DISCONNECT/CONNECT【ASAO TOCORO×NOIZ】

幾何学文様の律動、タイリングの宇宙──無限につながる幾何学文様、タイルと出会う

野老朝雄(美術家)×noiz

『コンフォルト』2021 August No.180掲載

  • facebook
  • twitter

今回、会場構成を手掛け、野老さんの紋様をプロジェクションマッピングによって鮮やかに拡張して見せたのは、コンピュテーショナル・デザインの分野を牽引する建築デザイン事務所noiz。これまでも両者は展覧会などでタッグを組んできた。
noizの共同主宰者の豊田啓介さんは言う。「会場は土の質感、タイルの質感をもつ独特の空間です。そこに野老さんの紋様の存在をどのように反映するかを強く意識しました。タイルの硬質の質感、音の反響、ひやりとした輻射熱とか、さらに五感以上の感覚もあると思います。そこに生まれる没入感を2つの展示ゾーンを通し、体験してもらえたら」。

Voxel Scape(ヴォクセル・スケープ)。デザイン:noiz コラボレーター:林國隆/水里蛇窯、2014年 写真:阿野太一

会場の奥にはかっちりとしたボックスの塊のようなピラミッドを築いた。2014年にnoizがデザインし、台湾につくられたやきもののパブリックアートVoxel Scapeがインスピレーションになった。硬質で白いタイルのピラミッドの肌に、パネル展示で見たばかりのINTERTWINEDが投影され、音楽家・原摩利彦さんが作曲したオリジナル曲に連動しながら、ゆっくりと、また素早く一気に動き出す。その映像を浴びるように見る体験は、見たことのないものに出会ったときの驚きに満ちている。

豊田さん、ヴィジュアルプログラミングに携わった白木良さんにとって予想外の現象も起きた。会場で初めて投影のテストをしてみると、ピラミッド全体が自ら発光しているように見えたことだ。経験したプロジェクションマッピングでは例がないという。未知の可能性が見えてくることこそ、リアルなモノと、デジタル技術が触れあう醍醐味だろう。

いま、ここだけにある体感、タイルの新たな魅力が一日でも早く、多くの人に届くことを願う。

右から美術家・野老朝雄さん、noiz共同主宰・豊田啓介さん、INAXライブミュージアム主任学芸員・後藤泰男さん。

noiz

2007年に豊田啓介と蔡佳萱のパートナーシップとして設立。2016年より酒井康介を加えた3名パートナー体制で、東京、台北、ワルシャワ(ヨーロッパ)からコンピュテーショナルな手法を用い、建築を軸にインスタレーションから都市まで幅広いジャンルで国際的に活動する建築・デザイン事務所。最新のデジタル技術を駆使した各種デザインや制作、システムの実装から教育、各種リサーチ&コンサルティング活動も積極的に展開している。

野老朝雄 Asao TOKOLO

1969年、東京都生まれ。幼少時より建築を学び、大学卒業後、建築家/美術家の江頭慎に師事。2001年9月11日より「つなげる」をテーマに紋様の制作を始め、美術・建築・デザインなど、分野の境界を跨ぐ活動を続ける。主な作品に、東京2020オリンピック・パラリンピックのエンブレムに採用された「組市松紋」、大手町パークビルディングの屋外彫刻作品「TOWER OF CONNECT」、「PPPTOKOLO PATTERN MAGNET」などがある。

演出と音楽が一体となり、魅了する映像づくり

ヴィジュアルプログラミングを担当したのは白木良さん。かつてnoizに在籍し、独立後も連携している。昨年、LIXILギャラリーでオンライン展覧会となった映像制作に関わり、今回も音楽家・原摩利彦さんと組んでプロジェクションマッピングに臨んだ。野老さんが選んだ3種類の紋様の演出が素晴らしい。「最初にぼくがざっくりとタイムラインをつくり、原さんに投げて音楽ができあがります。そのサウンドに合わせて、さらにつくり込んでいきます」。ピラミッドに合うようプログラムし、左写真のようにプロジェクターで投影し、微調整を行った(写真:編集部)。意外だったのは投影対象となったタイルのこと。「一般にタイルに投影すると、ハレーションを起こして映像がパキッと見えないので、表面がマットなタイルが選ばれたのですが、投影してみるとピラミッド自体がぼんやりと発光しているようで、これはいいなと思いましたね」。

美しい瑠璃色を出すために素地の色にも配慮

今展示のタイル作品の製作は「LIXILものづくり工房(※現やきもの工房)」の芦澤忠さんが担当。RHOMBUS WORKS【JAGGED】は菱形の5種類のピース(写真2)で構成される。「1種類ずつ石膏型をつくり、流動状の粘土材料(泥奬)を流し込む鋳込み製法でつくりました。焼くと1割ほど収縮しますから、もちろんその分は見込んであります」。タイルが目地なしでつながるように、精度が求められた。「どのピースも互いにつながるように、山折れの断面形状がすべて同じ形にデザインされています。4つの先端が谷になっている部分が繊細です。それでも精度よくできました」。釉薬の色は、野老さんが市松紋の面積比をCMYKの比率に適用した瑠璃色を再現。「ピースひとつずつにかかっている釉薬の量は同じですが、尾根は素地の白さが透けて見え、山の角度によって斜面に留まる量、谷に溜まる量が違い、色に変化が出るんです」。野老さんはこれを「尾根がすれ」「谷溜り」と名づけ、愛でている。

写真1

写真2

展覧会プロジェクトへのアプローチ

野老さんのスタジオにて。

写真1

野老さんがAdobe Illustratorソフトで描いている紋様が、スタジオのスクリーンに映り込む。野老さんはエンドレスペーパーの上に手で描くように、多種多様な紋様をつくっていく。

リモートの後藤さんを交え、3人で打合せを重ねた。撮影は2021年2月。

3DプリンタでつくられたRHOMBUS WORKS【JAGGED】のピース。2016年に開かれた野老朝雄×青森市所蔵作品展「個と群」に際し、3Dプリンタのエキスパート・平本知樹さんが製作した。今回のタイルバージョンの原形と言える。

取材・文/清水 潤 撮影/梶原敏英(特記をのぞく)

展覧会DATA

「DISCONNECT/CONNECT【ASAO TOKOLO×NOIZ】幾何学紋様の律動、タイリングの宇宙」

会期 2021月4月24日(土)~10月12日(火)※展覧会終了
会場 INAXライブミュージアム「土・どろんこ館」
愛知県常滑市奥栄町1-130
https://livingculture.lixil.com/ilm/
休館日 水曜(祝日の場合は開館)
観覧料 ミュージアム共通入館料(一般¥700、高・大学生¥500、小・中学生¥250)

監修 野老朝雄、noiz
紋様制作 野老朝雄
展示デザイン noiz(豊田啓介、田頭宏造、近藤有希子)
ヴィジュアルプログラミング 白木 良
音楽 原 摩利彦
グラフィック 小木央理
タイル制作 LIXILやきもの工房

雑誌記事転載
『コンフォルト』2021 August No.180
https://confortmag.net/no-180/

このコラムの関連キーワード

公開日:2021年12月22日

  • facebook
  • twitter