海外トイレ事情 22

スコットランド、エジンバラ ── 古都とパブと青い照明

角尾舞(PR/ライター)

ロンドンやミラノほど華もなければ、ガーナやエチオピアのようなインパクトもない「エジンバラのトイレ」。読み始めてくれたみなさん、ありがとうございます。やや地味なイメージをもたれがちなエジンバラですが、そんなことありません。街全体が世界遺産で、旧市街と新市街が交じり合う、本当に美しい街並みです。

エジンバラの街の様子

エジンバラの街の様子 ©Philip Solovjov

今回の記事の写真は、友人の写真家Philip Solovjovに協力をしてもらいました。普段は主に風景(http://www.philipsolovjov.com)を撮っています。トイレでなく。

そんなエジンバラのトイレ事情、今回のテーマは「酒場と性とドラッグ」です。雰囲気を出していくために、まずは、ここエジンバラを舞台にしたこの名作『Trainspotting』の映画のオフィシャル・トレイラーを観ましょう。ドラッグ中毒の少年たちによる、友情と犯罪と裏切りの物語です。スコットランドのトイレを語るうえでまず絶対に外せませんし、映像を見ずともBGMとして聴きながらお読みいただけると最高です。

このトレイラーは2016年に公開された第2作目の『T2』ですが、ご覧の通り、メイン・ビジュアルはトイレの個室です(ちなみに、第1作目(1996)の「スコットランドで一番汚いトイレ」のシーンも有名です。『TIME』誌による「世界で最も有名なトイレ10選」に選ばれているほど!)。

エジンバラはジンバブエじゃない

さて、それでは「で、エジンバラってどこにあるの?」という、今さら聞きにくいだろう質問に答えましょう。「エジンバラに引っ越す」と友人に伝えたときに「エジンバラとジンバブエって違う?」と聞かれましたが、大陸から違います。

エジンバラは、スコットランドの首都です。イギリスの正式名である「グレートブリテン及び北アイルランド連合王国」の一部であるスコットランドは、グレートブリテン島の北部の約1/3を占めます。ロンドンからエジンバラまでは、ざっくり東京から青森くらいの距離感です。

スコットランドの地図

スコットランドとイングランドでは、政府も法律も教育制度も違います。たとえば、ロンドンでお酒は24時間買えますが、エジンバラでは夜10時までしか買えません。すっかり前置きが長くなりましたが、ここまでが、スコットランドの基本の話です。

パブはパブリック

スコットランドで最も重要な場所、それはパブと言っていいでしょう。コンビニも街灯もないような田舎でも、パブだけはあります。ちなみにこの「パブ」という単語は「パブリック・ハウス」の略です。そのためか、トイレのない小さなカフェでは「隣のパブの借りてね」と言われることがあります(地元の人は、ほかにもマクドナルドとイギリスの国民的コーヒー・チェーンCOSTAを公衆トイレとして扱っているようです)。

パブのような、多くの人が使うトイレの特徴は二つ。ひとつ目は、男性用の横一列につらなるトイレ(わたしは使ったことないのですが)。古めの大きいパブによくあります。女性用は、特に日本と大きな差はありません。

エジンバラ大学芸術学部の男性用のトイレ

エジンバラ大学芸術学部の男性用のトイレ ©Philip Solovjov

余談ですが、英語でトイレを表わす単語はかなりたくさんあります。そのなかで、この手の男性用の小便器は“urinal”と呼びます。ちなみに、スコットランドでよく使われるのは“loo”。普通にトイレを指す単語です。

カフェのトイレの看板

カフェのトイレの看板(撮影=筆者夫)

もうひとつは、このコンドーム自動販売機。パブでトイレに行けば男性用女性用関係なく、ほぼ必ず見つけられます。あまりに普通にあるので、人によってはぎょっとするかもしれません。でも、万国共通の「酔った勢い」を見てみぬふりをしないことは、病気予防も含めて重要なことでしょう。

Greenmantle Barに設置されている自動販売機

Greenmantle Barに設置されている自動販売機。Durexです。©Philip Solovjov

Stramash Live Music Barに設置されている自動販売機

Stramash Live Music Barに設置されている自動販売機。スコッチ・ウイスキー・フレーバー。(筆者撮影)

明るい家庭のトイレと青い公衆トイレ

一般家庭ではトイレとお風呂とが同じ空間にあることがほとんどです。そして、壁の色が明るい。

一般的なフラットのバスルーム

一般的なフラットのバスルーム ©Philip Solovjov

エジンバラでは築200年なんて家も珍しくありません。しかし、世界遺産に登録されているがゆえに、基本的に外観を変えることは不可能。そのため、みんな室内のリノベーションにはかなり気合を入れています。わたしの住んでいたフラットのトイレの壁も、最初の家はエメラルドグリーン、2軒目は鮮やかな水色でした。清潔感がありつつも爽やかな色がよいというイメージがあるようです。

最後に、この青い照明のトイレ。なぜ青いのか想像つきますか?

Edinburgh Central Library内のトイレ

Edinburgh Central Library内のトイレ。©Philip Solovjov

答えはなかなか衝撃的。「静脈を見にくくするため」だそうです。『Trainspotting』の世界だけでなく、イギリス全土でドラッグは大きな社会問題。個室での注射器の利用を避けさせることを目的として、このような青い照明がトイレに使われていることもあります(ちなみに、『T2』に出てくるナイトクラブのトイレも青いです)。

おわりにとおまけに

「スコットランドのトイレについて書いて下さい」と連絡をいただいたときには、どうしたものかと悩みましたが、書き始めたらとキリがないほど、トイレにまつわるエピソードがありました。エジンバラは最高の街なので、ぜひ遊びにいってみてください。治安、悪くないですよ。

マル島のパブのトイレのサイン

マル島のパブのトイレのサイン(撮影=筆者夫)

おまけに、ちょっとかわいいトイレのサイン。スコットランドの伝統的な衣装であるキルトは男性が身につけるものですが、サインにするととてもわかりにくいのでした。

角尾舞(つのお・まい)

デザイン誌を中心に執筆・編集するほか、PR企画や、大学研究室のアウトリーチを行なう。2010年、慶應義塾大学環境情報学部卒業。メーカー勤務を経て、12年から16年まで山中俊治のアシスタントを務める。その後、スコットランドに1年間滞在し、17年10月に帰国。美術館をめぐるのがライフワーク。コーヒーとシングル・モルトがすき。https://www.ocojo.jp/

Philip Solovjov(フィリップ・ソロヴィヨフ)

1985年ロシア、モスクワ生まれ。写真家。エストニアのTartu Art Collegeで写真を学び、現在はスコットランド、エジンバラを拠点に活動している。http://www.philipsolovjov.com