住宅所有意向/住みたい家とインテリア(第2回)

20代30代の家所有意向/住みたい家(インタビュー編)

小原隆(日経BP総研 上席研究員)

  • facebook
  • twitter

「第1回 20代、30代の家所有意向/住みたい家」では、調査結果のデータに基づいて解説をしたが、今回は、調査結果を受けて、最近の20代、30代の住宅所有意向、どのような家に住みたいのかなどについて、『日経ホームビルダー』『ケンプラッツ』編集長を歴任し、建築、住宅事情に精通した日経BP 総合研究所の上席研究員である小原氏に話を聞いた。

20代30代の住宅所有意向と住宅に対する考え

日経BP 総合研究所 上席研究員
小原隆氏

「所有から利用・シェアへ」の傾向は、首都圏で先行

第1回の調査結果を拝見したのですが、非常に面白い結果が出ていると思いました。特に、住宅所有意向に関して、都道府県別、地域別で顕著に差が出ている点です。取材で色々なところで話を聞き、住宅の所有形態、所有意向において都会と地方、特に東京とそれ以外での違いを感じていましたが、それがデータに明確に表れています。

最近よく言われる「所有から利用へ」とか、「シェアへ」ということは一般としてあるとは思いますが、その傾向には地域性があります。たとえば、車の所有意向を首都圏と地方で比べると全く違います。日常の中でのカーシェアやシェアサイクルの利用は、首都圏など交通網が発達している地域だからこそできることです。地方では車や自転車は日々の移動手段として必需品のため所有が一般的です。

地方より東京の住宅所有意向が低いのは、土地価格が影響

住宅の所有意向に関しては、地域による土地の価格差の影響も大きいのではないでしょうか。住宅を買う場合、土地の価格も含めてどの程度お金を出せるかで決まります。東京と地方の土地の価格差に対して、若い世代の年収では、東京の土地価格の高さと比例して年収が高くなっているわけではありません。ですので、東京で住宅を購入となるとなかなか手が届かないものとなっています。

平均的な20代30代の人が、東京都内や神奈川、埼玉、千葉で住宅用の土地を購入しようと思うと、ある程度郊外に出ないと購入できない訳で、23区内だと夢の話です。結局、住宅を取得するためにどの程度のお金をかけられるのかということになり、東京では持ちたくても持てないというのが、住宅の所有意向にも反映されているのだと思います。

都市圏で目立つワークスタイルの変化。住宅の立地への影響は?

立地という点では、家を購入する場所が通勤圏かどうかということが重要視されてきました。しかしながら、通勤に対する意識は、ここ1年ぐらいで大きく変わってきました。今後、その傾向はさらに強まるでしょう。会社側も働き方改革で在宅勤務を進め、テレワークが普及し、遠くても座って通勤できる始発駅に住む考えも減少していくように思います。最近では、法人需要を見込んだ在宅ワーカー向けオフィスビルを、千葉県郊外の街に建てる大手ディベロッパーの計画があると聞きました。

また、マンションの集会所など、使用しない時間が多い場所を、シェアスペース・ワークスペースとして貸し出すような動きが進むと考えます。シェアオフィス付の分譲マンションも増えてくると思います。マンションの管理組合においても、収益を上げる仕組みの1つとして注目されるようになるではないでしょうか。

さらに、勉強空間のシェアリングという新しいスタイルも生まれています。最近の新しい図書館では、自習机や勉強する環境が整っていて、中高生、大学生、社会人が勉強する場として利用が拡大しています。

今後、このような公共空間でのワークスペースの設置と利用が進み、仕事をする場所・勉強をする場所の選択肢が増えるとライフスタイルが変化してきます。そうなると、戸建住宅、マンションを含めた今までの画一的な立地や住空間の考え方にも変化がおよび、設計プランや住宅に対する考え方もより多様化するのではないかと思います。

住宅取得の考え方として新たな現象

土地の価格が上がる東京などの都市部で、家を資産として持つという動きがあります。家を買って住み替えていくという考えから、将来的な転売を考えて、DINKsや単身の方が東京都心部の売りやすいマンションを購入するなどの話をよく聞きます。戸建住宅でも、転売しやすい立地条件がよい場所に家を建てたいと考える人もいます。その際に、建主の趣味が詰まった間取りにしてしまうと売却時に買い手がなかなか決まりにくいからやめましょうとなることもあるそうです。

中古住宅に対する意識の変化とDIYの動き

日本では全国的に新築志向があり、地方では特にその傾向が強いようです。その理由として、中古住宅のリノベーションより、土地を購入して家を建てた方が比較的安価で手軽に高性能な住宅を手に入れることができる背景もあり、リノベーションに価値を見出していないとも言えるでしょう。一方で、中古に対する嫌悪感は、都会、地方の関係なく、確実に減ってきています。衣服もしかり、家具、建材においても、同様です。むしろ、古びた状態を味があるととらえ、その古さに良さを見出す趣向が好まれてきています。このように中古への意識は変わってきていますが、自分で家を修理したり、リフォームしたりするDIYはまだ一般化していません。家のメンテナンスやリフォームは専門業者に任せたいと考える人が多く、なかなかDIYが根付きにくいようです。中古住宅購入の際にもリフォーム・リノベーションをするなら、不動産を探す段階から設計までプロに任せたいと考える人も少なくないです。

注文住宅で思い描く家を実現したいという思いにどう応えるか

住宅の提供形態によって様々な形があるかと思います。注文住宅でないと自分の思い描く家がつくれないのでは?という固定観念があるかかもしれませんが、場合によっては、分譲マンション、建売住宅でも、間取りを含め内装、水まわりなどをオプションで選択することができますし、規格住宅でもいくつかの間取りパターンから選択できるケースもあります。自分の思い描く家をつくる上で、様々な供給手法があるということが、まだ認知されていないのかもしれません。

建主の多くは、思い描く家の想像はできますが、それを具体的に表現する技術はありません。その思い描く家のイメージを具体化していく際に、プロがコミュニケーションを取りながら提案していくこと、もしくは、建主が選択する場を提供してあげることが重要だと思います。建主の思い描く家を実現するために、住宅のパターンをいくつも準備してプレゼンテーションする会社もあります。組み合わせによって幾通りもの選択肢があり、その中から選択してもらうのですが、それだけのパターンから選択できるということが建主の満足感につながっています。結果的に選ばれるパターンはいくつかに集約されるのですが、自分に合ったものを選ぶプロセスが建主の理想の家を実現する上で大切なポイントになるのだと思います。

住宅購入前に賃貸に住んだ若者の思い

2006年に住生活基本法が施行され、日本の住宅政策は量から質へと転換しました。その後、高性能な住宅がどんどん供給されるようになっています。そうした状況下で、Sクラス事業者の省エネ住宅で育った子どもが独立して、1人暮らしでアパートなどに入ると、そのチープさに愕然として、それで、自分は快適にすごせる家を建てようという動きがあります。自分が過ごしてきた性能の良い家を当たり前と捉えている若い人が住宅を購入する世代となってきているのです。

断熱性、省エネ性、耐震性などの性能がしっかりした家が重要視されていますが、それがおろそかになっていたら、寒い、暑い思いもするでしょうし、光熱費が高いなどという不満もでてくるでしょう。結露やカビに悩まされるかもしれません。賃貸住宅においても、退去理由は、そのような基本性能の悪さであることが多く、基本部分がしっかりとした住宅でないと、実際長く住もうということになりません。

これからの住宅提供の在り方

リビングスペースの在り方は?

リビングは家族のコミュニケーションの場として、居住空間において重要な場所ですが、最近では、リビングで、家族皆が何かを一緒に楽しむというだけではなく、個々人が同じ空間でそれぞれのことを行っているというケースも多くなってきています。リビングのすごし方も変化しており、家族のコミュニケーションの場の考え方も変わってきています。キッチンを含めたLDKが家族の場になることもあります。今は、奥さまひとりだけが食事を作るのではなく、家族が協力して、またはそれぞれが料理をするなど家族間の役割分担にも変化がみられます。ひとりで料理する以外に、複数人でも作業しやすいアイランドキッチンや、カウンタータイプのキッチンなどを取り入れることで、家族で料理をする新たなコミュニケーションの仕方も生まれています。

また、最近では、玄関を広くとって自転車の整備や趣味のコーナー、コミュニケーションスペースに利用するケースもあります。玄関の入ってすぐのところで、玄関から見えない隠れた場所にスーツケースやベビーカーなど様々な大きいものを置ける場所が、あると便利ですし、外出・帰宅時に荷物を準備したり、身支度をしたり、または収納スペースを設けると非常に重宝されます。玄関まわりも、日々家族の出入りの多い20代30代の暮らし方を考えると重要な空間の1つと言えるでしょう。

外構を含めた住宅のトータル提案

こだわりの空間として従来と違ってきたのは、庭まわりなどの外構です。今まで工務店やハウスメーカーは家を建てた後、外構は別工事になるのが普通でしたが、そこを一体化して提案するケースが出てきました。工務店や設計者にとっても自身のテイストや雰囲気で庭までつくるという方が、工期は長くなるものの、受注金額も大きくなることもあり、外構を含めたトータルな提案が取り入れられてきています。高断熱高気密住宅が浸透してきている現在、エクステリアや外と中をつなぐ空間の中間領域を重要視する建築家が増えてきていますし、建主にもトータル提案を求める人が出てきています。

高断熱住宅にすると、家の中全部が暖かいことから、冷蔵庫以外に保管している野菜や果物などが腐らないように、それらを保管する場所が必要となってきます。地方に行くほど、そのような食料備蓄庫のニーズは高く、断熱エリア外の屋根のある部分をつくって提供するというような対応が必要です。備蓄スペースに合わせて趣味のコーナーを計画するなどのプラス提案で建主の満足度を高めた提案の例もあります。

若者とその親世代との家づくりの考え方の違い

親世代は知名度が高く、一般的に認知されている会社に安心感を持つ傾向があるようです。一方、最近の20代30代の若い人のなかには、親身に相談に乗り、共感できる暮らし方を提案してくれる会社にシンパシーを感じ、知名度や認知度にとらわれない会社が選択肢として挙がってきています。その場合は、地域の暮らしを知る地元の工務店が優位になるケースもあります。

ただ、若い人がそういう地元の会社を知る機会は限られているため、多くの人は住宅展示場に行って、大手メーカー、建築会社に決まるケースがまだまだ多いと言えます。ですが、今はSNSと口コミによる認知度アップで大手に負けないPRのチャンスもあります。そのためには、しっかりした家を建てていることや自社イベントをSNSで発信することや、口コミによってお客さまの友人・知人とつながっていくような、接点の持ち方が必要でしょう。

影響力が大きい地域の口コミ情報

口コミ情報においては、特にトラブル対応を中心とした内容が取り上げられます。なにかあった時にどのような対応をしてくれたか?というのは、ネットを調べてもなかなか出てきません。マイナスをどうやってリカバーしてくれたか、どう対応してくれたかという口コミ情報は大切です。そのような口コミ情報は自然に広がるので、ていねいな対応をしていれば、無理をせずに口コミで顧客を獲得することができるのです。

地方にいくと、口コミ情報はより影響力を持ちます。地方では広告件数自体も少ないため、自然と口コミ情報の比重が強くなります。また、知人の紹介での物件獲得の割合が高くなるので、一軒ごとのお客さまの信用と評価を得ていくことです。情報収集力、情報リテラシーが高い若い人は、自ら口コミも含めた様々な情報を収集して、良くも悪くもそれを基に判断していきます。新たな若い顧客を獲得するには、口コミも含めた間違いのない情報発信が重要になってくるでしょう。

住宅の供給側として大切なこと

大手も地方も関係なく、家の供給者として、そのときの家族構成を想定して最適な住宅を設計、提案をし、建てるはずです。さらに、長期間に渡って快適に暮らしていくためには、そこで将来予測される状況に対応できる設計、つくり方、提案が必要だと思います。設計者が想像を働かせて、子どもが生まれたとき、個室の子ども部屋が必要になったとき、子どもが大きくなって収納スペースを追加したいときなど、ライフスタイルの変化に合わせた様々な想定をしておくことです。それが実現できる提案を用意しておいて柔軟に対応できるようにすることが大切です。特に地域に密着した工務店は、より建主に寄り添うことができるのではないかと思います。

家を建てたい人は、3タイプに分けることができます。「こだわり層」、「低価格コスト重視層」、そしてその「中間のボリューム層」です。「中間のボリューム層」は、とにかくいいメーカー、工務店やいい営業マンと知り合いたいと思っており、その人にお任せしたいと考えています。自分で一生懸命選ぶのではなく、自分の望む物に対していい提案が提示されたときに受け入れてくれる人たちです。住宅を供給する側にとってもいい建主であり、建主にとっても信頼できる相手と一緒に家づくりをすることは、それだけで満足できる経験になるのです。この中間のボリューム層の建主といい家づくりをして、家を通して長期的に、関係を築いていくことが重要といえます。 

家づくり提案には暮らし方の提案が不可欠に

住宅を供給する側としては、やはり、きちんと建主に合わせた家づくりを提案することが重要と思います。きちんとしなくてはいけないのは特に基本性能の部分で、構造、断熱といった点です。基本性能について、建主が分からない、気付かないこともあると思いますが、高い性能を備えているのは当然というスタンスが一般的になってきています。そうなると住宅の基本性能を伝えるだけではPRにはなりません。「暮らし方を含めた家づくりを一緒に考えていきましょう」ということが大切です。どのような暮らしができる家なのか建主の望む暮らしに寄り添う家を具体的に提案、提供していくことが求められるでしょう。

小原隆(おばら・たかし)

日経BP 総合研究所 上席研究員
専門分野 建築、住宅、マンション、まちづくり、省エネ、建材・設備、木材
神戸大学工学部建築学科卒業後、建設会社で大手ディベロッパーのマンションやオフィスビルなどの設計を担当。1996年日経BP社に入社。『日経アーキテクチュア』『日経コンストラクション』編集記者、『日経ホームビルダー』「ケンプラッツ』編集長を経て、2016年4月から現職。

このコラムの関連キーワード

公開日:2020年03月23日

  • facebook
  • twitter