3枚目:西面キッチン窓。居場所の目線に合わせた高さ大きさにより、物語性と心地よさを生み出す
「包の家」つつみのいえ
ここからはリヴアースの設計施工事例、岐阜県岐阜市の「包の家」をもとに、設計の流れを見ていく。
まず建築的主題を定める段階。「包の家」は分譲地の一角にある56坪の敷地に建つ、建物面積17.73坪(ロフト含め25坪)の小規模住宅。将来的に周囲に建物が建つことを見越し、風景の抜けが確保できる南と西の2方向に開く構成とした。敷地が50?60センチ高いため、南側にマウンドを設けて庭とアプローチを一体に計画。南面の大開口窓から、庭越しに風景を上質に切り取れるよう工夫した。駐車場は北西に配置し、スロープで土間デッキ、室内土間へと連続的につなぐ動線とした。境界には塀を設けず、マウンドと植栽で穏やかに視線を遮っている。
ご家族はご夫婦と3人のお子様の5人家族で、一番下のお子様が車椅子を利用されている。ご家族は個室を重視せず、常に家族の気配を感じながら暮らせる住まいを希望されていた。そこで1階に茶の間・リビング・ダイニング・寝室を兼ねた共有空間を集約。玄関の位置も曖昧に設け、複数の出入り口の選択肢を持たせた。さらに用途を限定しない空間づくりを意図し、土間空間には収納や昇降式ベッド、遊び場など多様な活用を想定。南面の土間デッキから庭に出られる構成とし、車椅子のお子様も兄弟と自然につながれるよう工夫した。
建築の根本要素である「窓・壁・空間・素材」の構成も、この設計思想と呼応している。
窓は開口方向を南側のリビング大開口と西側のキッチン腰窓の2か所に絞り、光や風を取り込むと同時に、居場所ごとの目線に合わせた高さとサイズで設計。窓辺と居場所が重なることで、物語性と心地よさを生み出している。
壁は天井まで窓を伸ばさず、上部に垂れ壁を残すことで包まれ感を演出。窓から見える風景との対比を際立たせ、単に明るいだけでない、陰影のある空間を目指した。
空間構成は、1階の畳リビングと土間を中心に、キッチン上部の吹き抜けや2階ロフトへと緩やかにつながり、どこにいても家族の気配が感じられる一体的な構成となっている。
素材は、質感や経年変化の味わいを重視し、南面の大開口には木製サッシ窓を採用。空間全体に深みと陰影を与えている。
まず建築的主題を定める段階。「包の家」は分譲地の一角にある56坪の敷地に建つ、建物面積17.73坪(ロフト含め25坪)の小規模住宅。将来的に周囲に建物が建つことを見越し、風景の抜けが確保できる南と西の2方向に開く構成とした。敷地が50?60センチ高いため、南側にマウンドを設けて庭とアプローチを一体に計画。南面の大開口窓から、庭越しに風景を上質に切り取れるよう工夫した。駐車場は北西に配置し、スロープで土間デッキ、室内土間へと連続的につなぐ動線とした。境界には塀を設けず、マウンドと植栽で穏やかに視線を遮っている。
ご家族はご夫婦と3人のお子様の5人家族で、一番下のお子様が車椅子を利用されている。ご家族は個室を重視せず、常に家族の気配を感じながら暮らせる住まいを希望されていた。そこで1階に茶の間・リビング・ダイニング・寝室を兼ねた共有空間を集約。玄関の位置も曖昧に設け、複数の出入り口の選択肢を持たせた。さらに用途を限定しない空間づくりを意図し、土間空間には収納や昇降式ベッド、遊び場など多様な活用を想定。南面の土間デッキから庭に出られる構成とし、車椅子のお子様も兄弟と自然につながれるよう工夫した。
建築の根本要素である「窓・壁・空間・素材」の構成も、この設計思想と呼応している。
窓は開口方向を南側のリビング大開口と西側のキッチン腰窓の2か所に絞り、光や風を取り込むと同時に、居場所ごとの目線に合わせた高さとサイズで設計。窓辺と居場所が重なることで、物語性と心地よさを生み出している。
壁は天井まで窓を伸ばさず、上部に垂れ壁を残すことで包まれ感を演出。窓から見える風景との対比を際立たせ、単に明るいだけでない、陰影のある空間を目指した。
空間構成は、1階の畳リビングと土間を中心に、キッチン上部の吹き抜けや2階ロフトへと緩やかにつながり、どこにいても家族の気配が感じられる一体的な構成となっている。
素材は、質感や経年変化の味わいを重視し、南面の大開口には木製サッシ窓を採用。空間全体に深みと陰影を与えている。
1枚目:南側から眺める西面キッチン。上部が吹き抜けになり、2階ロフトとつながる
2枚目:2階南側から眺めるロフト階段。西側のキッチン、東側の土間の吹き抜けでそれぞれ繋がる
3枚目:2階北側から眺めるロフト空間。吹き抜けを介して1階と緩やかにつながり、どこにいても家族の気配が感じられる一体的空間構成とする
4枚目:東側土間スペース。吹き抜けの勾配天井が空間にゆとりと開放感をもたらす
5枚目:南面した室内土間。高低差を活かして様々な用途に活用できる
6枚目:西側から眺める畳スペース。東・北面の大きな壁、窓下の垂れ壁があることで心地よく囲まれた居場所が生まれる
2枚目:2階南側から眺めるロフト階段。西側のキッチン、東側の土間の吹き抜けでそれぞれ繋がる
3枚目:2階北側から眺めるロフト空間。吹き抜けを介して1階と緩やかにつながり、どこにいても家族の気配が感じられる一体的空間構成とする
4枚目:東側土間スペース。吹き抜けの勾配天井が空間にゆとりと開放感をもたらす
5枚目:南面した室内土間。高低差を活かして様々な用途に活用できる
6枚目:西側から眺める畳スペース。東・北面の大きな壁、窓下の垂れ壁があることで心地よく囲まれた居場所が生まれる
1枚目:「包の家」 配置図
2枚目:Livearthの設計の思考プロセス
3枚目:性能・仕様
2枚目:Livearthの設計の思考プロセス
3枚目:性能・仕様
変化市場を拓くのは独自の美意識と顧客との共鳴
住宅性能もデザインも均質化し、価格も高騰する今、工務店が選ばれる決め手は「独自の美意識」だ。明確なトレードオフを示すことで、会社の哲学が醸成され、それに共鳴できる顧客との接点を増やすことができる企業が次の市場を拓く
リヴアースは、激動する住宅市場において選ばれ続ける存在であるために、従来型の家づくりとは異なる視点からアプローチを続けている。同社が注視するのは、注文住宅市場を取り巻く4つの構造変化だ。
まず1つ目は、ハイパーグローバリゼーションの終焉を示す原材料費の高騰。建材価格は近年大きく上昇しており、価格競争に依存した設計・施工モデルはもはや成立しにくい。
2つ目は、中間層の多層化。かつては一枚岩であった中間所得層に格差が生じ、注文住宅は「誰もが手にするもの」から「限られた層のための特別な選択肢」へと変化している。
3つ目は、法改正による住宅性能の底上げ。耐震等級3や断熱等級6といった高性能住宅が標準化しつつある今、性能面での差別化は難しくなっている。
4つ目は、デザインの同質化だ。FCやVCなどによるノウハウの普及で、似通った住宅が増え、顧客にとっての選択肢の差異が見えにくくなっている。
こうした状況下でリヴアースが大切にするのが、「独自の美意識」に基づいた設計思想だ。その核心にあるのは、他社には模倣しにくい「トレードオフのある選択」を明確に打ち出すことだ。
たとえば「温熱性や耐震性が低い家は建てない」という方針は当然で、差別化にはならない。一方、「庭のない家は設計しない」といった方針であれば、それを望まない顧客は自然に除外される。明確なトレードオフの積み重ねが会社の哲学となり、それがウェブサイトやSNSの言葉選びや写真表現を通じて自然と伝わる。そこに共感した人々がファンとなってくれる。「この領域を、私たちはこれからさらに深めていきたい」と、大橋氏は語る。
まず1つ目は、ハイパーグローバリゼーションの終焉を示す原材料費の高騰。建材価格は近年大きく上昇しており、価格競争に依存した設計・施工モデルはもはや成立しにくい。
2つ目は、中間層の多層化。かつては一枚岩であった中間所得層に格差が生じ、注文住宅は「誰もが手にするもの」から「限られた層のための特別な選択肢」へと変化している。
3つ目は、法改正による住宅性能の底上げ。耐震等級3や断熱等級6といった高性能住宅が標準化しつつある今、性能面での差別化は難しくなっている。
4つ目は、デザインの同質化だ。FCやVCなどによるノウハウの普及で、似通った住宅が増え、顧客にとっての選択肢の差異が見えにくくなっている。
こうした状況下でリヴアースが大切にするのが、「独自の美意識」に基づいた設計思想だ。その核心にあるのは、他社には模倣しにくい「トレードオフのある選択」を明確に打ち出すことだ。
たとえば「温熱性や耐震性が低い家は建てない」という方針は当然で、差別化にはならない。一方、「庭のない家は設計しない」といった方針であれば、それを望まない顧客は自然に除外される。明確なトレードオフの積み重ねが会社の哲学となり、それがウェブサイトやSNSの言葉選びや写真表現を通じて自然と伝わる。そこに共感した人々がファンとなってくれる。「この領域を、私たちはこれからさらに深めていきたい」と、大橋氏は語る。
1枚目:「包の家」矩計図
2枚目:南から眺める土間と畳リビング。階段を上がるとロフトにつながる
2枚目:南から眺める土間と畳リビング。階段を上がるとロフトにつながる
「新建ハウジング2025年6月30日発行/あたらしい工務店の教科書」より転載
飯田亮 氏
株式会社COMODO建築工房 代表取締役・一級建築士
COMODO建築工房・COMODO建築設計室代表、一級建築士。1979年に山形県に生まれ栃木県で育つ、45歳。栃木県内の地域工務店での修業を経て2007年に設計事務所である住空間設計LIVES(現:COMODO建築設計室)を設立。2012年に工務店としてCOMODO建築工房設立。KKB(工務店の工務店による勉強会)などでも活動。
大橋利紀 氏
Livearth 代表 OhashiArchitects 代表
1947年創業。リフォーム会社を経て、2012年より新築事業部を創設。地域の風土を生かした普遍的なデザインと「心地よさ」を見える化する高性能を兼ね備えた家づくりを理念として岐阜・愛知・三重・滋賀を商圏に家づくりを手掛ける工務店に成長。2018年に住宅ブランド『Livearth(リヴアース)』を設立。2019年本質改善型リフォーム独立ブランド「リヴ・リノ」設立。2020年設計事務所:『大橋利紀建築設計室』を設立。

