断熱リノベの匠 第4回

リノベーションで、大切な地域文化を継承する

貢 繁幸(代表取締役/株式会社 みつぐはうす工房)

「断熱リノベの匠(たくみ)」は、工務店・ビルダーさまによる断熱リノベーションの新たな挑戦、注目すべき取り組みの事例を連載でご紹介していきます。

今回ご紹介するのは、「地産地消の家づくり」「低燃費でゼロエネルギーを目指す家」をコンセプトに掲げて、環境負荷の少ない家づくりに取り組んでおられる匠です。省エネルギー住宅のトップランナーを選定する表彰制度「ハウス・オブ・ザ・イヤー・イン・エナジー」において優秀賞を7年連続で受賞されるなど、確かな実績を残されています。

株式会社 みつぐはうす工房 代表取締役 貢 繁幸 氏

株式会社 みつぐはうす工房 代表取締役 貢 繁幸 氏

北国街道の宿場町、福井県今庄を拠点に、地元に根ざしたビルダーとして活動を続けている「みつぐはうす工房」。2007年の創業以来、性能をデザインする住まいづくりに情熱を傾けている匠が代表取締役 貢 繁幸 氏です。貢氏は、新築住宅の受注が中心でありつつも地域における空き家の増加を実感し、古い住宅を住み継いでもらうためのリノベ提案を行う取り組みをはじめておられたそうです。

そんな中、街道沿いに隣り合って建つ昭和初期の住宅で、維持管理が難しく空き家になっていた2軒を預かることになったことがきっかけとなり、古民家再生プロジェクトをスタートされました。

ちょうど「今庄宿」が令和三年に、文化庁による“重要伝統的建造物群保存地区” に選定され、その2軒も伝統的建造物に該当していたという経緯もあったそうですが、何より自分が生まれ育った故郷の街並みや文化を残したいという想いと、街並みの保存に貢献できる建築のプロであるという使命感が突き動かしたのだと語っておられます。

北陸と京や江戸をつなぐ北国街道、越前屈指の宿場町として繁栄した「今庄宿」。幕末の記録では、旅籠屋55軒、茶屋15軒、酒屋15軒などがあったとされ、その面影が今も息づいています。

築90年を超える古民家の意匠を復元し、断熱リノベで快適な宿に再生

リノベ前の建物は土壁で無断熱の状態だったため、屋外に面する壁は高性能断熱パネルを使用して改修。上の写真のような間仕切壁は昔ながらの土壁を残し、時が止まったかのような風情のある空間を再生。

宿として再生した建物は、文化庁からの重要伝統的建造物群保存地区補助金を利用。建築当時の姿を復元するために新しく建具を製作する箇所も多くあり、町に図面を提出して承認を得ながら進めたとのこと。

劣化していた柱(写真右)は、大工が一週間かけて根継ぎという伝統的な技で修復。改修工事の際に床の下から見つかった井戸(写真左)は隠さず、当時の生活を偲ばせるシンボルに。

今回のプロジェクトでは、二軒のうち一軒を宿として再生。もう一軒はカフェとして改修し、多くの人に利用してもらえるよう計画されたのだとか。築90年を超える建物のため、再生はたやすいことではなかったと想像できますが、宿泊施設として使用するには十分な快適性が必要となるため、古民家としての意匠の再生と断熱性の向上をいかに両立させるかが大変だったと振り返っておられます。

たとえば、すでにリフォームでサッシ戸に変わっていた玄関や窓については、建築当時の意匠・材質を調べてオリジナルで建具を製作し復元を行い、意匠に配慮しながら高断熱の内窓や真空ガラスで補うといった工夫が必要だったそうです。

街道沿いに建つ、隣り合った二軒の民家(リノベ前)。正面右の建物を宿に、左の建物をカフェにリノベーション(写真左)。南越前町今庄宿 重要伝統的建造物群保存地区の伝統的建造物に認定(写真右)。

古民家における断熱性能を「まるごと断熱リフォーム」で追求(SW工法リフォーム)

そんな貢氏は、古民家のリノベーションにおける断熱性能の追求は簡単ではないと理解しながらも、宿泊されるお客様の快適性を考えると諦められないとの想いから、「まるごと断熱リフォーム」が採用できないかとLIXILに相談。従来は土壁への対応は行っていない工法ながら、開発部署の協力によって、実験的な取り組みとして、土壁の内側に断熱パネルを張る特別仕様で断熱改修を行うことに成功。そうした壁の断熱に加え、内窓樹脂サッシの採用や内側に障子戸を設け空気層をつくるなど、様々な工夫によって実現したとのことです。

こうして古民家の断熱リノベに初めて挑戦されたわけですが、地元を含め日本には土壁の家屋はまだ多く残るため、この検証した結果を活かして「まるごと断熱リフォーム」の対応力の幅をひろげることができれば、古い空き家の再生に役立つのではないかと語っておられます。地元の宿場の街並みを残そうとした匠の想いが一歩となり、今後の空き家再生に繋がっていくことに期待したいところです。

Before:昭和初期から長年住み継がれてきた、中庭を臨む床の間のある和室

After:古民家の意匠を残しながら和モダンな客室に再生されたリビング空間

Before 平面図

After 平面図

昭和3年に建てられた民家は、北国街道に面しており、間口は大きくないものの奥には中庭や蔵もあり、今回の宿へのリノベでは、蔵はバスルームや洗面室として活用。

まるごと断熱リフォーム(SW工法リフォーム)のイメージCG

まるごと断熱リフォーム(SW工法リフォーム)のイメージCG
断熱リノベによる既存住宅の高性能化によって、外の温度の影響を受けにくく、家の中の快適な温度を逃しにくくなるため、冬は暖かく夏は涼しく過ごせる暮らしを実現。

Reform Data

延床面積:45.73坪/木造2階建/築年数:1928年竣工/エリア:福井県 南条郡/断熱リフォームによる性能改善:省エネ区分 5地域 改修前不明→改修後0.58W/(㎡・K)

築90年を超える日本家屋ですが、リフォームを重ね、大切に住み継がれてきました。

土壁の内側から断熱リフォームパネルを張り込み、大幅な断熱性能の向上を追求。

LIXILまるごと断熱リフォーム(特別仕様)によって、断熱性能はHEAT20 G1グレードに迫る0.58W/(㎡・K)から0.31W/(㎡・K)へ大幅に改善。

ビルダー紹介

社名 株式会社 みつぐはうす工房
所在地 福井県南条郡南越前町今庄第115号1番地の2
創業 2007年
URL https://mitsugu-house.jp

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公開日:2024年04月26日