INTERVIEW 012 | SATIS

つづき間という日本的空間を考える

設計:藤原徹平/フジワラテッペイアーキテクツラボ | 建主:Kさま

日本の間取りを読み換える

この家の間取りにおいては、吹き抜けは「中庭」、2階の寝室は「はなれ」の部屋、中庭と見立てた吹き抜けには外部を感じさせる大きな窓をつくり、外に張り出した階段は部屋と部屋をつなぐ渡り廊下に見立てています。そして、トイレは廊下の突き当たりというように、「かつての日本の町屋の典型的な平面構成を立体的にした」と言います。日本人の暮らし、日本人のDNAにこだわり、そこに社会の変化や未来の暮らし方への藤原さんのチャレンジがあるようです。
そしてなにより日本の家には、あえて風景を切り取ることで、外部の自然との一体感をつくるという特徴もあります。ここでは吹き抜けの窓から見える神社の森や、階段から見える前庭の一部などもそうした考え方です。そしてこれらの日本的ともいえる建築の手法は小さな空間をより広く、奥行きのある空間へと意識させるのです。

2階の個室。もうひとつのリビング。昔の家の「はなれ」のような空間のつくりかた。

2階の個室。もうひとつのリビング。昔の家の「はなれ」のような空間のつくりかた。

上部吹き抜けから1階のリビングを見下ろす。

上部吹き抜けから1階のリビングを見下ろす。

階段室は「部屋と部屋をつなぐ渡り廊下」だと。踊り場はちょっとした読書コーナーに。

階段室は「部屋と部屋をつなぐ渡り廊下」だと。踊り場はちょっとした読書コーナーに。

渡り廊下と見たてた階段室は、外との一体感を感じられるように、一旦部屋から出た半外部だという。

渡り廊下と見たてた階段室は、外との一体感を感じられるように、一旦部屋から出た半外部だという。

外の景色が飛び込んでくる階段室。

外の景色が飛び込んでくる階段室。

1階から見上げた2階の窓。この窓から森の緑が見えるように。どこにいても外の自然を感じられるようになっている。それが「昔からある日本の家の作り方」だともいう。

1階から見上げた2階の窓。この窓から森の緑が見えるように。どこにいても外の自然を感じられるようになっている。それが「昔からある日本の家の作り方」だともいう。

照明器具はシンプルかつ安価なものを、一本の配線を電球のところでつないでいく「がいし」と呼ばれる昔ながらの接続方法。接続には、「想像以上の時間を要した」と言います。このあたりにも藤原さんの「普通でありながら、日本の伝統的なつくりかた」へのこだわりがあるようです。

照明器具はシンプルかつ安価なものを、一本の配線を電球のところでつないでいく「がいし」と呼ばれる昔ながらの接続方法。接続には「想像以上の時間を要した」と言います。このあたりにも藤原さんの「普通でありながら、日本の伝統的なつくりかた」へのこだわりがあるようです。

トイレと浴室の位置

トイレの前面、吹き抜けに面したところに通路があります。かつての典型的な町家が、トイレを家の居住部分から話して、離れの奥やや廊下のつきあたりに配置したのと似ています。トイレと浴室をこの吹き抜けに面したことで、暮らしの中心から「見え隠れ」する位置に置いたのです。家の中央付近にありますが、空間の構造上、家の中心に置いたという意味ではありません。

2階の個室から洗面室を見る。

2階の個室から洗面室を見る。洗面室はオープンで気持ちよく、カーテンでゆるやかに間仕切る。

洗面に隣接するバスルーム

洗面に隣接するバスルーム。

小窓からは、森のアートが切りとられる

小窓からは、森のアートが切りとられる。

室内から続く同素材の床と壁で一連の繋がりを感じる。

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公開日:2019年09月30日