INTERVIEW 011 | SATIS
窓辺に居場所をつくる
設計:小野喜規/オノ・デザイン建築設計事務所 | 建主:Yさま

庭から玄関とアプローチを見る。
小野さんにとって住宅の設計とは建主の個性に付き合って歩み寄っていくものだといいます。大規模な建築に比べるとよりしなやかで繊細なものだとも言います。そこにこそ、住宅建築家としての醍醐味があるようです。かつて大手設計事務所にいた小野さんですが、いつかは住宅を専門とする建築家として独立したい夢があったそうです。
窓辺に居場所をつくる
小野さんは住宅を考える時、窓辺の空間をどうつくるかを常に意識していると言います。そこに居場所をつくるために、どのような大きさで、どの位置につくるのかを考えます。さらにどのような光が入り何を照らしていくのかというように窓に意識をあてることで、窓辺に居場所ができるとも言っています。

模型を眺めながら家の特徴をかたる小野さん
庭の気配を感じる窓
建主のYさんは庭の木をすべて自分で選ぶというほど、樹木や植物が好きです。庭を大切に考えてほしいという依頼に、小野さんは窓を通して庭を見るということはもちろん、見てない時でも窓の向こうの気配をいつも感じられるようにしたかったそうです。庭にむかってただ大きな開口部を作るのでなく、意識的に小壁をつくったりしながら窓から見える外の景色が、家の中を移動する時に見えがくれするようにしています。取材にうかがった時はソファーが庭に対面していましたが小野さんの設計では庭を横でながめるように配置していました。庭を「見る」というより「感じる」という状態をつくりたかったと言います。ハンターダグラスのレースのブラインドも同じような考えで、下ろしている時も庭の木の影が映ることで庭の景色を感じるようにしているのです。

ソファーから眺める庭の風景とハンモックで遊ぶお子さん。
休みの日は木々のつぼみの成長を楽しみながらこの窓辺で長い時間過ごすそうです。

階段室にある窓、2階廊下にワークスペースがありそこに対面する場所に窓が開けられている。隣の家が見えないようにブラインドを下ろして使うことを前提に窓をデザインしている。
そしてもうひとつ特徴的なのが庭との間の土間の段差です。家の中と同じ高さのデッキなどをつくるのでなく、小野さんはあえて段差をつくり庭に降りて行くという行為を意識的に行うようにしています。それは植物が好きなYさんご夫妻が庭にどう関わって行くのかということを積極的に促しているようにも見えます。見るという風景にこだわりがちな窓のありかたを、「感じる」、「関わる」ととらえるところに小野さんの建築感が現れます。

意識的に庭に出て行きたくなるように考えて段差をあえてつくっています。

小さなスペースにもこだわって選んだ植栽が植えられている。

ベンチに腰かけ好きなお酒のグラスを傾けることも。
お気に入りが見つかるまでのベンチ。これから少しずつ気に入ったものを買い足して行きたいそうです。
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公開日:2018年03月31日