国内トイレ・サーベイ 8

「おもてなし」トイレのススメ

TSUBU(マンガ家、建築設計)

一口にパブリック・トイレといっても、利用者への開かれ方はさまざまだ。誰にとってもわかりやすくて入りやすいトイレもあれば、入り方にちょっとしたコツやルールがあるトイレもある。今回、浅草の2カ所のパブリック・トイレをサーベイし、その開かれ方の違いに着目した。

漫画

まず、浅草寺境内のトイレである。浅草寺は、毎日多くの観光客で賑わう、言わずと知れた日本有数の観光地である。その浅草寺の宝蔵門の東側に広々としたパブリック・トイレがある。ベンチ、自販機、派出所が近接しており、仲見世通りの喧騒を離れて安心して一息つくのに適した休憩エリアにもなっている。
トイレの外観は、瓦の切妻屋根がかかる落ち着いたテイストで、どこか田舎の駅舎をも思わせる。途切れることなく利用者が集まるが、十分な個室があるため、人の流れはスムーズで、女性用トイレにありがちな長い待機列もない。女性用の個室は25室もあり、通路も広く、サービスエリアのトイレに似た印象だ。女性用トイレを観察していると、広い通路でグループが談笑していたり、ゆったりとした手洗い場所で気兼ねなく化粧直しをしたり、さらには着物を身にまとった観光客が本気の「自撮り」をしている様子も目に入った。各個室には荷物掛けフックのほかに荷物置き場があり、バックパックや大量のお土産袋を抱えながらの利用にも配慮されているようだ。
こういったアクティビティが許容される秘訣は、その清潔さにもある。ハイサイドから十分な自然光、自然換気を確保し、臭気は床から排出している。そして清掃が頻繁に行なわれている。
立地ゆえ、世界中から老若男女多様な利用者が訪れる場所であり、多機能トイレも男女別に設置されていることから、「ユニバーサルデザイン」への配慮がうかがえる。それだけではなく、「トイレへの足の運びやすさ」「過ごしやすさ」「その後の待ち合わせのしやすさ」なども含めた一連の快適性こそが、真の「ユニバーサルデザイン」への配慮を極めた「おもてなし空間」であると感じた。

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