水盤上に浮く円弧状のリゾートホテル
ラグーナベイコート倶楽部 ホテル&スパリゾート

堀尾明(リゾートトラスト株式会社)、清水満(株式会社安井建築設計事務所)

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ラグーナベイコート倶楽部の俯瞰。海岸線に沿わせたホテルの形状は、マリンリゾートにふさわしいこの地区のランドマークとなっている(提供;リゾートトラスト)

愛知県“ラグーナ蒲郡地区”の開発

三河湾に面する愛知県蒲郡市の“ラグーナ蒲郡地区”は、120haの広大な埋立地を、海に親しむことをテーマに、1991年から本格的な開発が始まったエリアである。
2001年には中部地区最大規模のマリーナ「ラグナマリーナ」が完成。2002年にはテーマパーク「ラグナシア」と商業施設「フェスティバルマーケット」、2003年には温浴施設や高級リゾート型の分譲マンション、2006年には中高一貫校「海陽学園」など、さまざまな施設がこの地に誕生している。
しかし、2008年リーマン・ショックなどの社会情勢の変化から、計画用地の約半分が未利用のまま開発は一旦足踏み状態となった。市は、これまで開発を主導してきた第3セクター蒲郡海洋開発株式会社の抜本的な改革を実践。集客施設に実績を持つ民間企業を新たに加え、ラグーナ蒲郡地区の新しいまちづくりを2014年にスタートさせた。周辺道路の整備も進み、アクセスが良くなったことから来街者も広範囲となり、近年は、多くのイベントが開催されるなど賑わいを見せている。


ラグーナ蒲郡地区の土地利用計画(「ラグーナ蒲郡地区 まちづくり・開発コンセプト」より)

2019年3月、宿泊エリアに誕生した「ラグーナベイコート倶楽部 ホテル&スパリゾート(以下、ラグーナベイコート倶楽部)」は、会員制リゾートホテル事業で最大手の一つ、リゾートトラストが運営する完全会員制のリゾートホテルである。リゾートトラストは、会員制リゾートホテル「エクシブ」で広く知られているが、「ベイコート倶楽部」は、都心部に近いところでハイエンドなリゾートホテルを望むお客様の声から生まれた都市型リゾートホテルで、利用者の年代もエクシブよりひとまわり若い世代になっている。
2008年開業の東京・お台場、2018年開業の芦屋に次ぐ3件目がこの施設で、2020年には横浜みなとみらい地区の4件目が予定されている。
リゾートトラストの本拠地でもある愛知県で初めて本格的なリゾートホテルをつくる当プロジェクトは、新ブランドということも重なり、かなり力を入れたものになったという。リゾートトラスト開発部門でインテリア部長を務める堀尾明氏よりラグーナベイコート倶楽部開業の経緯と、ホテルの特徴をお話いただいた。


リゾートトラスト堀尾明氏(写真:フォンテルノ)

ラグーナ蒲郡地区のランドマークに

堀尾明氏:ラグーナ蒲郡地区のほぼ中央に52,264.5m2の土地を取得したのは2008年でしたが、リーマン・ショックや東日本大震災などがあり、計画を一時凍結して様子を見ていました。その後、地域に新しい動きが生まれ、イベントなども盛んになってきたことから計画を再開し、2016年6月に着工しました。
計画地は、三河湾に突き出して海を臨み、マリーナに面する美しい景観の中にありながら、名古屋から約1時間で訪れることができるという最高の場所です。ベイコート倶楽部は、大都市からわずかな移動時間で非日常の世界に入れることがコンセプトですから、ぴったりの立地でした。完全会員制のホテルですので、リラクゼーションスペースとしてはもちろん、重要なビジネスシーンに、また、ご子息やご令嬢の結婚式や大切な記念日にと、都市部ならではのご利用方法に対応し、お客様にその使い勝手の良さをお感じ頂いています。
また、ラグーナベイコート倶楽部は、オープン前に会員権の約8割が売れるという好調な出だしを見せています。都市型リゾートホテルは、東京や関西にはあっても中部地区にはなかったので、皆さんの期待感も高かったのではないでしょうか。おかげさまでリゾートトラスト関連施設の会員数は17万人を超えています。


ホテルからマリーナ越しに周辺の商業施設やリゾートマンションが見える

マリーナビューの客室からは中部地区最大規模のラグナマリーナが臨め、マリンリゾート気分を盛り上げる

見たこともない近未来感あふれるホテルに

堀尾明氏:弊社を代表する「エクシブ」シリーズは、自然の中に広大な敷地を確保して、どちらかというと自然に溶け込むような建物をイメージしていますが、新ブランドの「ベイコート倶楽部」は立地が都心ですから、ランドマークとなるようなシンボリックな建物で、街の景観にも貢献できるようなものを目指しています。東京ベイコート倶楽部は凱旋門スタイル。芦屋は豪華クルーザースタイル、2020年オープン予定の横浜は波が押し寄せるような建物のイメージです。
このラグーナベイコート倶楽部のデザインコンセプトは、“Futuristic Luxury(フューチャリスティック・ラグジュアリー)”。外観も内部空間も緩やかに変化していく有機的なカーブで構成され、きらめく素材とともに近未来を感じさせます。独特の外観は、マリンリゾートを印象付けるランドマークとして、地区全体のブランド力向上に大きく貢献できると思っています。
そもそも樹木のない埋立地ですから、約1700本もの高木を植栽し、突如として森を出現させました。そのことで非日常感を演出しながら、同時に自然環境保護にも力を入れています。ゲートをくぐれば、それまでの喧騒から遮断された別世界に入り、だれにも邪魔されない、最上級のリラクゼーションスペースになっていると思います。


ホテル敷地内には約1700本の高木が植栽され、ゲートを過ぎると突如として豊かな森が出現する(提供:リゾートトラスト)

ホテルを印象づける建築デザイン


リゾートトラスト堀尾明氏(写真:フォンテルノ)

堀尾明氏:建築デザインは、この敷地に沿わせ流れるような建物の形が印象的です。大きなタイル張りの水盤上に浮かぶ円弧状の建物で、中央部分は橋の上に客室を乗せているような構造で、大変難しい設計だったと思います。エントランス正面を見ると、水面がインフィニティエッジで海につながっているような風景が広がります。このランドスケープを実現させるために、断面図をたくさん描いて検証しながら慎重に進めました。
エントランスホールから見ても、海側から見ても、どこから見ても美しい景色です。もちろん客室は全室オーシャンビューですから、海のきらめく時間とサンセットが楽しめ、たっぷりと非日常感を味わっていただくことができると思っています。
ラグーナベイコート倶楽部のコンセプトは、“Futuristic Luxury”ですから、だれも見たことがないものをつくろうという気概に燃えて、安井建築設計事務所様、丹青社様、鹿島建設様と連携を取り、ハードをつくり上げていきました。
実際、来館されたお客様も、エントランスを入ると水盤が海へと続き、客室がまるで海に浮かんでいるような景色が近未来的で、海と空の青さに圧倒されたという感想をたくさんいただいています。


海側からホテルを見る

細部にこだわったインテリアデザイン

堀尾明氏:インテリアも客室も、近未来感を感じさせる曲線を多用した独特のデザインになっています。これはAB Conceptという香港のデザイナーを起用し、彼らのイメージをできる限り実現させました。彼らに出した要求が、「見たことのない近未来をイメージしたもの」ですから、かなり挑戦的な絵を描いてきました。これをどうやって形にするのかと質問しても、ジャパニーズテクノロジーを駆使して欲しいとしか返ってきませんから、設計者やメーカーさん含めて試作を繰り返しながら現実化していきました。
彼らの提案で一番印象的だったのはロビーの考え方です。ラウンジやメンバーズレセプションなどをウェーブのある透明なアクリルウォールでやわらかく空間を分けていくという提案で、その発想がとてもユニークでした。近未来というテーマの答えの一つとして、彼らの中には、透明感というのがあったのだと思います。
他にも、天井の折り上げ方や柱の抜け方、エントランス空間の見せ方など、もちろん、建築と相まった部分なのですが、インテリアを手掛ける方は、それをいかに良く見せるかを考えるところがとても新鮮に感じました。


エントランスホールからの眺め。正面には海に浮かんでいるような客室の建物が見え、光を反射するアクリルウォールと相まって、近未来感漂う空間になっている

2階のロビー階からの眺望。水盤と海がつながり無限の広がりを感じる

エントランスホールから見える風景は近未来映画の1コマのよう

ロビー階から中央高層棟を見る

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公開日:2019年10月30日

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