「建築とまちのぐるぐる資本論」取材 3

ソーシャルキャピタルで地域を育てる方法

福田和則(聞き手:連勇太朗)

Fig.1: 葉山の一棟貸し古民家「平野邸」。投資型ファンドによって再生・運営されている。

「建築とまちのぐるぐる資本論」第3回は東京を離れ、鎌倉・葉山のエリアを起点に各地の地域創生を目指す「エンジョイワークス」の代表取締役、福田和則さんを取材した。空き家や遊休不動産の活用といった日本の多くの地域が抱える問題に、建築家でも都市計画家でもない、金融出身の福田さんがこれまでとは違った角度からイノベーションを起こしている。全国展開を進めている今、福田さんがそれぞれの思いやエリアをどのように捉え、建物やまちの価値を高めるための再現性ある手法をどのように生み出しているのか、お話を伺った。

鎌倉・葉山の人たちは幸せそうだった

連勇太朗(連):

空き家再生に特化したクラウドファンディング「ハロー!RENOVATION」、お客さん自らに設計をしてもらう「スケルトンハウス」、そして宿泊施設や飲食店のプロデュースや運営など、まちづくりに関わる様々な事業を展開されていますが、エンジョイワークスとはいったいどのような会社なのでしょうか。

福田和則(福田):

鎌倉を拠点に「価値共創カンパニー」を標榜し、不動産、建築、まちづくり、空き家再生などの事業を行っています。2007年の創業当時は「鎌倉・葉山ベースの不動産屋です」と言った方がわかりやすかったのでそう説明していましたが、当初から不動産業のみに従事するつもりはありませんでした。不動産仲介から始め、段階的に住宅の設計、施設の運営、空き家再生のためのファンドの組成や運用と、自分が考えるまちづくりに必要な機能が揃い、目標に近づいてきている実感があります。

連:

起業のきっかけを教えてください。

福田:

2005年に葉山に移住したことです。当時、僕は外資系金融の会社員で、富裕層の資産管理のアドバイスや資産運用をしていて、移住後1年は朝6時のバスに乗って新橋まで通勤していました。
単純に海と山が好きで、サーフィンをやっていたこともあり、子育てに良い環境を求めて葉山にやって来ました。暮らしてみると、このエリアは自然に恵まれているだけではなく、住んでいる人がおもしろいことに気づきました。いい大人が日中からぶらぶらしている。朝、子どもを病院へ連れて行くと、子連れのお父さんばかり。昼間から飲んでいる人も珍しくなく、だからといってみんながヒッピーというわけでもない。お金もありそうでした。僕の周りのサラリーマンはそれなりに稼いでいても、「仕事に疲れた」「会社に行きたくない」「やっと週末だ」とぼやく人が多かったのですが、このエリアに住んでいる人たちはまったく違っていて衝撃を受けました。

連:

キャリアの最初はガチガチ資本論だったわけですね(笑)。

福田:

そうでした。お客さんは社会的に成功された方がほとんどで、簡単に会えない人や有名人ばかりです。直接、憧れの人たちから人生経験や思いなどを聞けたことは、僕の人生にとってプラスになりました。一方で、幸せではなさそうに見える人も結構な割合でいました。人間関係にトラブルを抱えている人、お金は沢山あるのにお金に囚われている人なども見てきたからこそ、お金だけでは幸せになれないと感じていました。

Fig.2: 福田和則さん(右)、連勇太朗さん(左)。

公開日:2023年07月31日