パッシブファーストの住まいづくり(第2回)

パッシブデザインの魅力を伝えるためのマーケティング戦略を徹底

内藤智明(株式会社リガード)

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東京都国分寺市のリガードさまは、性能プラスアルファの差別化策としてパッシブデザインの提案を強化することで、大きな成果を得ています。

また、マーケティングの専門部署を配置し、パッシブデザインの魅力をより効果的に伝えるための取り組みを推進しています。

リガードさまのパッシブファーストの住まいづくり

性能、デザイン、施工力が一体となったパッシブハウスを提案

①

②

③

リガードさまでは、性能、デザイン、施工力が一体となったパッシブデザインを提案することで、お客さまから高い評価を得ています(写真①、②、③)。

ローコスト住宅からの脱却
まずは高性能住宅からスタート

──パッシブデザインに取り組むようになったきっかけは?

内藤社長

当社は2011年に創業しました。創業当初は不動産仲介事業を中心に行い、不動産会社からの紹介で請負事業をスタートさせました。その後、ローコスト住宅を中心として注文住宅事業を本格的に手掛けるようになります。
おかげさまで順調に受注棟数も伸びていったのですが、「本当にお客さまに満足してもらえる住宅を提供できているのだろうか」。このままでは「プライドを保つことができない―」。そう強く感じるようになっていったのです。
社内に思いを伝えると、受注棟数は伸びていたので、「このままでいいのではないか」という声もありましたが、「この事業モデルでは50年後に会社を存続させることはできない」と説得し、ローコスト住宅からの脱却を決断しました。
そこから、まずは全国で高い評価を得ている工務店さんの事例を学ぶところから始めます。全国の工務店さんを訪問し、お話を聞きながら勉強を続ける中で、成功している工務店さんにはいくつかの共通点があることが分かってきました。一つは、性能を重視していること。加えて、しっかりとした意匠面のデザイン力があり、なおかつ空間デザイン力を備え、それを実現するための施工力を備えている。
そこで、軸足を高気密・高断熱の高性能住宅へと移していき、社内外の設計者と連携しながら設計力を高めていきました。また、当社の仕事を専門で担当してくれる大工さんなどとの連携も深めていったのです。
施工力という点でいうと、今では完成後に気密性能を実測すると、C値0.1cm²/m²といった性能を普通に出すことができるようになっています。
高性能住宅へと舵を切る中で、受注棟数も順調に伸びていきました。しかし、当社と同じように性能を前面に押し出す会社が2019年頃から少しずつ増えてきて、商圏内で競合することが出てきたのです。最初はなぜ負けたのかよく分からずに悩みましたが、「次のステップに進まなければ」とすぐにまた新たな挑戦が始まりました(写真①~③)。

内藤 智明さま株式会社リガード 代表取締役 内藤 智明さま

性能はやがて同質化する
大手対策としてもパッシブは有効

──パッシブデザインに取り組むようになってどのような効果がありましたか?

内藤社長

私は性能はやがて同質化すると考えています。単に高性能化だけを追求していると、やがて他社もみな同じような性能値になってきます。そうなってくると、「同じ性能値であれば、価格が安い方がいい」という状況が生まれ、単純な価格競争へと突入していくのです。
このエリアで、高性能を売りに当社が受注を伸ばす中で、徐々に同じように性能を売りにする会社が現れ、営業スタッフもやりにくさを感じ始めていました。
パッシブデザインについては、以前から知っており、その魅力も理解していました。しかし、当社にはまだ早いと感じていたのです。まずは住宅の基本性能を上げていくことが大事で、パッシブデザインは次のステップだとその当時は捉えていました。しかし、先ほど述べたように、高性能プラスアルファの差別化戦略が求められるようになってきたので、いよいよパッシブデザインの取り組みを開始したのです。
タイミングよく開催されたLIXILさんの勉強会には設計、工務、マーケティング、そして経営者とそれぞれの責任者が参加し、当社が提案すべきパッシブハウスのあり方や提案方法を各々の視点で検討していきました。そして、パッシブデザインに特化したブランドとして「TOSSの家」というものを立ち上げました。
現在、コロナ禍においても、受注は伸びており、ローコスト時代、年間30棟だった着工棟数も年間70棟ほどのレベルにまで達しています。東京の注文住宅市場において、短期間でここまで受注を伸ばすことができ、パッシブデザインに取り組んだことの手応えを強く感じています。
パッシブデザインは、「高性能住宅の落とし穴」をカバーする上でもとても重要です。日射遮蔽や通風を意識していない高断熱・高気密のみにこだわった高性能住宅の場合、夏場に暖まった室温が下がりにくく、エネルギー消費量が増えることがあります。シミュレーション結果などを用いて、こうした点を説明することで、パッシブデザインの必要性を理解してもらうことができています。
また、敷地が決定してから、必ず周辺の建物状況などを詳細に調査し、その結果をもとに日照シミュレーションなどを行うようにしています。こうしたきめ細やかな対応も性能値の高さを訴える大手ハウスメーカーが強いエリアにおいて、差別化につながっています。

リガードさまのパッシブファーストの住まいづくり

日射遮蔽と通風に配慮した東京ならではのパッシブデザイン

④

④吹き抜けやリビング階段を取り入れ、狭小地でも明るく開放的に。

⑥

⑥日射遮蔽のためのシェードは通路側からの視線もコントロール。

⑤

⑤インナーバルコニーで外からの視線を気にすることなく、明るく開放的な空間に。

⑦

⑦高窓は視線も気にならず排熱効果も高い。

パッシブデザインの魅力を伝える技術

⑧

⑧分かりやすいホームページやパンフレット。

⑨

⑨目に見えない室温を分かりやすく視覚化。

⑩

⑩あえて難しいことも掲載し、分かりやすく説明。

⑪

⑪OBのお客さまも巻き込みながらフォトコンテストなども実施しています。

⑫

⑫インスタライブも利用。

⑬

⑬WEBを活用した個別相談会やオンラインでのモデルハウス見学会などにも注力しています。

東京こそパッシブ的な発想が大事
献身さだけでなくプロとしての高潔さも

──どのような住宅を提案していますか?

内藤社長

東京では狭小地が多いため、「パッシブやる意味があるの?」という意見もあります。しかし、私は東京だからこそパッシブが大事だと考えています。厳しい敷地条件の中で、さまざまな工夫を施しながら、季節を通じて心地よい空間を創造していくことがより大事になるからです。特に日射遮蔽と通風については重要視しています。
狭小地で自然条件が悪いからと諦めるのではなく、軒の出や外付けのブラインドなども活用しながら、夏の日差しをカットし、窓の位置などを工夫してプライバシーを保ちながら通風を図れるように配慮することで、単なる高性能住宅では実現できない夏場も快適な温熱環境を実現できます。また、日射熱を利用することで冬場でも一定の暖かさを保つことができるのです。ここが我々の腕のみせどころではないでしょうか。
使用する部材や設備などの性能を高めることで高性能化を図ろうという企業もありますが、当社では設計力によって性能を高めることも大事だと考えています(写真④~⑦)。加えて、都心で疲れた毎日を「家に帰るのが楽しい」と感じていただけるよう、インナーバルコニーなど視線を考慮した癒やしの空間も提案しています。
社員には献身さと高潔さを忘れないようにと指導しています。お客さまに寄り添って献身的に夢の実現をサポートすることも大事ですが、時には住宅のプロとしての高潔さも必要なのです。お客さまの要望を聞きすぎるあまり、パッシブデザインの良さが阻害され、逆に快適性を損なう懸念もあるからです。当社では営業スタッフであっても「お客さんに言われたので…」という言い訳はタブーです。住宅のプロとして、お客さまの間違いや誤解を解くのも我々の役割ですから。

マーケティングの専門部署を配置
難しい内容もしっかり説明

──パッシブデザインの良さをどのように訴求していますか?

内藤社長

当社には、マーケティングの専門部署があります。私の夢やモットーに共感し、一緒に働きたいと、異業種から加わってくれたメンバー達が中心です。「TOSSの家」のコンセプトも、私や他の部署の意見を踏まえながら、マーケティング部がまとめあげました。パッシブデザインの魅力を伝えるために、さまざまな戦略を検討してくれているので、営業スタッフも説明がしやすく、お客さまに響く提案として、とても強みになっています(写真⑧~⑩)。
提案資料や「TOSSの家」のパンフレットでは、室温など目には見えない物を視覚化し、分かりやすく表現する一方で、あえて難しい情報も紹介するようにしています。最近のお客さまは非常に勉強熱心です。かなりの知識を持った状態で住宅会社を訪問することも少なくありません。そういう中で、自分が知らないことをプロとして説明してくれて、住宅についてしっかりとレクチャーしてくれることを住宅会社に求めているのです。だからこそUA値の違いによる一次エネルギー消費量のシミュレーション比較など、専門的な情報もお話しするようにしています。その際、難しい内容をいかに分かりやすく説明できるかがカギですが、「ここまで考えられた設計をしている」と信頼につながっていくことも大きな意味を持っていると考えています。また、お客さまがネットの情報などで誤解していることもあるので、その時にはしっかりと正しい知識を提供するようにしています。
マーケティング部を設置する前は、闇雲に広告などを打って追客をしていましたが、今はWEBやSNSなども活用し、効率的なマーケティングができるようになっています。インスタグラムなども積極的に活用しており、まずは1万フォロワーを目指しています。SNSやWEBを通じて当社を知ってもらったお客さまの多くは、ある程度、好意を持った状態でいらっしゃるので、受注につながる確率も高いようです。それだけに、OBのお客さまも巻き込みながら、SNSやWEBを活用したマーケティング戦略を展開していきたいと考えています(写真⑪)。

コロナ禍でも受注が増加
オンライン接客などが奏功

──コロナ禍の中で何か変わったことはありましたか?

内藤社長

いち早くオンラインでの個別相談やインスタライブを使ったリモートでのモデルハウス見学会などを開催していたので、新型コロナウイルスの影響はあまり受けませんでした(写真⑫、⑬)。むしろ受注は増えています。自粛生活で家にいる時間が長かったせいか、非常に当社のことを勉強してお問い合わせをいただくケースが増えています。
今後、恐らくオンラインでの営業や集客は増えていくのではないでしょうか。それだけに、デジタルマーケティングをはじめとした総合的なマーケティング戦略が重要になると見ています。パッシブデザインの魅力を効果的にお客さまに伝えていくためにも、マーケティング戦略をさらに進化させていきたいと考えています。

株式会社リガード
社名 株式会社リガード
創業 2011年
モットー より幸せな家族、より良い人生を実現出来る地域社会を創る!

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公開日:2021年02月15日

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