文化活動を賑わいとしてまちに映し出す高崎芸術劇場

境静也、多々良邦弘(佐藤総合計画)

──LIXILの製造現場から
栗梅色のテラコッタタイルができるまで

高崎芸術劇場内部で使用された栗梅色のテラコッタタイルは、3種類の凹凸差を有する断面形状の意匠面に、鉄砂釉を施している点が特徴的です。提案初期の段階では、現在のようなR断面ではなく、直線形でいろいろなサンプルをたたき台として提示させて頂きました。その中に面状の凹面に赤い釉溜りのあるサンプルが偶然あり、その施釉のムラが作り出す味わい深さに目を留めて頂いたことがきっかけで、R断面の凹凸面の検討が始まりました。発色や釉薬のノリ具合などの試験を何度も重ねながら、佐藤総合計画のご担当者さまに工場へご来場いただき、見本焼きの確認を通じて、美しい曲線意匠の断面形状に変化していった経緯があります。
表面に施された釉薬は、焼成時に溶融し、上述した断面の凹部に自然な溜まり状態となり、焼き物らしい風合いを演出しています。流れ出す状態が風合いを作り出すということで、音楽という芸術性にも通じるものがあったと捉えられたのではないかと思います。溜まり状態は、過去に経験したことのないほどの断面凹凸高低差、窯内の位置等により変化が生じますが、発生状況を把握、管理、混合することで、壁面としての自然な風合いにつながったと考えております。
佐藤総合計画の皆さまにはご指導いただけましたこと、この場をお借りして感謝申し上げます。

テラコッタタイル試作品の検討(左)、モックアップ品の仮並べの様子(中左)、テラコッタタイルのモックアップ(中右)、テラコッタタイルの施工中の様子(右) (写真提供:4点ともLIXIL)
テラコッタタイル3種類の断面形状図(図面提供:3点ともLIXIL)

株式会社LIXILタイル事業部 タイル製造部 常滑東工場 技術課 加藤正俊
株式会社LIXILタイル営業部 営業開発室 首都圏第2グループ 平野裕治

高崎芸術劇場データ

所在地 群馬県高崎市栄町9-1
建主 高崎市
設計・監理 株式会社 佐藤総合計画
施工 竹中・東鉄・佐田高崎芸術文化センター(仮称)特定建設工事共同企業体
舞台 シアターワークショップ
音響 永田音響設計
照明協力 キルトプランニング
防災 明野設備研究所
設計・監理協力 ケーエムアーキテック
規模・階数 地上8階、地下1階
敷地面積 10,984.10m2
建築面積 8,814.15m2
延床面積 27,203.96m2
構造 SRC造、一部S造
主用途 多目的ホール
竣工 2019年6月
LIXIL使用商品 ■外装壁タイル
IPF-1260/VLD-22
IPF-1260/VLD-22+1200×350カット
IPF-1260/VLD-22+1200×250カット
■大劇場ホワイエ 内装壁タイル
TL-900×310+1-type/E1701-252
TL-900×210+2-type/E1701-252
TL-900×160+3-type/E1701-252
■1F 個室楽屋トイレ
大便器:HUC-P12P
洗面器・手洗器セット:HUC-2297
■1F 楽屋用トイレ
大便器: HUC-P12P、PA11M-NEK、PA11F-NEK
小便器:HUU-A51A
洗面器・手洗器:HUL-2295、140C(100V)
壁使用タイル:ECP-303/FMN1N
床使用タイル:IPF-300/RSK-24D
■2F一般トイレ、床
大便器:HUC-P18PA
小便器:HUU-A11A,AW
洗面器・手洗い器:HUL-2295
水栓金具:AM-140C(100V)-Z1
床使用タイル:IPF-600/SNL-1

取材・文/フォンテルノ 撮影/エスエス企画(特記を除く)

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公開日:2020年07月29日