今月の業界NEWS トピックス

「消費増税分を建て主に還付策を」、住団連

 住宅生産団体連合会が「住宅に係る消費税の負担軽減の具体化についての要望」をまとめた。住宅の取得時に建て主が支払う消費税に関して、現行税率5%を超える部分について建て主に還元するよう求めたものだ。
 要望書は「長期にわたって使用する住宅に対して、消費税を取得時に一括で課税するのは過重かつ不合理」とし、「取得時に一括して負担する場合には、それを考慮して軽減措置を講ずる必要がある」と指摘した。
 樋口会長は「少なくとも100年持たせようという住宅が果たして消費財なのは大いに疑問」。和田勇副会長(積水ハウス会長兼CEO)は、「スマートハウスという成長分野のある住宅は、これからの内需の核ともなり得る。経済成長でこそ税収は伸びる」とした。
 生江隆之副会長(三井ホーム社長)は「今回の要望である還付はあくまで方法論。本筋は『(税率を)上げないでくれ』ということだ。国民にとって住宅とは何なのかという基本的な議論がなされないまま、単一に税率を上げるのはおかしい」と不満を表明した。矢野龍副会長(住友林業会長)は、「消費税の導入時(当初は3%)に、住宅税制の抜本的な議論がなされてこなかった」との認識を示した。

「中古住宅の環境整備が大事」、羽田・新国交相就任会見

 羽田雄一郎国土交通大臣は6月6日、専門紙記者団との就任会見に臨んだ。住宅消費税の負担軽減措置について、官邸内に設置した検討組織で政府としての対応策を協議していることを明らかにした。ただ、具体策については「国会審議や党における議論を踏まえながら、これらの措置について検討を行っていく」と述べるに留まり、結論を出す時期なども明らかにしなかった。また、住宅政策については、中古住宅売買やリフォームを「安心してできる状況を作っていかなければならない」とすると共に、中古住宅の活用と省エネなどの国の施策を反映させる形での新築支援を「両輪で進めていく」との意向を示した。
 国会で議論されている消費税増税法案では、住宅着工戸数への影響を緩和するために財政措置を含めた対応策を検討すると明記している。羽田国交大臣は、政府の「消費税の円滑かつ適正な転化等のための検討本部」で住宅消費税の対応策を議論しているとした。
 一方、約5800万戸の住宅ストックのうち空き家が13%を占める状態を指摘。「本年3月にまとめた『中古住宅・リフォームトータルプラン』を進めることが重要」との考えを示した。さらに、「国民の豊かな住生活を低価格で提供できるかというのが中古住宅のなかでの必要な事項だ」とした。若年層の住宅取得支援の必要性については、「経済状況が厳しい中で、特に子育て世代の人が新築を求めるのが難しいと感じている」との問題意識を提示。その上で、「若い子育て世代の人たちが安心して住めるような住宅に中古住宅を中心に考えていくことが必要」として、若年層が中古住宅を利用しやすい環境整備を視点におく必要性を述べた。

消費税増税の駆け込み需要で着工90万戸台に

 2013年度の住宅着工は90万戸台に回復へ――。国内の調査機関や金融機関が公表した12年度と13年度の住宅着工予測を住宅産業新聞社でまとめたところ、13年度の予測戸数を平均すると前年度比4.6%増の91万6000戸、12年度は同4.2%増の87万6000戸となり、予測上は回復傾向と見られていることがわかった。富国生命や浜銀総研などは、今年度前半が復興需要による景気押し上げ、来年度後半は消費税率引き上げ前の駆け込みで個人消費が大きく伸びるとの見方を示す。
 国内調査機関が5月から6月上旬までに公表した日本経済見通しのうち、今年度と来年度の住宅着工戸数の予測値を示した10機関について、住宅産業新聞で集計した。
 13年度の予測をみると、10機関中6機関が90万戸超えを予想するなど、強気の見方が多い。農林中金総研は102万戸、三菱UFJモルガンスタンレー証券は96万戸と見込んだ。また5機関が90万戸台だった。最も控えめだった三菱UFJリサーチ&コンサルでも86万4000戸としており、いずれも12年度より増加するとの読みだ。最短で14年4月に消費税が8%に引き上げられることを想定、増税前の駆け込み需要を見込んだ結果とみられる。
 12年度も10機関がすべてプラスを予想していた。ニッセイ基礎研は「11年度第3次補正予算で再開された住宅エコポイント制度は特に被災地に重点を置くものとなっているため、被災地における復興投資の押し上げに大きく寄与」とみる。

【記事配信元 住宅産業新聞

今月のフォーカスポイント

「消費増税」で大騒動

 この原稿の執筆時点で、消費税を最大10%まで引き上げるという法案の行方はまだわかっていません。ただし日本政府は赤字国債を発行し続けていますから、今回、仮に政権与党が採決に失敗したとしても増税が成されない限りこの問題は続きます。住宅供給者団体のトップである住団連は、「増税したとしても現行税制を超える分は還付すべきだ」との主張をまとめました。一方、第二次野田内閣で国交大臣に就任した羽田雄一郎氏は、「税制の問題は政府内部で議論している」と記者に回答し、住宅取得時の優遇策を採るかについて回答せず、むしろ「すでに余っている中古住宅をどうするか」を重視するとしました。政府と企業には、大きく深い溝があるようです。国内シンクタンクは早くも消費増税が決まった場合の「駆け込み需要」を明らかにしました。

ポイント

■産業として岐路にあることが明確に

 今回、住団連に参加する各大手住宅メーカートップは、口々に消費増税へ反対の意を示しました。5月30日、衆議院の社会保障・税一体改革特別委員会で、安住淳財務大臣は「単一税率はいじらない」と発言。それに対して異を唱えたものとみられます。日本において、消費税と住宅業界は長らく微妙な関係にありました。先進諸国、例えばイギリスやアメリカの各州などでは、住宅取得は消費税の対象外としていることが多いからです。これは住宅そのものの数が充足していなければ、結果的に国民が家のない暮らしに追い込まれる可能性がある、だから「住宅は社会の資産(ストック)」である、という考え方が背景にあります。

 日本では先進国に比べて消費税導入が遅れた末、「消費税は『最も公平な税制』であるべきだ」として、除外を認めない単一税率制が採用されました。日本における消費税導入は24年前の1988年末。記事で住友林業会長の矢野龍氏が発言しているとおり、当時から住宅業界は除外を求めてきましたが、バブル景気に沸く中では説得力を欠いていました。なお88年度における新設住宅着工戸数は166万戸で、現在の約2倍に相当します。

 羽田・新国交大臣が消費税制に関する質問の後に「『中古住宅・リフォームトータルプラン』を重視する」と発言したのは、そうした背景を知った上でのことなのでしょう。「住宅の数はとっくに足りており、新築を特別に優遇することはしない」と暗に言ったようなものです。

まとめ

 こう読み解くと、国内シンクタンクが発表した消費増税の際の「駆け込み需要」の動向も、微妙な増加数です。駆け込みが起きても着工100万戸回復どころか昨年の1割増し程度にしかならないわけですから、「需要の先細り」を数字で突き付けられた気分になってきます。増税と直前の駆け込み需要という「祭り」の後について、これから住宅業界は向き合わざるを得ないのです。

<ライタープロフィール>
梶井 浩
1970年生まれ。大学卒業後、住宅専門新聞社に就職。記者職を6年間勤めた後、独立。住宅・建築関連の取材を続けて17年目。
現在も建築専門誌、専門 webを中心に執筆中。

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