日本建築学会教育賞を受賞!「人が活きるキャンパス」を目指して 奈良学園中学校・高等学校スクールプロジェクト

スクールプロジェクト〜生徒のアイデアによって作られる校舎〜


「校舎の建て替えを教育の場に活用できないだろうか」校舎の建て替えにあたり学校関係者が発したひとことが、生徒参加型校舎の建て替えプロジェクトの発端になりました。計画段階から竣工まで約1,000日間に亘る一連の建設プロセスに生徒たちが参画するという、おそらくこれまでに例のない取り組みが開始されたのです。
全校生徒へのアンケート実施、有志の生徒たちの建築に関するさまざまなセミナー受講などを実施しながら、校舎の現状の問題点を把握していきました。それらを踏まえて、新校舎の配置計画や平面計画の検討を行っていきました。また検討にあたっては、教室や特別教室をユニット化した「スクールパズル」を考案し、敷地の高低差が理解できる敷地模型を利用するなどの取り組みも採用しています。



ランドスケープセミナーによる周辺環境の学習、全国の学校事例の事例を調べる「スクールパズル」によるプラン形成、文化祭でのプラン発表、工場見学や造成法面による植樹など、新校舎建設に向ける取り組みは、生徒たちの積極的な参加によって行われた



スクールプロジェクト〜設計者も学んだ有意義な経験〜

生徒たちはチームに分かれて夏休み返上で新校舎の案をまとめ、文化祭でおのおのの思いを込めた新校舎案の発表を行いました。発表の内容は設計者と教職員で検討し、「学校のシンボルとなる大階段や空中ブリッジ」、「図書室は学校の中心に」、「職員室は透明に」など、生徒たちの優れた提案やアイデアを新校舎に設計に反映させています。施工の過程においては、外壁タイルの製作・張り付け、サイン計画の検討、工事現場見学やコンクリート打設体験を行い、生徒たちが実際にものづくりを体験しました。
1,000日間に及ぶ「スクールプロジェクト」を通して、設計と施工の両面から生徒たちと共に新校舎をつくれたことは、私たち設計者にとっても学ぶべき点は多く、大変有意義な経験を積むことができたと思っています。(この取り組みは2010年度日本建築学会教育賞を受賞している)



荒井康昭(あらい・やすあき) ─鹿島建設関西支店建築設計部設計長/1964年生まれ。1990年、鹿島建設建築設計本部入社。
福田容明(ふくだ・よしあき) ─鹿島建設関西支店建築設計部/1976年生まれ。2002年、京都大学大学院工学研究科修了。
同年、鹿島建設設計エンジニアリング総事業本部入社。


初掲載!INAXものづくり工房、タイルマイスター芦澤忠が語る、スクールプロジェクト

スクールプロジェクトの計画の概要を把握したとき、その綿密さに感嘆いたしました。その流れを受けて、私たち関係者は、生徒さん方の要望やイメージをどこまで実現できるだろうか――、ということに重点を置いて、検討を重ねました。
当初、生徒さんは工場の製造現場の見学と、どろだんごを体験する予定でしたが、やはり実際にタイルづくりを経験していただきたいと、ものづくり工房でのスクラッチタイルの実施が決定しました。


スクラッチ(傷付け)作業を見入る
スクラッチ(傷付け)作業を見入る
スクラッチ(傷付け)を体験する
スクラッチ(傷付け)を体験する
エントランス外壁に用いたスクラッチタイルは、生徒たちが愛知県常滑市にある、「INAXものづくり工房」に出向き、自分たちで釘を手に傷付け(スクラッチ)を行い、メッセージを掘りこんだ
エントランス外壁に用いたスクラッチタイルは、生徒たちが愛知県常滑市にある、「INAXものづくり工房」に出向き、自分たちで釘を手に傷付け(スクラッチ)を行い、メッセージを掘りこんだ


生徒たちのメッセージが書かれたスクラッチタイル
生徒たちのメッセージが書かれたスクラッチタイル
このたびご採用いただいたタイルは、「古陶洛」という商品なのですが、釉薬を施して還元焼成()で焼き上げているため、むらが出て独特の味わいが出るという特長があります。生徒さんたちは、このスクラッチタイルの面状の下部1cmほどのところに、名前やメッセージを掘り込みました。通常の商品に予めスペースを空けておいたもので、現地で生徒さん自身が職人さんの手を借りて埋め込みを行っています。

() 還元焼成:窯の中に酸素ができるだけ入らないようにして焼成すること。窯の中は酸欠状態になるが、炎は酸素を必要とするため、窯の空気からではなく焼かれている胎土や釉薬から酸素を奪って燃焼する。その影響で器に様々な変化が起きる。


また、定礎石は、生徒さんが習字で書いた文字を工場でデータスキャニングしたもので、陶板を作ってブラスト処理を加え、文字を掘り込んで制作しました。



焼成する前の定礎石
焼成する前の定礎石
焼成後、埋め込まれた定礎石
焼成後、埋め込まれた定礎石


以前、大学の実習で焼き物体験などを行ったことはありましたが、ここまでの試みは初めてのことです。今回は生徒さんと先生や関係者が30名ほどお見えになりました。皆さんとても意識が高く優秀で、私どもの話に熱心に耳を傾けてメモを取っておられました。タイルの製作現場に興味を持たれた様子で、大変ご好評をいただきました。
生徒の力で自分たちの学校をつくる――生徒参加型という新しいモデルケースのひとつとしてのユニークな試みでした。



タイルは粘土からできるものです――、そのことを実感することは、土に対する興味が沸き面白さを感じられる経験だと思います。加えて、焼き上がったタイルを現場に赴いて、壁面に実際に張り上げる作業も行っているため、満足度が高く、新鮮な経験ではないでしょうか。
私どもも今回のプロジェクトに関わらせていただいたことで、大きな喜びを感じることができました。ありがとうございます。


文化推進部
ミュージアム活動推進室 ものづくり工房
芦澤忠
空間技術研究所 実験工房配属/1995年入社
技術統括部 実験工房/1998年〜
研究開発センター 実験工房/2003年〜
設備事業部設備商品開発室/2004年〜
文化推進部 ミュージアム活動推進室 ものづくり工房/2006年〜現在


鹿島建設株式会社 スクールプロジェクト 特集:ともに歩む「みんなの学校」づくり
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