パッシブファーストの住まいづくり(第1回)

地域のライフスタイルと融合した住まい提案を──目指すは湘南パッシブスタイル

石原誠司(アートテラスホーム株式会社)

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石原 誠司さま代表取締役 石原 誠司さま
真利子 拓也さま注文住宅事業チーム 設計長 真利子 拓也さま
鈴木 佑輔さまリノベーション事業チーム 設計 鈴木 佑輔さま

神奈川県横浜市のアートテラスホームさまは、鎌倉、逗子、葉山などの湘南エリアを中心に住宅事業を展開しています。

パッシブデザインに取り組むことで、湘南エリアのお客さまへの訴求力を高めることに成功しており、地域のライフスタイルと融合した“湘南パッシブスタイル” の住まいを提案しています(写真①~③)。

アートテラスホームさまのパッシブファーストの住まいづくり

湘南のライフスタイルに融合するパッシブデザインの住宅を提案

①
②

③

アートテラスホームさまでは、湘南エリアの方々のライフスタイルと調和するパッシブデザイン住宅を提案しています(写真①、②、③)。

パッシブデザインを学ぶことで
快適な住まいづくりの原理・原則を知る

──パッシブデザインに取り組むようになったきっかけは?

住宅事業を展開する中で、自然素材やデザインなどを大切に考えており、以前は、住宅性能についての関心が低い時期がありました。当時、お客さまから、結露についてのご相談があった際は、施工方法を追求してきたノウハウから、これくらい換気してくださいねといったように経験値で答え、住宅という物は、これくらいが一般的ですよという説明になっていました。はたして、こういった根拠の無い答え方が正しいものだろうかと徐々に違和感を持ち始めるようになったのです。そして、省エネ、パッシブデザインに興味を持ち始めたところ、2019年にLIXILで開催された野池先生(政宏さま:住まいと環境社)のセミナーがタイミング良く開催されることになり、設計を担当している、真利子と鈴木を参加させました。

知識を生かしたワンランク上の提案力で
信用を獲得し他社との差別化に

──パッシブデザインに取り組むようになってどのような効果がありましたか?

石原社長

まだまだ勉強の途中ではありますが、パッシブデザインを学ぶことで、快適な住まいをつくるための原理・原則に基づいた知識力が身に付きます。その知識力を生かして、寒い暑いといった感覚的な部分も数値化してお伝えすることができるようになってきました。また、湘南エリアは湿気が多い地域でもあります。土地柄を考慮し、仕様書や設計書には表れない部分もしっかり検討していますと言えることで、他社との差別化ができています。そうしたワンランク上の提案を行うことで、お客さまからの信用力は格段に高まるのではないでしょうか。

鈴木さま

お客さまに、断熱と気密、日射熱を使った暖房、日射の遮蔽、自然風の利用、昼光の利用といったパッシブデザインの5つの要素(写真④〜⑧)を説明していくと、特に日照シミュレーション(写真⑨)の結果に興味を持つ方が多いようです。中には非常に勉強してくるお客さまもいらっしゃいます。そういった方も数値の事は勉強していても、実際にその現場でどのように日が入るかの提案を目にすると、こんなことまで分かるんだと驚かれます。自然を生かした提案はパッシブデザインの魅力です。

真利子さま

以前は子育て世帯の方々からの問い合わせなどが多かったのですが、パッシブデザインに取り組むようになってからは、子育てが一段落した40代、50代のお客さまも増えてきました。コロナ禍の影響もあり、都心から湘南エリアに移住を考えているお客様の反響も大きくなっています。
こうしたお客さまは、都心では味わえない湘南ならではのライフスタイル、自分たちに合った丁寧な暮らしを望んでいます。パッシブデザインは、このようなニーズに応える上でも非常に効果的です。

石原社長

現在、協力業者の方々にもパッシブデザインを学んでもらおうとしています。施工を担当する職人がパッシブデザインの基本を知っていれば、例えば防湿フィルムを施工する際にどちらの面が室内側なのかといったことや、どこまでどのように処理したらいいかといったことを、現場監督に質問しなくても分かるはずです。レシピが良くても、料理人の腕が良くなければいい料理を提供できないように、ワンランク上の提案を形にするためには、技術力も磨かなくてはいけません。協力業者の方々が熱の逃げ方を理解し、「結露を抑制するために、断熱材はどう施工を行えばいいのだろうか」と考えながら施工してくれるようになれば、完成後の品質は格段に向上していくでしょう。私はもともと大工でしたが、パッシブデザインを学ぶようになって、何か課題が出てきた際に解決策を考えやすくなり、技術力をさらに向上するための探求心がどんどん深まり、楽しさを感じています。

1年を通してエアコン1台で快適に
お客さまの真意を読み取る設計提案

──どのような住宅を提案していますか?

真利子さま

パッシブデザインの5つの要素を基本として、1年を通して1台のエアコンだけで家中が快適に過ごせる環境を提供することを目指しています。そのために、シミュレーション結果などを踏まえながら、丁寧に設計することを心掛けていますが、よく勉強しているお客さまの中には、「UA値は0.3以下にしてください」といった具体的なリクエストをしてくる方もいらっしゃいます。しかし、断熱性能だけを闇雲に上げたとしても、夏期の快適性を損なう懸念があります。パッシブデザインを学ぶようになったことで、こうしたお客さまに断熱性能とそれ以外の対策とのバランスを取ることの大切さをアドバイスできるようになり、ご納得いただけるようになりました。

鈴木さま

打ち合わせの中で、お客さまからLDKと言われたからここにLDKというのではなく、海が見たいのか、にぎやかな場にしたいのか、落ち着いた空間にしたいのかといった、お客さまの心地よい要因を紐解き、要素から空間を考えるという設計を心掛けています。土地選びから家づくりに至るまで、暮らしのシーンが浮かぶような提案がパッシブデザイン設計によって、さらに説得力のあるものになっています。また、価格が折り合わないからできませんと断るのではなく、バランスを見極めつつ、お客さまの欲しいものを提案できるようになったのも、強みと感じています。

アートテラスホームさまのパッシブファーストの住まいづくり

パッシブデザインの5つの要素を基本にした住まいづくり

④

④開口部の位置などを配慮しながら、日射熱を利用し冬期でも暖かな住空間を実現。

⑤⑥

⑤⑥夏期や中間期の日射をうまく遮り、室内を涼しく保ちます。

⑦

⑦高窓や吹き抜けを利用して自然風により外気を取り入れる工夫を施しています。

⑧

⑧昼間に人工照明を点けなくても過ごせるように昼間の明るさを室内に取り入れる配慮も。

ホームページをリニューアルし、パッシブデザインを前面に

⑨

⑨日照シミュレーションの結果などを用いた提案にも注力しています。

⑩

⑪

⑫

⑫ホームページをリニューアルし、パッシブデザインを前面に押し出す内容にした結果、問い合わせなども増えているそうです(写真⑩、⑪、⑫)。

ホームページを大幅にリニューアル
湘南=パッシブデザインの家というイメージづくりを

──パッシブデザインの魅力をどのように伝えていますか?

鈴木さま

パッシブデザインに本格的に取り組み始めたことを契機として、ホームページを大幅にリニューアルしました(写真⑨~⑫)。パッシブデザインの5つの要素をイラストも踏まえて分かりやすく紹介している他、パッシブデザインを採用した住まいでの暮らしをイメージしやすいように配慮しました。写真を過去の施工事例から選んだ際、改めて確認すると、要素を説明できる写真がたくさんあったことに驚きました。リニューアル以降、ホームページ経由の問い合わせが急増しています。また、問い合わせ内容も、単なるカタログ送付依頼ではなく、当社の住まいづくりに関してもっと詳しく提案してほしいといった、具体的な言葉で書かれてくるようになりました。受注に至る割合も増えています。

真利子さま

パッシブデザインに本格的に取り組み始めたばかりですが、勉強していく中で、以前からなんとなくパッシブ的な工夫を行っていたということに気付きました。私はもともと東京23区内で暮らしていたのですが、自然が豊かな場所で暮らしたいという想いがあり湘南エリアで自宅を建築しました。その際にお願いしたのが、アートテラスホームでした。私の自宅でも、当時はパッシブデザインを意識していたわけではありませんが、5つの要素が盛り込まれていたのです。その意味では、設計のやり方を急に変えたというわけではなく、今までの家づくりの延長にパッシブデザインがあり、設計の工夫を根拠を持って説明できるようになったことが大きく変わった点といえます。
湘南でのライフスタイルを楽しみたいという方々は、建物を資産価値だけで判断するのではなく、文化的な側面からその価値を考える傾向も強いように思います。心地よい住空間や自然を感じる喜びだけでなく、環境面への配慮などへの意識も高いです。その点から考えても、パッシブデザインとの相性が良いと考えています。

石原社長

パッシブデザインに取り組んでいる会社はこの地域では、まだ多くありません。しかし、10年後、20年後には今のままでは難しいと考えられている方が多いのではないでしょうか。世の中の流れに沿って考えたら、やっていくのが自然でしたし、今とても楽しんで取り組めています。湘南で家を持とうという方々は、一度はパッシブデザインについて考えるような状況を実現していきたいと考えています。湘南で暮らすなら、パッシブデザインの住まいを考えるのが普通じゃない?そういった共通認識が生まれると嬉しいですね。湘南で家を建てるのに、「パッシブデザインのことを知らなかった」という人がいなくなるようにしていきたいです。

アートテラスホーム株式会社
社名 アートテラスホーム株式会社
創業 2003年5月7日
モットー 木にこだわった、空間づくり、を通じて、自然で、ぬくもりある、個性的な家づくり

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公開日:2021年02月15日

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