INAXライブミュージアム10周年特別展「つくるガウディ」

未完のガウディ建築<Vol.1>
コロニア・グエル教会を読み解く

(『コンフォルト』2016 December No.153掲載)

コロニア・グエル教会の「逆さ吊り構造実験」の写真
ガウディは紐に想定荷重の砂袋の錘を下げ、あらわれた曲線(懸垂線)によって教会の構造・デザインを構想した。これは実験写真のうちの一枚。写真の上下を反転させ、これらの曲線からドームや塔がそびえる姿をデッサンした。実験で釣り合った紐の形を上下さかさまにすると、引っ張り合っていた力がすべて圧縮に変わり、レンガ積のような組積造では安定した構造体になると考えた。
©Catedra Gaudi

INAXライブミュージアム10周年の特別展では、建築家、左官職人、タイル職人の3人が、ガウディ建築の未完部分の制作に挑戦。
独創的な構造と装飾を持つガウディ建築を、どう読んで、どうつくるのか。
バルセロナと東京での打ち合わせを重ね、いよいよ常滑で、制作現場の公開と展示が始まる。
(※展覧会は終了しています。)

土とタイルの魅力を公開制作

愛知県常滑とこなめ市のINAXライブミュージアムは2006年にグランドオープンし、これまで土とやきもの、タイルを中心に、常設と企画展、ワークショップなどで、世界中の多様な文化と、いきいきとしたものづくりのライブ感を伝えてきた。
10周年を迎えた2016年、11月5日から特別展「つくるガウディ」が始まっている。二つの催しのうち、「土・どろんこ館」では建築家・日置拓人ひきたくとさんと左官職人・久住有生くすみなおきさん、タイル職人・白石あまねさんによる公開制作「つくるガウディ──塗る、張る、飾る!」がスタート。訪れる人たちはこれから4カ月のあいだに、徐々に進む制作過程を実際に目にすることができる。3人がつくるのは、石や煉瓦、タイル、ガラスなどを使ったガウディ建築の装飾から着想を得て、コロニア・グエル教会のフォルムのうえに表現した空間だ。
おもしろいのはコロニア・グエル教会は地下部分が建設されたところで1914年に中断され、未完であることだ。 その後、現存する地下は教会聖堂として使われ、サグラダ・ファミリアの一部など世界遺産に登録された7つのガウディ建築のうちの一つとなった。地上部分は未完であるがゆえに、これまで多くの研究者を惹きつけ、残された数少ないスケッチや写真資料から、デザインや仕上げなどが推測されてきた。
今回は、すでに存在しているガウディ建築のデザインや仕上げの再現ではなく、幻の教会のかたちをモデルとして、ガウディにインスパイアされつつ、現代の職人が創造の翼をはばたかせることになる。そのために3人は6月にスペイン・バルセロナを訪れた。40年間バルセロナに在住し、ガウディ建築を実測・研究し続けている建築学博士・田中裕也さんの案内でコロニア・グエル教会地下聖堂をはじめ、ほとんどの作品を訪れ、学び、体感してきた。

ガウディが描いた初期のスケッチ
アントニオ・ガウディ(1852-1926)が「逆さ吊り構造実験」からつくった模型や資料は戦火で失われ、スケッチが3、4枚残っているのみ。最終案では大きな塔が1本になっている。©Catedra Gaudi
コロニア・グエル教会地下聖堂
現存する地下聖堂の中央部。傾けた石柱とカタルニア・ヴォールトのアーチが聖堂をかたちづくる。
バルセロナ在住のガウディ研究家、田中裕也さん(実測家・建築学博士)の情熱的なレクチャーを受けながら多くのガウディ建築を見学した。左から久住有生さん(左官職人)、日置拓人さん(建築家)、白石普さん(タイル職人)、田中裕也さん。田中さんは今回の企画展を監修し、実測図の展示と講演を行う。
半地下部分の外観。 3点写真/森本徹
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